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麻野VS後藤(3)


「やっぱり総票数が少ないな~。大手魔王軍対星光騎士団の二年生同士決闘にしては」

「まあ、しゃーなしやん? 大久保ちゃん、司会お疲れ様~」

「はいはい~。じゃあ、お仕事に戻るよ。校庭ステージは今日一日おれが担当だから、花崗、ライブしに来てよ」

「そやねぇ、もう少し一年たちを休ませたら来るわ。一時間前に体育館でライブしていたから、まだくったりしてんねん」

「え?」

「ん?」

 

 停止する大久保。

 舞台袖で飛び込みライブを再開するために、提携しているイベント会社スタッフがステージを元に戻している。

 その空き時間での雑談。

 プンむくれの麻野と舞台袖で体育座りをしてガクブルしている後藤。

 彼らをそっとしておきつつ、同級生の大久保と花崗はなんとも言えない空気。

 その横でまだ顔色があまりよくない疲労の滲む魁星と周と、推しうちわを整理する淳。

 

「なに?」

「朝一番もライブしたんだよね? 星光騎士団」

「うん、そう」

「一時間前にもライブしたん?」

「せやね」

「ス、スパルタ~~~~」

 

 ドン引きする大久保。

 その反応は体育館ステージ担当の行藤と同じ反応。

 やはり一日にライブを連続で二回はおかしいんだろうか。

 しかし、オンリーライブならMC、アンコールの時間含めて一時間、または一時間四十分から二時間。

 曲数は十曲から十五曲。

 もっと多いと二時間四十分から三時間四十分。

 曲数はニ十曲から二十五曲。

 アイドルの場合は前者が多い。

 歌って踊るからだ。

 長時間の場合、衣装を着替える時間やセットの変更時間も含まれるので曲数はもっと少ないかもしれない。

 東雲学院芸能科のような複数のグループがある場合長時間ライブは出番が一グループにつき一回だけの場合がほとんどなので、あまり一回のライブで何曲も歌ったり一日に何回もライブすることはないのだ。

 まして、体力もあまり増えていない入学二ヵ月の一年生が。

 

「そうかいな? 星光騎士団(ウチ)は年に一回オンリーライブもあるさかい、はよぅ育ってもらわんと困るねん。夏の陣まで時間もあらへんしんな」

「ヒェ~~~~! さすが最大手の星光騎士団! IG(アイドルグランプリ)夏の陣、マジで狙ってんの~」

「まあ、珀ちゃんもわしも夏の陣のあとは団長副団長を引き継ぎやからな。珀ちゃんが本気でやるっちゅうんやからわしも本気でやるつもりや。一年坊主たちまでつき合わせるんはカワイソやけど、ついてこれへんなら、まあ、それまでやしね」

 

 怖い怖い怖い。

 淳も含めて一年生ズの血の気が引く。

 ついてこれなければ置いていく、という言い方に大久保もドン引きの表情。

 しかも花崗は満面の笑み。

 本気で怖い。

 

「あ、あの、淳、星光騎士団が年に一度オンリーライブをやるというのは?」

「…………」

「あ、長い説明は大変か。今夜SBOにログインするから、その時に聞いていいか?」

「(コクリ)」

 

 思い切り説明したかったのだが、淳の声が出ないことをすぐに思い出し、周が出したのはSBO。

 最近淳と会話するのはSBOの中だけだ。

 麻野がそのSBOに反応した。

 

「SBO? 確か星光騎士団がプロモーションに参加しているVRMMOだな? くううう! やっぱり卑怯だ! そんな大手プロモーション、我ら魔王軍の方が相応しいだろう!」

「なぁーーーーッはっはっはっ! それならちょうどいい!」

「ひいい!? り、凛咲先生!?」

 

 またも悔しそうにむちゃくちゃなことを言い出した麻野は、凛咲に肩を組まれて変な声を上げた。

 ニチャア……と目を細めて微笑まれて、さっきまでの威勢はどこへやら。

 顔を真っ青にして震えあがっている。

 

「なななななな……なんでしょうか」

「麻野ぉ、お前がそんなことを考えていてくれたなんて……嬉しいぞ~」

「え!? なに、ど、どういうことですか!?」

「くっくっくっ……実はフルフェイスマスク型VR機と紫雷会社の方から東雲学院芸能科との提携話が進んでいてなぁ……だが、予算的に芸能科生徒全員分のフルフェイスマスク型VR機が揃うのにまだまだ時間がかかるんだ」

「え? え?」

 

 なんだろう、魔王軍にとってもなにも損のない話を持ちかけているはずなのに、この胡散臭さ。

 麻野がガチ怯えの借りてきた猫状態なので、凛咲先生が悪い大人にしか見えない。

 要は、生徒全員分はまだ揃えられないが、最古参三大大手グループ『魔王軍』と『勇士隊』のメイン五人分は確保できたので、近々どちらかのグループに話を持っていくつもりだった。

 決闘に負けたついでに、麻野がそんな妬むような言い方をしたのでこりゃあ渡りに船だろうと確保した五機のフルフェイスマスク型VR機を『魔王軍』に進呈する。

 SBO内で開催される来月のレイドイベントは星光騎士団だけでなく、魔王軍にも参加してもらう。

 という話を、ビクビク怯える麻野にしていた。

 

「は、はあ!? ゲームのイベントに出演するということですか!? い、いや、無理でしょう! 来月って七月ですよ!? 期末テストですよ!? 再来月にはIG夏の陣も始まりますし……練習時間をこれ以上削るなんて……!」

「それは星光騎士団(ウチ)も同じなんだよなぁ」 

「……!!」

「SBO内でのライブについてはフルフェイスマスク型VR機とSBOの宣伝の契約関係で開催数を減らすことはできない。じゃあライブできるグループを増やすのが理想。大丈夫大丈夫、それならウチと魔王軍で所有するフルフェイスマスク型VR機をIGの予選で落ちた中小グループに貸し出せばいい。まあ、大手が一度もライブしないのは困るけどなぁ?」

「あ、ひ、あ……っ」

「やってくれるよなぁ? 大丈夫大丈夫、そっちの顧問と魔王にも、ちゃあんと先生がお話つけてやるから。麻野くんは先生と一緒に仲間たちにこの件をお奨めしてくれればそれでオーケーなのよ。んね? いいよね? だって決闘で負けたしね? んね?」

「ンヒ……ひ、っ……は、はひ……っ」

「だーっはっはっは! さすが麻野くん! 話がわかるねぇー!」

 

 

 と、バシバシ背中を叩かれる麻野。

 げっそりした表情だがもうアレは逃げられまい。

 

「SBOってなに?」

「ウチのメンバー全員強制参加しとるVRMMOちゅうゲームやで。東雲学院芸能科全部巻き込まれる予定やし、大久保もそのうち誘われるんと違う?」

「へえ~。おれもゲームやるけどアプリゲームばっかりだからなぁ。VRは興味あったんだけど、機材が高くて諦めてたんだよね。ちょっと楽しみだな」




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