表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

537/553

来年は最高学年


「というわけで期末テストの結果が配られたわけですが――」

「総合得点下がっちゃったなぁ」

「そのスケジュールで総合21点のみ下がったのなら上々ですよ、淳」

「ありがとうー。でももっと頑張らないとな〜」


 十二月三週目の月曜日。

 戻ってきたテストの点数で若干落ち込む淳。

 順位は変わらず学年三位。

 周は相変わらずの学年一位。

 そして下から数えた方が早い魁星と、鏡音と柳。


「先輩たちが受験勉強でほとんど練習に来れなくなっているので、冬の陣まであまり勉強の方に時間を割きたくないのですがね」

「じゃ、じゃあ別によくない!?」

「そ、そうですよ! 僕たち別に大学に行く予定ないですし!」

「じ、自分英語の成績は上がりました!」

「まあ、そうですね」


 とか言いつつ周の視線は冷たい。

 伝統ある東雲学院芸能科の星光騎士団メンバー半数が、こうも成績底辺揃いだと来年が心配なのだ。

 柳も鏡音も来年後輩が入ってくるというのに、こんな調子で大丈夫なのだろうか?

 まあ、事務的なものや技術的なもののほとんどはいつの間にやら周が教え込んでいたのだけれど。

 そのくらい教えてなお、勉強だけはイマイチなのがなんとも……。


「まあ、期末テストも無事に終わったし、あとは冬の陣に向けた練習に集中するだけだから」

「しかし淳はもう“二つ”、あるのでは?」

「うん、まあ……そう、なんだけどねー」

「プロデビューしたんですよね!」

「ううん、デビュー告知だけだよ。本当にデビューする日は大晦日」


 そのあと正式にデビューライブが美桜公園アルティメット劇場のAホールで行われる。

 配信はもちろん、年明けにはSBO内での単独ライブも予定があったり。

 なので、確かに半端なく忙しくなる。

 なによりデビュー前に『聖魔勇祭』で『トップ4』のライブもあるわけであり。


「どっちでもいいですよぉー! 淳先輩、プロデビュー、本当に本当におめでとうございますー!」

「ありがとう」

「ええ、本当におめでとうございます。三人組のグループなんですよね? 残りの二人は、一週間おきに情報公開される、ようですが」

「うん。そう」


 柳がものすごく興味津々な眼差しで「ネタバレってしていただいても……?」と聞いてくるのでにっこり笑い返す。


「するわけがないでしょう」

「ですよねええええー。なんかヒントでもいいですよ?」

「そうだなあ……まあ、ちょっと考えられないところから考えられない人が出てくるんじゃない?」

「余計気になる言い方ぁー!」


 でも実際、まさかコメプロのVtuber、『松竹梅春』が出てくるなんて誰も思うまい。

 そもそもVtuberが、プロのアイドルとしてデビューするなんて発想がないはずだ。

 なにしろそれ自体が前代未聞。

 淳も松田が発表された時の反応が今から楽しみでならない。

 ネットで検索すると、やはり様々な憶測が飛び交っている。

 その考察、憶測の中にVtuberの松竹梅春の名前は、ミジンも出ていない。

 こちらとしてはそれだけでによによしてしまう。

 ただ、一部にはさすがに『春日芸能事務所にいるアイドルといえば石動上総』『三人の中の一人は石動上総では?』『東雲から一人現役がデビューするってことは東雲の卒業生では?』という声がちらほら。

 石動はおそらく予想がなされると、予測されていたのでなにも問題はない。

 石動の前に松田が公表されて、『え? Vtuber!?』という混沌が見たいのだ。

 ちなみに松田もここ一年のボイトレとレッスンで相当の歌唱力、ダンス力、パフォーマンス力を手に入れている。

 3Dの新技術でそのパフォーマンスを見れば、Vtuberでも十分通用するだろう。

 実際、淳も「どうやってリアルの人間と3Dの人間が共演するんだろう?」と思っていたが、昨今の技術力は想像をなかなかに軽く超えてくる。

 あの人の――紫電株式会社の王苑寺柘榴という人が“異様”な気もするけれど。


「来年は魁星も事務所の方のレッスンが増えると思うし、周には特に苦労をかけてしまうと思うけれど……」

「その心配なら必要ありませんよ。鏡音くんと柳くんも成長しています。来年三人か四人、新入生が『地獄の洗礼』を抜けてきてくれれば人数に余裕ができます。まあ、歴代の星光騎士団は一軍二人、二軍二人、一人もザラだったようですから、そこまで新加入が多くなくとも問題はないでしょう。苳茉くんの加入も決まっていますしね」

「あー。まあ、そう、かー」


 先輩たちが卒業して、苳茉の所属グループは解散、消滅が決まっている。

 そこで淳と周が誘って苳茉は三年生から二軍――第二部隊への加入が決まっているのだ。

 新入生たちと同じ土俵スタートではあるものの、さすがに三年間培ったものがあるので来年の冬の陣では一軍上がりの予定である。

 魁星は微妙にそれが嫌そうではあるが、苳茉に同情の余地があるのも事実なので、文句は口にしていない。

 いや、思うところがあるのは当たり前だと思う。

 ただ、苳茉自身が母親と姉妹から離れて以降、本当に明るくなったのがすべての答えではなかろうか。


「今は冬の陣に集中しましょう。淳は『トップ4』とプログループの方にも時間を割かねばなりませんが」

「あ、あのー、周〜? お、俺もなんだけどー?」

「ああ、そうでしたね。忘れていました。魁星も頑張ってくださいね。今回の『トップ4』で、しっかり時間の使い方を覚えて役立ててください」

「ぐう……」


 ぐうの音も出ない、と思っていたらちゃんとぐうの音を出してきた魁星。

 周の正論が今日も鋭い。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ