第二話「ソビエト介入」
【大豚鬼帝国・執務室】
「たかが旧式戦艦2隻に敗北したどころか、巡洋艦3隻と戦艦1隻を拿捕されたブヒか!?」
大豚鬼帝国の大元帥、豚鬼は、執務室で海軍参謀の報告を聞き、顔を真っ赤にして怒鳴った。太い拳を机に叩きつけると、木の表面が軋み、書類が床に散乱する。
参謀は冷や汗を流しながら、震える声で弁明した。
「も、申し訳ありません!しかし、日本は海軍大国であり、現状の戦力では日本侵攻は厳しいかと…」
「黙るブヒ!」
豚鬼の怒号が部屋に響き渡り、参謀が肩をすくめる。
「朕の軍が負けるなど、あってはならんブヒ!今の戦艦で勝てぬなら、新型戦艦を造って対抗するブヒよ!」
そう言い放つと、豚鬼は立ち上がり、造船大将を呼びつけた。彼が求めたのは、「主砲口径14インチ以上」「速力23ノット以上」「対15インチ防御」を備えた戦艦だった。
---
【大豚鬼帝国・造船所】
大豚鬼帝国は海軍総力を挙げ、第二次日本侵攻作戦の準備を進めていた。造船所では新型戦艦の設計が固まり、その性能が明らかになっていた。全長260m、全幅33mの船体に、50口径15インチ三連装砲4基12門を搭載し、速力29ノットを誇る。この時点で豚鬼海軍最強と謳われ、対15インチ防御により、日本戦艦『長門』以外では対抗が困難と予想された。
この戦艦は『広東』と命名され、豚鬼海軍総司令官・拳将軍の座乗艦となることが決定した。
同時に、超戦艦『大豚鬼』の開発も進行していた。全長300m、全幅50mの巨体に、17インチ連装砲4基8門を搭載し、速力28ノット。『広東』を凌駕する性能を備え、豚鬼海軍の総旗艦として日本本土侵攻の切り札と位置づけられた。
造船所のドックで、鉄骨が組み上がりつつある『大豚鬼』を眺めながら、豚鬼は呟いた。
「素晴らしいブヒな。」
隣に立つ拳が意気揚々と応じる。
「はい、この戦艦があれば必ず勝利できます。」
豚鬼はニヤリと笑い、目を細めた。
「うむ。完成次第、日本本土に攻め込むブヒよ。」
こうして、豚鬼率いる大艦隊は着々と準備を進めていった。
一方、豚鬼陸軍は対日本陸軍戦に備え、ソビエトから「T-26」「T-35」「I-16」「TB-3」などの兵器を大量輸入し、独自改良を施していた。それらは「通天」「猪皇」「猪飛」「猪炸」と命名され、わずか8か月で通天800輌、猪皇450輌、猪飛600機、猪炸260機を生産。猪皇を主力とする機甲師団が編成され、日本侵攻に向けた戦力増強が急ピッチで進んだ。
---
【戦艦長門・艦内】
「長官、大豚鬼帝国がソビエトから兵器を輸入している可能性があります。」
戦艦『長門』の艦内で、参謀が山本五十六に報告した。山本は眉をひそめる。
「ソビエトから兵器だと?それは確かなのか?」
「はい。香港に出入りする輸送船に、戦車や航空機らしき物が積まれているとの情報が入っています。」
山本は低く唸った。
「ソビエトからか…厄介だな。」
参謀が続ける。
「もし大豚鬼帝国が日本本土に攻め込んできた場合、戦車や航空機による攻撃で大きな被害が出る恐れがあります。」
「分かった。旅順の陸軍に警戒を強化するよう伝えろ。」
「了解しました。それでは失礼します。」
参謀が去ると、山本は艦内の窓から海を見やり、ため息をついた。
「ソビエト…厄介だ。」
その後、海軍は日本周辺海域に海防艦を大量配備し、陸軍は旅順や大連に戦車や火砲で防衛陣地を構築。大豚鬼帝国の侵攻に備え、警戒態勢を強めた。
---
【1939年12月・河北】
1939年12月、豚鬼陸軍は河北に駐屯する日本陸軍に突如攻撃を仕掛けた。武力衝突が勃発し、日本軍は総力を挙げて応戦したが、豚鬼軍の戦車と火砲の数、機動力に圧倒され、次第に追い詰められていく。
1940年6月、豚鬼軍は北京、天津などの主要都市を制圧し、日本軍は遼寧まで後退を余儀なくされた。しかし、日本は戦艦『長門』『陸奥』『扶桑』『山城』、航空母艦『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』で構成される第一艦隊を派遣。艦砲射撃と空襲を展開し、10月には山東、江蘇まで豚鬼軍を押し戻すことに成功した。
翌1941年6月、豚鬼軍は撤兵を強いられたが、この時点で双方の死傷者は1500人を超えていた。最早、全面戦争は避けられない状況へと突き進んでいた。