表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

546/553

学生セミプロのドルオタ本領発揮


「優勝したぁ……」

「優勝、したね……本当におめでとう……」

「なんで他人事なんですか! 先輩たちがいたからですよ!」

「そうだよおおお! 宇月先輩、後藤先輩!」

 

 歓声の中で宇月が呟き、後藤が宇月の背中を撫でる。

 周と魁星が二人を左右から抱き締めると、二人ともようやく実感が湧いてきたのか目許を拭う。

 そのまま表彰と、盾の授与。

 賞金と賞品の贈呈。

 なんだか淳はまだ、少し現実味がない。

 

「リーダーの音無さん、代表して一言お願いいたします!」

「ええと……そうですね。俺は来年、Frenzy(フレンジー)のリーダーも兼任して、星光騎士団のリーダーだけでいられるのは今回の冬の陣だけだったので……先輩たちを優勝という錦を持たせてみ送れるのは本当に嬉しいです」

「そうなんですよね。来年はFrenzy(フレンジー)のリーダーと星光騎士団のリーダーを兼任で努められるんですよね! 来年の夏の陣、そして冬の陣もどうか全力を尽くしていただければと今から我々も楽しみにしております!」

 

 司会の一言のあと、エンディングが流れ始める。

 主催の秋野直芸能事務所代表、CROWN(クラウン)の秋野直が登壇。

 リーダーの淳に、花束を手渡してきた。

 

「優勝おめでとう~」

「あ、ありがとうございます!」

「それでは! 今年のアイドルグランプリ冬の陣はこれにて閉幕! 優勝は東雲学院芸能科、星光騎士団! このあとFrenzy(フレンジー)の三人目メンバー発表があるから、そっちも楽しみにな! 今後の星光騎士団の活躍にも超期待だが――ここでいちからも大大大! 重大告知!」

 

 お?

 まさかの優勝をカッ喰らう情報か?

 秋野直代表がモニターに向かって手を掲げると、小声で「安心しな、星光騎士団の優勝に水を差すつもりはねーよ」と言われる。

 

『秋野直芸能事務所 新アイドルグループデビュー決定』

 

 モニターに表示された文言に、淳の方がマイクの存在を忘れて叫ぶ。

 CROWN(クラウン)に次ぐ、秋野直芸能事務所のアイドル!

 今までCROWN(クラウン)を超えるようなアイドルは出てこないだろうと言われていた。

 CROWN(クラウン)の存在が大きすぎて、秋野直芸能事務所からはアイドルグループは出せないのではないか、とまで言われていたのだ。

 現在研修生の扱いとはいえ、元魔王軍の朝科たちがいるのにもかかわらず。

 だが、デビュー。

 新しいアイドルが、アイドルのパイオニアと呼ばれる秋野直芸能事務所からデビューするなんてそんなのドルオタが興奮しないわけがない。

 

「秋野直芸能事務所からCROWN(クラウン)に続くアイドルがデビュー!? わああああ」

「ヤバい、ドルオタが発作起こしてる」

「ごたちゃん、万が一に備えてナッシーを押さえておいて!」

「淳、あなた疲れているのにそんなに叫んだらまた倒れますよ!?」

 

 忘れがちだがアイドルに――主に神野栄治に興奮しすぎて失神したことがある音無淳。

 なお、複数回。

 その都度倒れた淳を介抱してきたのは周と魁星。

 つまり周の言うことはド正論。

 

朝科旭(あさしなあさひ) 檜野久貴(ひのひさたか) 雛森日織(ひなもりひおり) 後藤琥太郎(ごとうこたろう) 夜兎椥(やとなぎ)レン』

 

五人の名前と宣材写真が次々現れ、後藤のところで星光騎士団のメンバーが全員「ええええええええええええ!?」と劈くように叫ぶ。

 いつも冷静な周と鏡音も聞いたことない声を出していた。

 後藤!

 確かにメンタルケアも込みで秋野直芸能事務所に所属が決まっていたけれど!

 もう表に出るのは嫌だと言っていた後藤が!

 再び、卒業後もアイドルに! 

 そして誰だ、夜兎椥(やとなぎ)レン。

 知らない人だ。

 

『その名前はElysium(エリュシオン)

『誰も知らない楽園へ、誘う』

『1/10 デビュー!』

『デビューライブ 1/24(日) 美桜公園アルティメット劇場 17時開演!!』

 

「おぎゃああああああ! 今からスケジュール空けますぅぅぅう! S席絶対買うぅぅぅ! チケットの発売はいつからですかーーーーーー!?」

「ちょ、ちょっと落ち着いてもらっていいかぁぁあ!?」

「ヤバいヤバいヤバい! ジュンジュンそれ他所の事務所の代表!!」

「淳くんそれ秋野さん! 秋野さんだから!」

「チケットならあげるから……!」

「もらうわけないでしょう!? ドルオタが関係者からチケットを!」

「もらっとけお前は!!」

 

 星光騎士団メンバー全員で秋野の方を揺する淳の回収に走る。

 さっきまでの紳士的な淳はもういない。

 もうそこにいるのは、ただのドルオタ。

 

「だってだって、朝科先輩たちですよ!? 後藤先輩ですよ!? 俺、朝科先輩たちが一年生の時に体育館ステージでお客さんガラガラの中、それでもパフォーマンスをしていたのを見てたので知ってるんです! そんな先輩たちがプロデビューするんですよ!? しかも、秋野直芸能事務所から! あああ、こんなのもう! デビューライブ特等席で応援するしかないじゃないですか! よかった、嬉しい! ドルオタとしてこんな嬉しいことあんまりないですよ! 全国に言えますよ、俺! あの三人が魔王軍に入った頃から応援しているんですよぉぉぉぉお!!」

 

 叫ぶドルオタ。

 マイクを通して、会場に響き渡るドルオタの主張。

 なお、一瞬忘れそうになるが今さっきIG冬の陣を優勝したグループのリーダーである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ