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再チャレンジ(2)

 

 そうと決めたら早速スマートフォンの『イースト・ホーム』から星光騎士団の試験に応募した。

 すぐに『試験日 本日15:30 練習棟三階フロア、ブリーフィングルーム』と日時と場所の返事がくる。

 丸一日緊張しつつ、放課後。

 

「失礼します」

「はい、いらっしゃい」

「っ」

 

 ブリーフィングルームに入ると、そこには近未来的な白い部屋。

 白く半円形のソファーとテーブル。

 そのテーブルには、綾城珀と星光騎士団創設者にして東雲学院芸能科教師、凛咲玲王(りんさきれお)がノートパソコンを開いて待ち構えていた。

 ごくり、と息を呑む。

 

「しししし失礼します!」

「え? あ、うん?」

 

 星光騎士団、第一騎士団団長、綾城珀。

 そして、星光騎士団創設者“キング・オブ・ナイト”凛咲玲王。

 バトルオーディションでは姿を見せることのなかった二人と直接対面での面接。

 

「一年A組、音無淳です! この度はお時間を作ってくださりありがとうございます! よろしくお願いします!」

「星光騎士団騎士団長……いわゆるリーダーの綾城珀といいます。よろしくお願いします」

「ミーは顧問で礼儀作法担当教師の凛咲玲王だ。よろしく。さて……データを見せてもらったけれど――星光騎士団への入団テスト志願は二回目みたいだが」

「は、はい」

 

 東雲学院芸能科の新入生が最初に与えられる課題。

 その名もバトルオーディション。

 なにと戦うかというと、一対一で歌唱力の勝負が行われるのだ。

 あいうえお順で一人一曲ずつ歌い、前に歌った者より上手いか下手かを在校生に審査される。

 事前にグループへ加入希望を出していた者は、それを見て合否が出されるのでざっくりとしているがそれなりに重要なイベントだ。

 淳はもちろん『星光騎士団加入希望』としていたが、バトルオーディションの時は『否』をもらってしまった。

 歌唱力バトルも、負けている。

 

「バトルオーディションの時も音程がかなりズレているし、音域も出ていないところがある。サビは掠れているし、振付もなかった。予備にも入れるのは難しいが、練習してきたのか?」

 

 と、睨むように品定めをしてくるのは凛咲だ。

 創設者として星光騎士団の面接には、必ず凛咲が同席する決まりがある。

 

「練習は……これまでも、何度か。でも、自分は……その、今声変わり時期で」

「声変わり? それ言い訳になると思ってんの?」

「う……」

 

 紙コップの中身を口にしてから、少し大きめの音を立ててテーブルに置く。

 教師とは思えぬ圧迫面接ぶり。

 

「まあまあ、凛咲先生。一度落ちてるのにまた入団を希望してくれるなんてありがたいじゃないですか」

 

 と、そこをフォローに入ってくれたのが綾城。

 柔らかな金髪に琥珀色の瞳。

 穏やかな顔立ちと落ち着きのある声。

 人に安心感を与えるほのぼのとした人好きする笑顔。

 とても“彼女がいる”と公言している型破りなアイドルには見えない。

 

「でも質は大事だよー」

「実力じゃないじゃないですか」

「あ、ほんとだ」

「じゃあ、とりあえず少しお話ししようか。音無くん」

「え、っと……は、はい?」

 

 歌って踊るのか、と思ったら綾城にそう言われる。

 話、とは。

 困惑していると、綾城に「劇団所属歴が長いんだね」と言われる。

 ノートパソコンから経歴を見られているらしい。

 

「は、はい。幼い頃から人見知りがすごくて、心配した両親が劇団に入れてコミニケーション能力を伸ばそうとしてくれたらしくて。でも、おかげで幼い頃から多くの人と関われて、舞台をたくさんの人に助けられて作られていくのをみてきて、助け合うことを学んでこれたと思います」

「なるほど。舞台作りにも慣れているんですね」

「はい」

「趣味もミュージカルの鑑賞と、ファッション誌のチェック、カラオケとのことですか。このファッション誌のチェックとは?」

「あ、ええと……」

 

 言っていいのかな、と考えたが言っていいよね、とすぐに考え直しガバッと顔を上げる。

 

「俺、神野栄治さんのファンなんです! 俺の妹も劇団に所属して、今はファッション誌のモデルをやっているんですが、小学校の頃に劇団の帰りに親を待っていた時……変質者に妹が声をかけられて。危ういところを神野栄治さんが助けてくれたんです! それ以来、俺と妹のヒーローなんです! 憧れで、目標なんです! だから神野栄治さんと同じ騎士になりたい、と思って……どうしても星光騎士団に入団させていただきたいと思いました!」

 

 なにを恥じることがある。

 好きなものを好きと言うののなにが恥ずかしい?

 自分の志望理由をはっきり言わなければ後悔する。

 ちゃんとアピールすると、凛咲が姿勢を正す。

 

「採用!」

「え!?」

「神野、あいつ外でもそんなことしてたのかぁ! いいな、お前! 騎士の神野に守られた少年が成長して星光騎士団(ウチ)に志願してくるなんて最高じゃないか!? ただし第二騎士団からだぞ!」

「え? え? ほ、本当に……? え?」

「まあ、凛咲先生がいいならそのようにしましょう。ではこちらに名前を書いてもらっていいですか?」

 

 綾城が立ち上がり、紙とペンを差し出してくる。

 そこには“加入申請書”と書いてあった。

 

「上の段に“星光騎士団”と書いて、その下にクラスと名前を書いてください。こちらで職員室に提出しておきます。明日、他のメンバーに紹介するので同じ時間にここに来てください。スマートフォンはお持ちですか?」

「え? あ、は、はい」

「イースト・ホームのグループ専用チャットに招待するので、フォローしてください」

「は、はい!」

 

 なにが起きているのか。

 混乱しながら差し出されたスマートフォンの画面から、星光騎士団加入パスワードを入れてQRコードを提示される。

 カメラで撮影すると星光騎士団グループページに入ることができた。




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