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テストのあとの練習棟


「一晴先輩って、刀使ってた人だよね?」

 

 と魁星がドルオタに話を振ったのがまずかった。

 

「そう! 時代劇王子の異名のある、元星光騎士団十二代目副団長で、殺陣の達人。実際剣道七段の腕前。その他にも華道、茶道、書道も結構な腕前で、今は2.5次元俳優で活躍してるよ! ちなみに誕生日は七月八日。血液型A型。身長179センチ。体重64キロ。趣味は体を動かすこと。特技はセリフの暗記。神野栄治強火の同担拒否ガチ勢で、神野栄治に時々本気で嫌がられて罵られるけどそれすらも嬉しいドМだよ!」

「なにが怖いって淳くんが言ってること全部一晴先輩の公式プロフィール全文ママなんだよね」

「「「怖い怖い怖い」」」

 

 暗記している淳が怖いのか、そのプロフィールを公式にしている鶴城一晴が怖いのか、はたまた両方か。

 魁星と宇月と花崗が全力で顔を左右に振る。

 

「珀先輩、あっちのグループ大丈夫なんですかぁ? あっちのグループも珀先輩がリーダーなんですよねぇ?」

「あ、うーーーーーーーん……」

 

 宇月に心配そうにされて、しかし即答しない綾城。

 むしろわかりやすく視線が泳ぐ。

 やはりお世話になった先輩が二人も同じグループなのに、今度は自分がリーダーなのは大変なのだろう。

 

「栄治先輩が結構トラブルメーカーなんだよね。喧嘩っ早くて『applause(アプローズ)』の紗遊(さゆ)さんとすぐ喧嘩になりそうな雰囲気になるし、CROWNの鳴海(なりうみ)ケイトさんともソリが盛大に合わないのか空気ピリついた時は、ちょっと生きた心地しなかった」

「「「鳴海ケイトと!?」」」

 

 驚愕の声を上げたのは淳と花崗と宇月。

 あのCROWNの鳴海ケイトにも喧嘩を売れる神野栄治。

 強すぎません? と淳が呟くと、「栄治先輩と『Ri☆Three』メンバーって意外とつき合いは長いんだよ」という。

 

「栄治先輩在学中、普通科に岡山リントさん――秋野先輩がいたんだよね。それで、結構話をする仲だったみたい。栄治先輩の代で星光騎士団の知名度が一気に上がったのも、秋野先輩がアドバイスしていたからなんだ」

「え!? えええ!? そうだったんですか!? ドルオタにはお宝情報過ぎてどこからkwskしたらいいかわからないんですけど、え、待ってください、俺は今その情報だけで冷静さを欠きそうになってるんですけど!?」

「うん、一旦落ち着こうか。過去情報は逃げないから」

 

 ものすごい勢いで食いつくドルオタ。

 当時はまだ伝説のアイドル『Ri☆Three』の岡山リント。

『CROWN』の岡山リントは本名を明かしたことから、だいぶ”素”の漢らしい性格を隠さなくなったけれど当時は新ジャンル男の娘アイドルとしてきゅるんきゅるんだった。

 あの頃の岡山リントと、音無家永遠の騎士神野栄治が知り合いだっただと?

 

「入学当時の栄治先輩、真歳先輩に騙されて芸能科に入学させられたってものすごいローテンションだったんだって。それなのに普通科の先輩に『Ri☆Three』の岡山リントがいるってことで、無理やり交流を持って勉強したって言ってたよ。栄治先輩、やるからには手を抜かない人だからね」

「わ、わあ……! そうだったんですね!」

「だからなのか栄治先輩、リントさんには従順なんだけどケイトさんとはソリが合わないみたいでよく空気最悪になる」

「そ、そうなんですね……」

 

 ちなみに同じCROWNの空風マオトと星科新には普通の対応。

 鳴海ケイトとだけは本当に性格が合わないらしい。

 

「ちゅーか、そういうことは珀ちゃんのグループ、もうCROWNと仕事しとるん?」

「CROWNの番組に呼んでもらったんだよ。放送は夏の陣の前だから、そろそろなのかな? まあ、公式で発表あるんじゃない?」

「ええええ!? 録画予約しておかなきゃ! 地上波でゴールデンタイムにやってるCROWNの冠番組『王冠タイム』ですよね!? いきなりゴールデンタイムに地上波デビューまでするなんて、すごいです先輩!」

「リントさんと春日社長が仲良しだったらしくて、捻じ込んでもらったんだって。学科は違っても高校の後輩は可愛いって、とか言ってくれたし」

「はっ!! そ、そっか。岡山リントも東雲学院出身なんですよね!? じゃあ、俺もある意味あのCROWNの岡山リントの後輩になるんだ……! わあ、わあ……! 東雲学院受かって本当によかった~~~!」

「……淳くんって本当にアイドルが好きなんだねぇ」

「はい! 大好きです!」

 

 最初は恩人のことを知りたかったから。

 その次は恩人に会いに来て、そこからアイドルの世界を知った。

 不慣れでも、向いていなくても、努力して輝こうとする姿は演技の世界しか知らなかった淳には似て非なるものとして受け入れやすかった。

 元々、劇団に入れられたのはコミュニケーション能力を養う目的だったから。

 同じ”芸能”の世界。

 それでも演技の世界と違って、誰かを演じるのではなく、自分を磨き上げて自分の殻を一枚一枚破って輝きを増す姿に感動した。

 その前に心折れて、いなくなってしまうアイドルも見て――その輝きの儚さに花火のような哀愁も知った。

 

「ジュンジュンってそんなにアイドル好きなのに、なんでミュージカル俳優志望なの?」

「演技も好きだから。歌も踊りも演技も全部できるのはミュージカルくらいかなって」

「2.5次元も結構歌って踊るよぉ? 有名アイドルゲームの舞台は演じながら歌って踊るしぃ。あれすごいよぉ、どういう技術使われてるんだろうって思う~。マジ本物の二次元キャラがリアルな舞台で歌って踊ってるの~」

「そういうのもいいですよね! アイドルゲームの舞台ってそんなにすごいんですか?」

「そうそう! すごいびっくりするよぉ! 今度円盤貸してあげるから観てよぉ。一緒にライブ行こう~」

「行きたいです!」

 

 声優オタク、布教が上手い。

 

「ああ、歌って踊って演じるのが好きなんね」

「ナッシーて結構欲張りさんなんだねぇ。でも、僕が好きな世界と被りそうだからいつかプロになって同じ舞台に出ることもありそう。お互い頑張ろうねぇ?」

「はい!」

「宇月先輩、ジュンジュンにだけ優しくない?」

「魁星、お前は明日のテスト勉強を優先してください」

「あ、周くんとこたちゃんは魁星くんとひまりちゃんの明日のテスト勉強を見てあげてくれる? 美桜ちゃんと淳くんはこっちでSBOと夏の陣で歌う曲の話をしたいな」

「「ンェ!?」」

「「了解です」」



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