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再戦の結果


「さあ、これにて決勝戦の二グループのパフォーマンスが終わりました! 次に投票が始まります!」

 

 司会のアナウンサーがステージに残って客席に宣言する。

 ここからは配信先でのアンケートや、会場のファンの投票時間。

 全力を尽くしたので、あとはパフォーマンスを見たお客さんやファンやリスナーに委ねるのみ。

 

「結構時間押しちゃっているけれど、Frenzy(フレンジー)の三人目発表時間来ちゃったね。どうするんだろう?」

「え? もう18時ですか? あ、本当だ」

 

 宇月がスマホを持ってきてSNSを見る。

 時間を確認すると確かに18時。

 春日芸能事務所の公式アカウントがちょうどその時に『18時にFrenzy(フレンジー)三人目のメンバーを発表予定でしたが、アイドルグランプリ冬の陣決勝戦の集計中ですので、発表時間を19時に変更いたします』というアナウンスが流れてきた。

 星光騎士団が決勝に残らなければ普通に発表されていただろうが、今発表すれば間違いなく投票結果に影響を及ぼすと感じての配慮だろう。

 淳も思わず胸を撫で下ろしてしまった。

 こんなことで影響を受けて勝っても嬉しくない。

 やはりこういうのは実力で勝ち取りたいものだ。

 まあ、三日目まで勝ち進んだのはFrenzy(フレンジー)の影響が大きいし、もうここまで来たら斬って話せる者でもないのだけれど。

 

「ちなみに冬の陣の表彰式にFrenzy(フレンジー)全員集合とかかないのか?」

「え……!?」

「やっ!」

 

 声をかけてきたのはLethal(リーサル)、リーダーの奥谷真継(おくやまつぎ)

 爽やかな笑みを浮かべつつ右手を挙げてこれまた非常に爽やかに挨拶してきた。

 いかのも王道なアイドル。

 元スポーツマンらしい、とてもよく通る声。

 

「純粋に俺も気になってたんだよな~。二人目のメンバー、Vtuberだっただろう? ステージとかどうやるのかなって」

「よく聞かれますが、デビューライブをご覧ください。チケットは各チケット販売サイトで販売中ですし、ワイチューブではメンバーシップに入っていただければアーカイブも見られますよ。まあ、やっぱり現地で見ていただくのが一番おすすめですけれど」

 

 笑顔でいつもの対応。

 言われた方は「ふーむ」と腕を組み、まじまじと淳を見下ろす。

 

「君がリーダーなんだろう? 来年は星光騎士団のリーダーとFrenzy(フレンジー)のリーダーを兼任するんだよな? 大変じゃないか?」

「恐れ多くも綾城先輩と同じことにチャレンジさせていただくことになりました。大変ですが、精いっぱい頑張ろうと思います」

「そうかー。えー。ちなみに今日三人目発表後に三人そろってプチライブとか……」

「しないですね」

 

 スパーン、と一刀両断。

 少なくともこの会場にはFrenzy(フレンジー)のメンバーは淳しかいない。

 あと六日ばかりで大晦日……Frenzy(フレンジー)のデビューライブがある。

 どうしても気になるのなら、とワイチューブのFrenzy(フレンジー)公式チャンネルを教えておいた。

 

「前日に三人そろってデビューライブについての雑談と告知配信をする予定なので、見てください。まあ、梅春さんはワイプ参加予定なんですけれど」

「そ、そうかー。でも興味深いから是非見せてもらうよ」

「はい。デビューライブも是非ご覧ください」

 

 さすがに多少は空気が読める人だったらしい。

 よかった。

 もし淳の予防線に気づかず、そのままズケズケ踏み込んでくるようならもっと明確に拒絶するか、あるいは他のLethal(リーサル)メンバーに話を投げて巻き込んで煙に巻くしかないかと思っていた。


『さあー! CM明けまして――いよいよ今年の冬の陣の優勝者が決定します! 星光騎士団が優勝した場合、アイドル界初の学生セミプロの優勝! Lethal(リーサル)が優勝した場合も初優勝! どちらが勝っても初優勝です!』


 スタッフが小声で星光騎士団とLethal(リーサル)をステージへ誘導する。

 左右の舞台袖から星光騎士団とLethal(リーサル)がそれぞれ登場すると、司会も緊張の面持ちで頭上のモニターへと手を掲げた。


『それでは、まずネット投票の結果発表です!』


 ステージで司会が叫ぶ。

 ちょっと見たことのない数字が双方の点数表示欄に表示される。

 星光騎士団『25,639票』、Lethal(リーサル)『12,485票』。

 ギョッとした。

 春日芸能事務所はこうならないように配慮して三人目の発表時間をずらしたというのに。


『おっとー! これはなかなかの大差! しかし! まだわからない! 審査員票と、リモコン投票、会場票がまだ残っております! もしここでリモコン投票や会場票の大半がLethal(リーサル)に流れていたら、勝敗はわかりません! それでは! リモコン票を――追加してください!』


 司会の声に、カウンターがはちゃめちゃな数字を出し始める。

 星光騎士団『36,925票』、Lethal(リーサル)『22,166票』。

 さらに差が開いた。

 これは、勝てる。

 ここから会場票でひっくり返すのは、かなり困難。


『次に会場票! オープン!』


 星光騎士団『41,528票』、Lethal(リーサル)『28,521票』。

 ほぼ確定。

 さらに最後に審査員票を追加。

 星光騎士団『42,652票』、Lethal(リーサル)『29,329票』。

 星光騎士団のメンバーは思わず顔を見合わせてしまう。


『今年のアイドルグランプリ冬の陣、優勝は――東雲学院芸能科、星光騎士団! おめでとうございます!』


 ワア! と凄まじい歓声が客席から上がる。

 星光騎士団、学生セミプロ初のアイドルグランプリ、制覇。

 歴史的瞬間だった。



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