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社長に報告


「むしろ、SBOがどういうゲームなのかを簡潔にわかりやすく、丁寧に伝えてくださったと思います。ソンジェンさんもそうおっしゃっていましたし、SBOというゲームを知らない方にもそれは伝わったのではないでしょうか?」

「本当ですか? それならよかったです」

『うん! オトナシさんの説明わかりやすかったです!』

『事前情報、まったくなかったからね!』

『むしろあそこまで詳しく説明してもらったのにゲームシステムを理解しきれなかったのはプロとしてちょっと情けない。本当にちゃんと全部説明してくれていたのに』

『うんうん』

 

 解説の必死のフォローに、便乗してくる中韓選手二人とソンジェン。

 大半の人は翻訳が間に合わず頭にはてなを浮かべているけれど。

 そう、淳は本当にSBOの重要なシステムを全部説明している。

 それを理解しきれず活かしきれなかったのは初見プレイでは仕方ない。

 全員、情報は十分だった。

 活かしきれなかったのが、まさに敗因。

 それをこの場で関係者が認め、客席でも納得の表情が見えるので十分だろう。

 

(まあ、このへんでいいか)

 

 満足したので「SBO、面白いゲームですし定期的にファーストソングのステージで無料でライブもできますので、音楽をやっていらっしゃる方には特におすすめです。人前で歌を歌うのが苦手なプレイヤーさんも多いので、人気者になれると思いますよ!」と宣伝をして、シメ。

 変な汗を流しながら「ありがとうございました~」で司会が去っていく。

 クックッ、とひっそり肩を揺らして笑う晶穂。

 

「あとでアーカイブ見ておかないと怖いですね」

「まあ、でもまずは格ゲーのやつらがどうなっているのか確認したいな」

「あ、俺も気になります」

「一緒に見るか? 礼もしたいし、アンタに見られているとわかれば鏡音も気合入るだろうし」

「鏡音くんの試合も見たいんですけれど、一度事務所の社長に報告に行きたいんですよね。今回のエキシビションマッチ、事務所経由の依頼ということにしてもらったので」

「そうだったのか。事務所っていうのは芸能事務所ってやつか?」

「はい。学院側の仕事は昨日の前夜祭で終わっていて、今日残って開会式を見るのはプライベートだったものですから少々無理を言いました」

 

 今回の大会に春日社長がスポンサーでなければ捻じ込めなかった。

 お礼と結果報告は必要だろう。

 

「じゃあ、そのあととか。今日でなくてもいい。連絡先を交換しておきたい」

「わかりました。俺も晶穂さんにはお礼をしたいので」

 

 ということで解散となってからバイソン、晶穂と連絡先を交換。

 プロのゲーマーと知り合いが増えたのは普通に嬉しい。

 控室に戻ってから社長に電話すると、関係者席の方にいるのでおいで、とのこと。

 関係者席は三階からさらに階段を上って別な廊下に出る。

 ここに来ると、がらりと歩いている人の格好が変わる。

 スーツの人が増え、穏やかに談笑している人が増えた。

 

「ええと……確か第七観戦室だっけ?」

 

 探している最中、スマホにメッセージ。

 一度立ち止まって見てみると朝科から『エキシビションマッチ見たよ。魔王って呼ばれてて、お揃いだね』というものと石動から『魔王w』といういかにも煽りっぽいもの。

 

(あ、魔王って呼ばれてたんだ……)

 

 アーカイブを見ていないのでなんとも言えない。

 だが、この二人は見ていてくれたんだな、と思い『配信観てくれたんですね。ありがとうございます』とだけ返事を返した。

 ドアの横に番号が書いてあり、ノックしてみると社長の声で『どうぞ』と返事がする。

 中に入ると赤い絨毯が敷き詰められたふかふかの床。

 皮張りの黒いソファー、ホテルのようなシャンデリア、絵画や壺などの装飾品。

 一瞬眩しくて目を細めてしまった。

 

「お疲れ様です、魔王騎士さん」

「ま……魔王って呼ばれてたんですか。配信のアーカイブまだ見てないんですよ」

「そうなのですね。面白かったですよ、なかなか。あの解説がすっごく頑張っていたので。アーカイブ、楽しみにしてください」

「あはは……」

 

 司会は? と、思わないでもないがあの解説は結構まともそうだった。

 しかしリアルタイムで見ていてくれたのなら特に報告することもないだろうか。

 

「社長が楽しんでくださったならなによりです。俺もプロのゲーマーさんと連絡先を交換できて、よい出会いに恵まれたと思います」

「それはいいことですね。いい出会いは人生を豊かにしますから。まあ、清廉潔白なイメージが完全に魔王になったのは笑ってしまいましたけれど」

「……個人的にとても解せないのですが……。もしかしてイメージの崩れ、よくなかったですか?」

「いいえ? まったく?」

 

 クスクス笑いながら大型モニターの横にあるデスクに移動し、ノートパソコンを開く。

 淳のイメージのズレ、社長的にはなにも問題はないらしい。

 むしろ、こんなに早くそういうイメージがついたのは僥倖とまで言う。

 

「ええ? 元からつけるつもりだったってことですか?」

「王道の爽やか王子様系はもう珀がいるので」

 

 なるほど?

 

「それにFrenzy(フレンジー)のイメージ的に、綺麗な王子様より紳士的な王子様の皮を被った魔王の方が趣がありますしね」

「お、趣……?」

「SBOの中なら君のそういう部分が存分に出せると思っていたのですが、想像以上ですね」

「ええ……?」

 

 まさか。

 淳が社長を凝視すると「あ、SBOのエキシビションマッチを言い出したのは僕ではないですよ。本当に便乗しただけなので」らしい。

 

「ピンチをチャンスに。上手にできましたね、淳」

「ア……ハイ」

 

 お気に召したようならなによりです。



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― 新着の感想 ―
推しが推しだから、淳は元から好戦的なところがあったとはいえ、1年生の時は誰か先輩を演じてないとそういう所を表に出なかったのにな…… まあ、2年も宇月先輩といれば、こうなるか。 しっかり、星光騎士団に染…
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