表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/442

魔王軍ライブ


「そういえば俺、他のグループのパフォーマンスって初めて観るな~」

「自分もです」

 

 と、こっそりステージを見上げる魁星と周。

 それを聞いて驚愕の表情で目を見開く淳と宇月。

 あ、これは怒られる、と察した時にはもう遅い。

 

「はあーーーー!? 余所のグループのパフォーマンスを観るのも勉強だって言ったよねぇーーーー!? なんで観てないのぉ!? まして魔王軍は三大大手グループの一角だよぉ!? バカなの!?」

「なんで観てないのーーーーー!? 魔王軍は三大大手グループの一角で、ロック調な曲と病んだヴィジュアル系の曲が多く高身長で雄々しく性的で美しく、ファンを支配熱狂させ侵略しちゃうんだよ! 年上女性ファンの支持が多くて、そのセクシーなダンスにはプロも一目置いている。男の色気で言ったら他の追随を許さない。ベストメンバーのライブを見た夜は夢に見るといわれてるし、女性ワイチューバーこばちゃんが『女だけど魔王軍のライブ観たら精通した』という意味不明な名言を残すほど、すごいんだよ!」

「「ええ……」」

「え? こばちゃんってTVにも出とるワイチューバーやっけ……? 本当に迷言やな。なんでか言いたいことはわかるんやけど……」

「そうですね……意味はわからないですけど言いたいことはなんとなくわかってしまうのがなんか嫌っていうか……」

 

 わかるんかい、とドン引きの魁星と周。

 花崗と後藤までそんなことを言うほどには、魔王軍はすごいらしい。

 ちなみに出番を待つ鶴城と蔵梨も淳の解説に「ええ……?」と若干引いた。

 

「まあええわ。ほんならもの知らずな同級生ズに魔王軍メンバーの解説もしてやってぇな、淳ちゃん。夏の陣でも戦うことになるんやし、今月の定期ライブで『侵略』で淳ちゃんを獲りに来る気満々みたいやから、敵がいかにヤバい相手か知っておいた方がええやろ」

「わかりました! お任せください、ひまり先輩! でも先にライブ観てからでいいですか!」

「ええよ」

 

 ダッシュでステージ下待機。

 ここからではファンサも受けられないだろうに、とにかくアイドルの一番近くで応援したいらしい。

 MCもいつの間にか終わり、各々が定位置に着くと朝科が口火を切って声を張り上げるように歌い出す。

 一糸乱れぬダンスのあとで、檜野にパートが移ると各自が好きなように勝手に踊り出した。

 共通するのは――エロい。

 太ももから手が胸にゆっくりと移動する動き。

 パート担当が変わる度に艶めかしく揺らぐ腰。

 端々に入る吐息。

 煌びやかな中に漂う色香。

 いつの間にか淳の隣に魁星と周が並んで立っていた。

 あんぐりと口を開けたまま、その艶めかしいダンスからは考えられない激しいロック調の曲。

 サビは再び一糸乱れぬダンス。

 全員174センチ以上の高身長が、手足を伸ばしたダンスをするとそれだけで迫力もあった。

 間奏はなく、ラップが入る。

 ラップを担当するのは麻野と茅野の二年生コンビ。

 三年生も合間合間に合いの手が入るが合いの手なのにエロい不思議。

 ラップタイムのあとのCメロもどこから声出してるんだ、と思うようなあの容姿から考えられない低音声量の檜野のターン。

 たまに掠れるのがエロい。

 次のパートの雛森も抑揚がエロい。

 いちいちエロっぽいのが未成年には刺激が強すぎる。

 ラストのサビの時には完全に広場ステージに集まったお客さんを、虜にしていた。

 今日からSBOを始めたばかりの、夏休みの学生なんてひとたまりもない。

 ノリのいいロック調の曲も男子は好きだろうし、顔のいいエッチなお兄さんアイドルなんて女子は間違いなく好きなので。

 最後のサビも中央に立ち、指先でハートを作りながらしっかり決める魔王朝科。

 囁きのようにセリフを奏で終えると、数分前まで魔王軍を知らなかったはずの客席からは悲鳴と歓声が上がる。

 たった一曲。

 たった一ステージで、空気が完全に魔王軍のものになった。

 

「……っ……これが、三大大手グループの一角、魔王軍……!」

「か、か、か、かっこいいいいいーーーー! めっちゃエッチ~~~~!!」

「でしょー!」

 

 周はあまりの場の熱狂ぶりに息を呑む。

 反対に魁星は、綺麗に客席と同じ空気に呑まれた。

 目を輝かせて、淳とはしゃぐ。

 

「マジでかっこいいー! なんで俺今まで知らなかったんだー! ウワー! 知ってたら魔王軍受けてたぁー!」

「魁星」

「ごめんでも今はマジでそう思うー!」

「これは勇士隊のステージ見ても同じこと言いそうな魁星」

「言うかもー!」

 

 周に叱られても叫ぶ魁星。

 そのくらい、熱狂に呑まれているのだろう。

 まあ、魁星の容姿にも魔王軍は合っていると言えるので、本当に魁星が事前に各グループのことを調べてしっかり吟味していたなら、そういう未来もあったのかもしれない。

 ただ、ステージの空気に呑まれているだけなら淳は勇士隊でも、たとえば他の中堅グループのステージを見ても同じことを言いそうだな、と思う。

 それでもやはり、魔王軍は別格にエロかっこいい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ