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なんで?


「千景くーん! 二位おめでとう~~~!」

「ひゃあー! お、お、おおおおおお音無くん!」

 

 淳が来るのはそろそろ予期できそうなものなのに、淳が両手広げて入ってきた瞬間机の下に隠れる千景。

 逆に来るとわかっていたであろうB組の面々は半笑いで「また始まった」の空気。

 すぐさま駆けつけてくるのは日守風雅。

 もうすっかり千景の番犬である。

 

「先日のeスポーツ世界大会のエキシビションマッチすっごくかっこよかったですし一位おめでとうございます……!!」

「ありがとうございます。魔王軍の新曲も聞きました。千景くんが手がけたんですよね。サビでテンポが変わるの、難しくてかっこよかったです!」

「ああああああぁぁぁありがとうございますぅぅう……恐れ多い……ごめんな、あ、いえ、なんでもないです……すみませ……い、いえ、なんでもないです……! ひ、ひいいッ……!」

 

 ついに机の下で床に突っ伏して頭を抱えてしまう。

 175センチの長身美人系イケメンの勇士隊君主の姿だと思うとなんとも言えない。

 謝りかけたが、謝ったら淳に褒め殺しされるので謝るのは自殺行為、とこの二年で学んだ千景。

 

「あ、千景くんにも用事があるんですけど、新座くん」

「あ、ああ!」

「四位おめでとう! で、突然で申し訳ないのだけれど、年末の『聖魔勇祭』でコラボユニットに出てもらうことになるので、そのお話をしたいのだけれど今から場所をスタジオに移して諸々を決めるのだけれどついてきてもらってもいいかな?」

「も、もちろん!」

 

 非常に固い表情。

 本人もまさか『トップ4』に入ると思っていなかったのだろう。

 上半期の新座の順位は三十位以下。

 それが夏の陣でここまで飛び上がったのだから、本人が一番驚いている。

 スタジオに移動してから、四人でその話題が出ると淳と千景が「いや、夏の陣に出たからそのくらいの威力はあるよ」と言い放つ。

 新座は夏の陣の宣伝力を舐めすぎだ。

 

「でも俺はなんでだろう? 夏の陣に出たのは去年も同じなのだけれど、あそこから一位はさすがに無理だと思うのだけれど」

 

 と、淳も首を傾げる。

 そもそも新座と淳では夏の陣に出演したからといって、ここまでの効果が出る条件が違う。

 淳の場合は一年生の頃からグッズがある程度売れており、すでに“行き渡っている”。

 だから上半期は『トップ4』から落ちたのだ。

 新たにグッズを購入してくれた新規が、それほど増えたとは思えない。

 

「え? ご、ご存じでないのですか……?」

「え? なにが?」

「BLドラマのファンの方々や、eスポーツ世界大会のエキシビションマッチからグッズ購入報告がはやって、ました、よ?」

「え? なにそれ?」

「あ、も、もしかして、音無くんは、そのー……あ、あんまり、エゴサ、なさらない?」

「する時間がないかなぁ」

 

 ああ、と納得したような、引いたような表情をされてしまう。

 申し訳ないが実際エゴサしている時間があったら期末テストの勉強をしたい。

 あまり自分の評価に興味がないので。

 

「特にエキシビションマッチ後はすごかったらしいですよ。中国のソン・ジェンさんという歌手の方が、雑談配信で『優しくてずっとかっこよかった』と語りまくり、リアルタイムで東雲学院芸能科のホームページからグッズを通販していたので彼女のファンも一緒に買ってました。わかります、音無くんが優しくてかっこいいの! 遅刻したのに責めるどころか来てくれてありがとうっていう空気にしてくれたり、女性が一人しかいない状態で居心地が悪かったところをものすごくさりげなくゲームの話題を振って気を紛らわせもう出来上がっていた男性ばかりの輪の中に迎え入れてくれたり、砂利道でさりげなく手で支えてあげたり、バイソン選手が近くに来た時のあの圧迫感からこれまたさりげなく間に入って微笑んで話しかけてくれたり、武器の違いがわからない時もどこがどう違っていて今回の役目的には事らがいいと思いますよ~って助言してくれたり、あんなのファンになってしまいます!」

「そんなことしたっけ……?」

 

 まったく覚えがない。

 むしろ結構ひどいことをしたので、そこで好感度調整が上手くいったと思ったのだが。

 

「トドメはあのバフの多重がけによる一人勝ち。ソン・ジェンさんはあれに一番痺れた、とおっしゃっていましたよ」

「そういう人だったんだぁ……」

 

 あんまり知りたくなかった、その事実。

 そしてそれをなんでうっとりと語れるのだろうか、このドルオタは。

 でも淳も、もしあれが神野栄治なら同じ状態になっていた自信がある。

 そうか、なら、ソンジェンは、ガチか。

 

「でも海外の歌手さんがグッズを買ってくれただけでこんなことになる?」

「あと、ご一緒にエキシビションマッチをしておられたバイソン選手が、鏡音くんに東雲学院芸能科のホームページに、音無くんのグッズがあると聞いて配信中に買ってました、よ」

「嘘!? 俺それも知らない!?」

 

 eスポーツ世界大会、一つのチャンネルで競技ごとに配信が行われており淳は鏡音の出ている競技くらいしか見ていなかった。

 主に智子が見せてくれたところ。

 千景が見たその現場はバイソンの得意なMOBAマルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ競技中。

 ちょうど控室に戻るところだった鏡音と晶穂に声をかけ、なにやら話をしているところをインタビューされてバイソンが淳の話をして『エキシビションマッチ面白かったからお前ら、見てみろ! ジュンはスゲーシンガーだ!』という発言にプラス、鏡音の「東雲学院芸能科のホームページにて星光騎士団のグッズ発売中です」という宣伝が盛大に効果を発揮した――という流れのようだ。



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