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新居候補宿泊(4)


「でもなんか、見たことある“ガワ”なんですよね」

「な。声もそうだけど絶対秋野直芸能事務所の社長だろこの女」

 

 遊佐を容赦なくぶっ飛ばした、秋野直芸能事務所の女社長。

 美しいモカ色の髪に、蒼い瞳。

 話し方、声、容赦のなさ、ガワの特徴、既婚者、兼業など類似点が多い。

 いいのか?

 よその社長がよその事務所でVtuberやるの。

 

「まあ、秋野直とうちの社長仲いいし、秋野直芸能事務所はVtuber業やってないしな」

「そうですね。秋野直芸能事務所の方はまだそこまでの余裕はなさそうですもんね。コメプロでデビューして、感触を調べているのかもしれませんね。もしも秋野直芸能事務所の方でもVtuber業をするとなれば、ここで得たファンを連れていくこともできますし」

「Vtuber、転生とかいって事務所変わったり個人勢になったりするイメージあるもんな」

 

 まあ、そこまでは単純なイメージだったり予想の話。

 本当に彼女が秋野直芸能事務所の社長かはわからないし、春日社長とそういう話をしているかは一切不明。

 

「まあでももしもガチで本人だとしたらVtuberの方が都合がいいのはわかる」

「他社の……芸能事務所の社長ですもんね……」

 

 そりゃあ顔出しなんてできない。

 和香アゲハも積極的に顔出しはしたくないが、店の宣伝はしたい人だった。

 春日社長は困っている人を何かしらの方法で助けようとするので、もしかしたらコメプロのVtuberはそういう人が多いのかもしれない。

 たとえそうでなくとも、このナターシャ・カルディアナというVtuberの歌声がこういう形でも世に出たのはそれだけで功績ではなかろうか。

 この歌声は世に出さなければ、という謎の使命感を覚えてしまう。

 そのくらいに、上手い。

 まあ、そうなると半ば脅されてVtuberやっている松田が少し可哀想だけれど。

 

「それにしてもVtuberって結構なんか……すごいですね。なんというか、設定的なものが」

「三期生とかめっちゃ流行りの女向けマンガヒロインって感じだよなぁ」

「確かに。流行りも取り入れていて、面白いですね」

「あとナターシャならこれも好き。歌い方が参考になる。Bメロのエッジの部分。これのここ」

「え? 聴いてみてもいいですか?」


 そうして石動オススメの“歌ってみた”をいくつか教えてもらい、試聴。

 石動がおすすめしてくるだけあり、どれも勉強になる。

 Frenzy(フレンジー)デビューまでもう残り半月。

 三日後にはFrenzy(フレンジー)の“二人目”の情報開示がされる。

 その次は冬の陣。

 淳にとっては団長(リーダー)になって初めてのIG。

 しかも、最終日にはFrenzy(フレンジー)の“三人目”のお披露目がある。

 話題を全部掻っ攫うつもりで、挑まなければ。




 十二月二十日。

 この日はFrenzy(フレンジー)の“二人目”お披露目の日である。

 松田は昼間、普通に仕事をしているが、“二人目”の情報開示は十五時なので多分普通に仕事中だろう。

 淳としても自分の情報開示が終わっているのでなんとも爽やかな心持ちでいられる。

 他人事だとこんなにもただのドルオタとして待ち遠しい気持ちになれるのか。


「音無、今日ってプログループの方の二人目のメンバー発表の日じゃねーの?」

「そうだよ」

「十二時発表じゃないのか?」

「二人目発表は十五時、三人目発表は十八時発表なんだよ」

「え? なんで?」

「まあまあ」


 天皚が淳の机の前まで来てスマホを操作する。

 なんで時間をずらすんだ、とか、そんなのは淳も知らない。

 焦らす時間をどんどん増やすのが目的……と思ったが多分社長の性格の悪い部分が出ており、IG冬の陣の終了時間に合わせるためではないかと思っている。

 どんどんアダルティになる……とかそんな理由ではない。……と、思いたい。


「くぅー、気になるよなぁ、二人目! 石動先輩なんじゃないか、って言われてるけどシルエットがそんな感じじゃないんだよな」

「そーそー。でも絶対石動先輩はいるだろ」

「いるよな?」

「さあーーー? どうだろーーーー?」


 いつの間にやら緋村や飯葛、長緒の魔王軍参戦。

 さり気なく淳からなにかしらの情報……ヒントを得られないかとチラチラしてくる。

 姑息な。


「ちなみに二人目の予想ってどんな人がいるの」

「まあうちの学校の卒業生説はめっちゃあるなー。勇士隊繋がりで高埜先輩とか」

「実は御上なんじゃねーの、とか」

「本人全力否定してたけどな」

「石動先輩なら柴先輩の可能性高くね? とかさー」

「大穴で花崗(みかげ)先輩説」

「もしくは完全に新人説」

「でも当ててぇー! なんかこれを当てられたらめちゃくちゃドヤ顔できるっていうかー!」

「ヒント! ヒントもらえない!?」


 確かにアレを当てられたら本当にすごいと思う。

 ついにヒントを求められるようになってしまったので、残り三時間、彼らの想像をどう掻き立ててあげたらいいのかを考える。

 せつかくなので、発表の瞬間まで考察を楽しんでもらいたいではないか。


「じゃあ、ヒント。一つだけ」

「マジ!? なになに!?」

「ささやかでいいです!」

「よろしくお願いします!」

「ヒント! 今まで上げられた名前に正解はいません」

「「「「うっそだろおおおおおお!?」」」」



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