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レッツ・テレビショッピング!

作者: 村崎羯諦

『次にご紹介するのは、〇〇県◯市◯◯◯、桂メゾン201号室にお住まいの大浦裕也さんの古着です!』


 偶然深夜につけたテレビでやっていたテレビショッピング。何気なく番組を見ていたら、突然俺の住所と名前が司会の口から飛び出してきた。


『この古着は大浦さんが二年前に県内のセレクトショップで購入したパーカーなんですが、その後数回着ただけで、箪笥の肥やしになってしまっている代物です。状態は良く、ほつれやヨレはありません』

『色もグレーで合わせやすいですね! でも、これだけ状態がいいと、お高いんでしょう?』

『ご安心ください。こちらのパーカーですが、送料無料でなんと990円になります!』

『すごいお買い得ですね!』

『驚くのはまだ早いです。今回はなんと! この古着をご購入いただいたお客様に、同じく大浦裕也さんが数年前に購入し、以降一度も身につけていないハンチング帽をおつけしちゃいます!』

『これは買わない手はないですね!みなさん、今がチャンスです。お電話は今すぐ!こちらは数量が一点のみですので、お早めにご注文ください!』


 番組が終わって数十分後、深夜にもかかわらず突然俺の家のチャイムが鳴る。なんだろうと思って玄関を開ける。そこには宅配業者が立っていて、荷物の回収にやってきましたと言ってくる。


 宅配業者は俺の静止も聞かずに家に上がり込み、衣装ケースを開く。そこから、先ほどテレビショッピングで紹介されたパーカーとハンチング帽を手に取り、ご協力ありがとうございましたと頭を下げた。


「大浦さんの古着ですが、もう売れちゃったそうです。なので、すぐに購入者に発送するためにこうして迅速に動いているんです」


 それだけ言い残し、宅配業者は家を出て行った。まごうことなき窃盗行為だったが、あの古着はそろそろ捨てようかと思っていたものだったので、誰か別の人が欲しがっているのであればそれでもいいかと俺は考えることにした。


『次にご紹介するのは当番組の大人気シリーズです! 〇〇県◯市◯◯◯、桂メゾン201号室にお住まいの大浦裕也さんのコレクションから、炊飯器を紹介いたしますね!』


 テレビショッピングではそれからも俺が持っているものが紹介され続け、俺の家からいろんなものが運び出されて行った。要らない服から始まり、文房具、本、椅子、プラモデル、テレビ以外の家電。誰が買うんだろうと思っていたが、どうやら毎回すぐに売り切れてしまうらしい。実際、一度だけ好奇心で自分も電話をかけてみたが、紹介されてから五分も経っていないにもかかわらず、すでに売約済みだと伝えられた。


『次にご紹介するのは超絶人気シリーズ! 〇〇県◯市◯◯◯、桂メゾン201号室にお住まいの大浦裕也さんのコレクションから、今日ご紹介するのは大浦さんの仕事です! 前回ご紹介した二十年来の幼馴染と同じように、こちらも一瞬で売れてしまうかもしれません。お電話はお早めに!』


 俺の家から物がなくなっていき、売る物がなくなった後も、テレビショッピングはありとあらゆる物が売って言った。仕事が売られた時なんかは、俺の社員証が家から運び出されてしまった。職場に電話をかけると、俺の仕事を購入した別の人がすでに働いているので、もう会社には来ないでくれと言われてしまった。


『今日は皆様に残念なお知らせがあります。当番組での大人気シリーズである、大浦裕也さんコレクションですが、本日が最後のご紹介になります』


 テレビショッピングの司会者が残念そうに頭を下げる。


『最後にご紹介するのは、大浦裕也さん自身です。今なら特典でハンディ扇風機をおつけして、3万9800円です。早いもの順ですので、皆様奮ってお電話ください』


 最後に紹介されたのは俺自身だった。俺は自分自身が紹介されたのをみて、少しだけ不安に思った。所有物であるならいざ知らず、自分自身が売られるとなると話が別だ。3万9800円という金額に少し高らったが、俺は自分を自分で購入することを決める。


 いつもの商品と違って、番組が終わって10分経って電話しても、まだ他の購入者は現れていなかったようだった。俺は俺の購入を告げ、色んな手続きをしてから電話を切る。そのタイミングで家のチャイムがなり、いつもの宅配業者が集荷にやってきた。


 俺はそのまま宅配業者に連行され、トラックに積み込まれ、倉庫へと連れて行かれる。そこで俺は特典のハンディ扇風機と一緒に大きな段ボールにいれられる。そして、再びトラックへと積み込まれ、俺は俺の家へと運ばれて行った。


 宅配業者が俺の家のチャイムを押すが、もちろん誰も出てこない。俺は購入の際、置き配でも大丈夫ということを伝えていたので配送業者は玄関の前に俺が入った段ボールを置いて帰って行った。


 配送業者は帰る前、俺が苦しくないようにと気を利かせて、段ボールの上を開いていってくれた。俺は段ボールに座ったまま、玄関の前でじっと俺が俺を家に入れてくれるのを待った。


 それでもやっぱり暑かったので、おまけでついてきたハンディを開け、スイッチを入れる。特典は入らないと正直思っていたけれど、こうして涼めるのはとてもありがたかった。


 俺は俺の家の前で、俺が廊下に置きっぱなしにしていた俺を家にあげてくれるのを待ち続けた。季節は夏。空には曇り一つない青空が広がっていた。

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