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IG夏の陣、二日目(2)


「うんうん、みんな元気でええ声聞こえてくるで~」

「『いいね!』投票は番組終了の午後四時まで受けつけていますので、応援したいアイドルがいたらたくさん『いいね!』で応援してくださいね。お手元のスマートフォン、PCの方は概要欄、アンケート機能、TVの方はリモコンから投票できますよ~。スマートフォンの『いいね!』は何回押しても制限はありませんから、いっぱい押してください。そのたくさんの『いいね!』が、我々の力になります」

「うんうん、わしら騎士団やからみんなの応援が報酬やねん。みんな~、もっと応援してくれる~?」

 

 花崗がマイクを会場に向けるとさっきよりも大きな声で『する~』という声が聞こえてきた。

 耳に手を当て、それを聞いたあと花崗がマイクを天高くに掲げてから回転させて口元に持ってくる。

 

「足り~ん! まだまだわしらの頑張りが足りんちゅーことなんか? ん? ほんならここは団長と副団長が気合入れて歌うしかあらへんね!」

「そうですねぇ。それでは僕とひまりちゃんの専用曲『Sunflower』を聴いていただきましょう!」

「聴きながら『いいね!』押しまくってぇなぁー!」

 

 と、花崗が叫ぶと客席から『うおー!』と盛大な返事が返ってきた。

 前奏が流れて二人が歌い始める。

 一、二年がバックダンサーとして踊り始め、圧倒的な光属性の陽キャ曲をピッタリ息の合ったパフォーマンスで歌い上げた。

 いつも冷静で頼りになる三年生二人が、なんというか――気心知れた同期とはっちゃけた感じのパフォーマンス。

Blossom(ブロッサム)』の時の綾城珀ともまったく違うし、星光騎士団の頼れるお兄ちゃんな花崗ひまりでもない。

 この二人が、この二人の時だけに見せる表情なのだろう。

 それがまた、ドルオタにはたまらない。

 多分相当いい笑顔で踊っていたと思う。

 

「ほな、また!」

 

 歌い終わり、大手を振って退場。

 お相手もプロのアイドルグループであったが、MCがグダグダになって星光騎士団が圧倒的な『いいね!』票数差を会得して三日目に進むことになった。

 

「MCって結構デカいんすね」

「そうだよぉ。ライブ経験のあるアイドルでもMCって難しいから、意外とできる子少ないんだよ。うちの学院は毎月の定期ライブ、ワイチューブで独自のチャンネル開設推奨してるし、ラジオや地元テレビ出演、『決闘』の時の審判役とかでMCやる機会を結構多めに取ってる。放送部は特にそういうトーク力も必要になるし、二年生になると週に一回専攻授業も入るくらいだよぉ」

「そ、そうなんですか!?」

「そうそう〜。認めるのは癪だけど、ひま先輩のMCって時間もぴったりだったしお客さんにも話を振ったりして完璧って感じ。ストップウォッチもないのに、しっかり時間内に収めるのも難しいんだよ。最初のうちは絶対時間足りなくなったり、短すぎたりが普通。相手のアイドルもMCの時間すぎてグダってたでしょぉ? 時間内に収めるのも技術なんだよねぇ。逆に現場の事情とかで時間を引き延ばしてって指示が出る場合もある。そういうのに対応するのも技術だから」

「「ひえ……」」

 

 控え室に戻ってきてから、息を整えつつ水を飲むメンバー。

 魁星と周が宇月にそんな話を聞かされる中、綾城だけが制汗タオルで全身を拭いて衣装を着替える。

 

「綾城先輩、『Blossom(ブロッサム)』の出番って二時じゃなかったですか?」

「そうなんだけど、一時にインタビューがあるんだ。昨日は先輩たちに丸投げしてしまったけれど、今日は僕と拳志郎くんも出演するからそれについて。突発インタビューとかがきたらひまりちゃんお願いするね」

「あいよー。無理せんとな?」

「……うん、明日までは頑張るよ。明後日からはちゃんとオフ取ってるから」

「さよか。そんならええんやけど……」

 

 行ってきます、と言って手を振って控え室から荷物を抱えて出ていく綾城。

 それを見送って、着替え始めるその他メンバー。

 一曲歌ってバックダンサーだけでもかなり疲弊しているのに、このあとまた、あの緊張感の中パフォーマンスをするのか。

 

「綾城先輩、タフっすね。俺、あのでっかいステージの真ん中最前列でパフォーマンスしただけでなんかもう、寿命が縮んだ感じに疲れてるんですけど……」

「自分も……。家に帰って寝たいです」

「勝ち抜いたんやから明日までホテルやでぇ〜。ついでに言うと一年坊主どもは明日が終わっても明後日ネットアイドルライブに出演予定や」

「「「あ……」」」

 

 ちなみに二、三年生たちはアミューズメントパークの開園式でライブがある。

 仕事の規模としてはアミューズメントパークの方が大きいが、継続性はネットアイドルライブの方があるので一年生が任されることになった。

 現場も先輩方は遠方で泊まり。

 実質一年生たちは、出演後そのまま帰宅できるというわけである。

 他のアイドルがどうかは知らないが、事実上四日間ぶっつけライブ。

 

「しかも明日は決勝まで進めたら四回の出演。八曲は歌わなきゃいけないもんねぇ」

「珀ちゃんはその倍やん? さすがに明日はそこまで勝ち抜ける気ぃせぇへんけど、去年から向こうの練習プラス仕事と授業やし……向こうは向こうでハードっぽい話はきいとったから心配やね。ホテルの部屋でも寝れてへんやったみたいやし」

「え? そうなの!? それって疲れすぎてて逆に眠れなくなってるってやつ!?」

「それやねん。徹夜で歌詞の確認とかしとったっぽくて、今夜はなにがなんでも寝かすつもりなんやけど……」

「過労では……?」

 

 ロッカーの鞄からSDを抱き上げた後藤が、心配そうに花崗を伺う。

 一年生たちも、思っていた以上の綾城のハードスケジュールに着替える手を止めた。




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