第三話 「開戦」
【1941年11月29日・横須賀】
1941年11月29日、空母『赤城』を旗艦とする第一航空艦隊が横須賀を出港した。目指すは豚鬼太平洋艦隊の前衛拠点、テニアン島。12月2日、戦艦『長門』から機動部隊へ電文が発信される。
「新高山登レ一二〇八」
来たる12月8日未明、奇襲が始まる。
夜明け前、空母甲板では轟音が響き渡り、九七艦攻89機、九九艦爆51機、零戦43機が次々と発艦。第一次攻撃隊がテニアン島へ向けて飛び立った。
【テニアン島・豚鬼太平洋艦隊司令部】
テニアン島のレーダー基地では、日曜日の朝、通常通り4時から7時までの3時間だけが運用時間だった。この日も7時を迎え、撤収準備を始めた瞬間、オシロスコープに異常な影が映し出された。50機を超える大編隊が迫っている。
「敵襲!総員対空戦闘配置に着け!」
警報が鳴り響くが、豚鬼太平洋艦隊司令部は混乱に陥った。準備が整う前に、空が暗くなり、爆音が島を包む。九七艦攻と九九艦爆、計140機余りが一斉に襲いかかった。
停泊中の戦艦『重慶』『四川』『上海』『貴州』『河南』が次々と炎に包まれ、轟沈または大破着底。巡洋艦や駆逐艦も含め、36隻が撃沈され、港は火と煙に覆われた。
---
【空母赤城・艦内】
「只今までの戦果を総合すると、戦艦3隻撃沈、5隻大破、以下大小艦艇36隻に甚大な被害を与え、敵航空機約200機を撃破。予想以上の大戦果です。」
通信室からの報告に、『赤城』の士官たちは歓声を上げた。南雲提督は冷静に尋ねる。
「こちらの損害は?」
「九七艦攻7機、九九艦爆8機、零戦11機が損傷または撃墜されていますが、総合的には微々たるものです。」
「そうか。第二次攻撃は必要か?」
「通信によると、敵戦艦があと3隻残っています。第二次攻撃でとどめを刺すべきかと。」
南雲は頷く。
「分かった。第二次攻撃隊の発艦準備を進めろ。」
「かしこまりました。」
九七艦攻54機、九九艦爆78機、零戦35機が再び発進し、テニアン島へ向かった。
【テニアン島・再攻撃】
テニアン島では、第一次攻撃の残骸を片付けた豚鬼軍が対空機銃や高射砲を急いで設置していた。しかし、第二次攻撃隊が再び空を覆うと、戦艦『湖北』『遼寧』『黒龍』が次々と爆撃に沈み、豚鬼海軍の戦艦は全滅。
十数分後、航空隊は司令部への攻撃を開始した。基地要員は拳銃や小銃で必死に対空射撃を試みたが、数十発の爆弾が司令部を直撃。爆発音が響き渡り、建物は瓦礫と化した。攻撃開始からわずか3時間で、豚鬼太平洋艦隊は事実上壊滅した。
---
【フィリピン・バタン島】
同じ頃、日本陸軍はフィリピンでの上陸作戦を開始した。12月10日、ルソン島北端のアパリとビガンに上陸。2日後には南端のレガスピーを制圧し、その勢いは止まらない。同月下旬、リンガエン湾とラモン湾に上陸を果たした。
しかし、豚鬼陸軍も反撃に出た。フィリピン駐留部隊を統合し、リンガエン湾で日本軍を迎え撃つ。戦車と火砲を駆使した猛攻に日本軍は苦戦を強いられたが、ビガンから進軍した部隊が側面を突き、1942年1月にリンガエン湾を制圧。さらに快進撃を続け、2月にはマニラを占領した。
豚鬼陸軍はマニラを放棄し、コレヒドール島に立て籠った。だが、バターン半島先端に進出した日本軍重砲兵第一連隊が24cm榴弾砲で砲撃を開始。海を挟んだ砲撃戦が続く中、25cm徹甲榴弾が要塞の弾薬庫に命中。大爆発が島を揺らし、要塞は陥落した。
日本陸軍は即座に上陸を開始。豚鬼軍司令官が降伏を申し入れ、日本軍がこれを受諾。コレヒドール島に集結していた豚鬼兵は全て降伏した。
【フィリピン全域】
1942年5月17日、豚鬼陸軍ルソン島守備隊が全軍降伏。降伏の報を受けた豚鬼陸軍司令部はフィリピン防衛を放棄し、ミンドロ島、サマール島、レイテ島、ミンダナオ島の守備隊を撤退させることを決定。2週間後、フィリピン守備隊は帝国本土への撤退を完了し、豚鬼軍のいないフィリピンは日本軍に占領された。
【第一章 完】