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二年生の今年の『トップ4』


 十月の定期ライブが終わった翌日の十一月一日。

 この日はついに“例の発表”がある。

 クラス……いや、学院中がそわそわとした空気を醸し出す。

 今日の十二時には公式ホームページが更新される。

 チク、タク、チク、タク……時計の音に全員がスマホを出したりしまったり。

 

「きた! 更新された!」

 

 教室の中が一気に緊張する。

 淳も慌ててブラウザ更新を押す。

『東雲学院芸能科下半期校内売上ランキング』――今年の聖魔勇祭のトップ4が確定する。

 

「一位、音無淳! ジュンジューーーン!」

「うわあ! 危ないよ、魁星」

 

 真横から飛びつかれて椅子から落ちそうになる。

 腹筋鍛えてなかったら倒れてた。

 

「おめでとうジュンジュン! 一気に一位に返り咲きじゃーん!」

「本当だ〜。二位は千景くんか……」

 

 スッ、と立ち上がる。

 おめでとう、と駆け寄ってきたクラスメイトたちのほとんどが「あ、こいつB組に行って御上をからかいに……いや、祝福しに行く気だ」と察した。

 

「魁星、下がってしまいましたね?」

「すみません」

「ううん。頑張ったもんね。……というか、俺よく一位になったなぁ?」

 

 どうしてだ、と首を傾げつつ改めてスマホを覗き込む。

 一位、音無淳。二位、御上千景。三位、花房魁星。四位、新座優星。

 

「新座くんが入ったんだ」

「夏の陣出場がでかかったんだろうな〜。上位は固いメンツだけど」

「楽しみだな〜、今年はこの四人なんだ。……今からスケジュールにねじ込むのか……」

「が、がんば……え? イケる?」

「も、もちろん……」

 

 あんまり大丈夫そうな顔色ではない。

 その顔を見てクラスメイトたちが全員心配そう。

 

「本当に大丈夫なんですか? 事務所の方が忙しいと聞いていますけれど……」

「うんまあ……。そのー……事務所の方からの仕事が今までやったことのないものが多くて、レッスンを結構予約してて……。だからレッスンキャンセルすれば時間は作れるし……うん。仕事は、どうしようもないけれど……今はそれよりも期末が怖い」

「なんで今それを言うのおおおお」

 

 崩れ落ちる魁星。

 にこり、と逆隣の周が「大丈夫です。ノートをまとめておきますから」と言ってくれる。

 周のノートとか無償でいいのか?

 

「新座くんもB組だし、俺が予定立てないと」

「魁星、今回の二年生『トップ4』、あなたがスケジュール管理しなさい。苦手とかなんとか言って自分でやってこなかったでしょう? 淳は忙しいですし御上くんは楽曲準備をしてくれました。新座くんは初めてなのですから、経験者のあなたがちゃんとエスコートしてあげなければいけないでしょう! あなた来年最高学年の自覚はないんですか? 後輩にさらに後輩ができるんですよ!?」

「え、あ、え、うつ……で、でも俺馬鹿だしぃ……」

「でもスケジュール管理は今もやってるでしょう? 事務所のほうでもグループの管理とか任されるようになると思うし、今から練習だと思ってできるようになっておいた方がいいんじゃない?」

「ジュンジュン味方じゃないの……!?」

「普通に周に賛成だし魁星がやってくれたら俺も楽だし」

 

 素直にぶっちゃけると魁星が絶望に打ちひしがれたような表情。

 魁星の事務所グループの予定メンバー、もうほぼ確定気味だと聞いている。

 あの二人をまとめるのなら、スケジュール管理くらいは覚えていた方がいいと思う。

 単純に淳が神野栄治の『できないことは少ない方がいいし、やれることが多い方がいいんじゃない?』思想なのもあるけれど。

 

「淳もある程度は魁星と新座くんにやらせてくださいね。二人とも今後は教える側になるのです。彼らが恥をかかないためにも、やり方を教えられるようにしておかないといけません」

「確かに……。『花鳥風月』は夏の陣に出たから、来年は加入が多いかもしれないものね。スタジオのレンタルのやり方やスケジュール管理やイベント会社の人とのやり取り、振付師との連絡、もう教わっているかもしれないけれど魁星と二人でやってもらった方がいいか」

「リーダーってそんなにやることあるんだ」

「そうだぞ」

 

 夏の陣が終わって三年生がリーダーを務めていたグループはほとんどリーダー引継ぎが終わっている。

 それに伴い、リーダーの多忙さにはみんな驚いたことだろう。

 淳だって宇月に去年から色々教わっていたにも関わらず「やることが……やることが多い……!」となっている。

 周に任せられるところを任せ、周は柳と鏡音に任せられるところを任せて仕事を教えているくらい。

 俺馬鹿だから、で逃げていた魁星に、周も一人暮らししながら仕事は大変だからと見逃していたのだが、さすがに今回は見逃せなかった。

 

「じゃあ、そのあたりの話もしにちょっとB組行ってくるね」

「一緒に行きましょうか?」

「うん、そうだね。俺が千景くんが可愛くて暴走したら周が止めてもらえる?」

「暴走しないように自意識をしっかり持ってもらってもいいですか?」

 

 ド正論。



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