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新居候補宿泊(1)


(さてと……テストの結果も出たし、泊まりの準備をしようかな)

 

 例の新居の夜間の様子を確認するため平日の夜だが予約した通りに寝袋を持ってお泊まりへ。

 これで特に隣人トラブルや夜間の治安、騒音に問題がないようならこの部屋を借りて作業場兼新居として基盤を整えることになる。

 

「それじゃあ行ってきます」

「気をつけて行ってくるのよ」

「行ってらっしゃいー。っていうか、明日が学校じゃなかったら私も行きたかったなー」

「問題なかったらあの部屋借りることになるんだし、そうなったら泊まりに来たらいいじゃん」

「そっか!」

 

 鞄を背負い、自転車で中央東区に移動する。

 自宅から新居予定のマンションまでの道のりの確認と、移動時間の確認。

 明日はマンションから学院までの道のりと、移動時間を確認する予定だ。

 朝のランニングルートも探しておきたい。

 まあ、現在の時刻は夕方五時半。

 コンビニでおにぎりと水を購入して、コンビニの位置も確認。

 

「あれ? なにしてんのお前。大学の下見?」

「え? 上総さん?」

 

 コンビニから出て自転車に乗り直したところで、まさか過ぎる人物と遭遇した。

 どうして石動がここに?

 

「えっと、俺は近くのマンションに部屋を借りる予定で……今日夜の状態を見るために宿泊してみることになっているんです。あそこのルドルフビルの五階……」

「え」

「え?」

 

 すごく変な顔をされる。

 なんだ、と淳も首を傾げるが、理由はすぐにわかった。

 コンビニでお弁当を買った石動が帰ったマンションはルドルフビル。

 しかも五階。501号室。

 淳が不動産屋から預かっているのは502号室。

 部屋の扉は距離があるものの、カードキーを手に持ったまま二人で笑ってしまった。

 

「こんなことある? マジウケるんですけど」

「上総さんもここから大学に行ってたんですね」

「まあ、そうね。じゃあ、今夜はここで一泊?」

「はい」

「ふーん。まあ、暇になったらテレビでも見にくれば? ネット繋がってないだろ、その部屋」

「いいんですか!?」

 

 じゃあすぐに、と鞄を玄関に放り投げてからすぐに隣室に入り込む。

 少し呆れたような石動が、ドアを開けて迎え入れてくれた。

 

「わあ、汚い!」

「うるさいよ」

 

 部屋に入った第一声。

 なかなかに片づいていない、ザ・男の部屋。

 石動に「片づけていいですか?」と聞くと「え? いいの?」と聞き返される。

 

「掃除機あります?」

「どこやったっけ」

「ゴミ袋ください」

「この辺にあった気がする」

 

 なんてやり取りをしつつ、部屋の片隅からサクサク荷物を収納していく。

 一番目立つのは服。

 なんとなく、着たら床に放り投げているようだ。

 それらをまとめて洗濯機横の籠に入れる。

 なんで洗濯籠はちゃんとあるのに中身空っぽだったんだこの人。

 

「下着はちゃんと洗っているんですよねぇ?」

「洗濯怠くて買ってたり……えーと……」

「洗わず履いているとか言いませんよね?」

「…………まあ、そういう時も、ある。冬とかセーフだろ」

「もおお~~~~~」

 

 まずは下着から洗うことにした。

 幸い安いコンビニ下着ばかりなので、全部一緒に洗って大丈夫そうだ。

 

「あれ、洗剤は?」

「どっかにあるんじゃない?」

「も~~~」

 

 だが、洗剤がある場所なんてだいたい同じ。

 洗面所下を見てみるとやはり開けられた衣類用洗剤を発見した。

 幸いにも柔軟剤入り洗剤。

 洗濯機に入れてから、なんとなく脱衣室とお風呂場を確認。

 

「最後に掃除したのはいつですか?」

「掃除……?」

 

 溜息を吐き、腕をまくる。

 リビングなども気になるのだが、赤カビが見えるのが気になって仕方ない。

 スポンジに風呂用洗剤をつけて風呂場全体を丸洗いする。

 シャワーで流して一旦額の汗を拭く。

 脱衣所も掃除機をかけ、洗面所も綺麗に洗い上げてもう一溜息。

 

「よし、次はキッチンですね。まあ、先にご飯食べるか」

「お前家事スキル高くない?」

「上総さんは家事でなにかできることはありますか?」

「………………ない、かな」

 

 思い切り目を背けられる。

 はあ、と溜息を吐き、「教えるので、少しずつ覚えるといいと思います」と言ってひとまずリビングでおにぎりを食べた。

 ゴミの分別は燃えるゴミと燃えないゴミ、資源ゴミ。

 ゴミはしっかり溜めるタイプらしく、大きな袋にパンパンになっているのを見て肩を落とす。

 

「ゴミってどこに捨てるんですか?」

「なんか一階にゴミ捨てるとこあるな」

「ついでに場所を教えてもらっていいですか?」

「あー、じゃあこれ食ったら行くか」

 

 お弁当を食べたらそのままゴミ袋に入れてゴミ捨て場を案内してもらうことに。

 エレベーターで一階に下りると、エントランスから出ると駐輪場の横に鉄の扉の部屋がある。

 少し重い、大きな扉の奥にゴミ捨て場があった。

 燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミ、の三つの鉄箱が並んでいる。

 分別したい人向けのプラスチック、ペットボトル、ペットボトルの蓋、発泡スチロール、新聞・紙・段ボール、という鉄箱もあるし、壁には『粗大ゴミの捨て方について』というポスターが貼ってあった。

 近所の区役所に粗大ゴミ用のシールを購入し、張って奥の置き場に置いてください、と書いてある。

 粗大ゴミまでここに捨てられるのは、シール購入は必要だが便利ではないだろうか?



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