表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

551/553

また来年もトップ4に


 魁星を軽く小突いて、新座を落ち着かせる。

 いつもの慣れたメンバーではないからか、新座の体が緊張でガクガク震えていた。

 淳と千景が左右で背中を撫でる。

 

「そ、そういう時は……あの、き、緊張でヤバい時は……『嫌なことは早く終わらせよう!』……って、考えると、い、いいですよ……!」

「な……なるほど……!」

 

 それは嫌なこと、なのか?

 淳はライブが嫌いではないし、お客さん――ファンと交流する機会もどうにか設けたいと考えているくらい。

 いや、一つ考えてはある。

 それはまだ公表できていないだけで。

 

「お疲れー」

「あ、お、お疲れ様です!」

「ウッホ……さすが後藤先輩デザインの『トップ4』専用衣装完成版! 昨日のリハーサルではなかったマントが最高にかっこいい!」

「ほ、本当です……! すごい! こ、こんな生地があるんですね……!」

 

 次の出番が二年生なので、三年生の『トップ4』――茅原一将、蓮名和敬、夏山真紅、後藤琥太郎が揃って舞台裏に登場。

 今年の『トップ4』はすべて後藤が制作。

 昨日のリハーサルはマントがまだ「洗濯して乾いてない」らしく、装備していなかったのだが、本番前の四人はそれをしっかりと装着していた。

 星空を模した深い藍色の布地に白い小さな点とラメが散りばめられた、翻る度に天の川のような色合を出すマント。

 千景が3年生の『トップ4』のために作った曲はイメージが『星』。

 これは多分、東雲学院芸能科のアイドル(スター)のイメージが、千景の中で『憩星矢(いこいせいや)』で固定されているからだろう。

 千景が東雲学院芸能科に入学して、アイドルになるきっかけになった人。

 千景が今も昔も大好きなアイドル。

 ちなみに食いついてきたのは『勇士隊』一年生、『トップ4』に選ばれた夕陽廉歌(ゆうひれんか)

 後藤と同じ被服部で、界隈では有名な雑誌の表紙を飾るコスプレイヤー。

 というよりも、夕陽がいるということは――いつの間にか一年生の『トップ4』のパフォーマンスが終わっている?

 

「やっぱり後藤先輩のセンスは最強です……! オリジナルの衣装がこんなに完成度高いなんて凄すぎ! ぼくもデッサン頑張らなきゃって思います〜」

「うん、夕陽くんならすぐに作れるようになると思う……」

「はい! 先輩が卒業したあとも僕が絶対被服部を強くしますねっ!」

「う……うん……?」

 

 被服部を、強く……?

 ちょっとよくわからないが、被服部は被服部で新たな風――夕陽により受け継がれていくのがわかってほっこりする。

 

「二年生の皆さん……! 出番です!」

「は、はーい」

 

 こういう一年生と三年生の絡み、もっと見たいドルオタとして、と胸に拳を握っていた淳と胸で両手を合わせていた千景の肩を魁星が掴む。

 このてぇてぇを、しっかり脳裏に刻みつけておきたい。

 とか思っていたが出番である。

 魁星の聞いたことのない低音ボイスで「行くよ」と言われてしょぼん……となりつつステージへ連行。

 仕方ない。

 この場にいるのはオタクとしてではなくアイドルとして、だ。

 だからステージに登ったら全力で“アイドル”になる。

 

「本日はお越しいただきありがとうございます! 二年生の『トップ4』をいただきました! 星光騎士団の音無淳と!」

「花房魁星と!」

「ゆ、勇士隊の御上千景、と……!」

「花鳥風月の新座優星です!」

「一年生に続き、次は我々二年生のパフォーマンスを見ていただきましょう! もちろん、今年も千景くんが作詞作曲を担当してくれた二年生『トップ4』オリジナル曲となります! 明日十二時よりMVが東雲学院芸能科公式チャンネルに投稿される予定なので、どうぞお楽しみに! それでは聞いてください!」

 

 淳がMCを務め、宣言とともにイントロが始まる。

 四人全員での歌い出し。

 空を指差しながら、だんだんと夕闇に染まりつつある色を見上げた。

 こんな機会でないと千景とは一緒に歌えないので、とても心地いい。

 のびのびとしていて、澄んだ歌声。

 これでなんで自信がないのか、本当に意味がわからない。

 そしていつも背を合わせでステージに上がっているからか、魁星とは他の誰よりも息の合ったパフォーマンスができる。

 新座とは初めてだが、『花鳥風月』は元々日本の伝統芸能に多少なりと齧った人間しか加入できない。

 それだけの自力があった、ということで一ヶ月ばかりの練習でも十分淳たちと息を合わせたパフォーマンスができている。

 純粋に楽しい。

 

「~~~~♪」

 

 最初で最後の四人でのステージ。

 とても楽しかった。

 来年もこの『聖魔勇祭』の『トップ4』のステージに上がれたらな、と思うけれど、どうだろうか?

 いや、必ずこのステージの登ろう。

 だって綾城は三年間、『トップ4』から落ちたことがない。

 Blossom(ブロッサム)のリーダーとして、星光騎士団のリーダーとしても活動していた。

 彼のようなアイドルに――いや、目標をデカくするのなら、『綾城珀』という『キングオブアイドル』よりもすごいアイドルになろう。

 そしてミュージカル俳優になる夢も。

 どんな夢も、諦めなくたっていいと言ってもらえたから。

 やると決めたからには、全力を尽くす。

 

「ありがとうございました! また来年も、俺たちを見ていてくださいね! 全力で、頑張るのでー!」

 

 わあ! と客席から声が上がる。

 二年生の『トップ4』の出番は、これで終わりだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ