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勝利者インタビュー


「どうでしたか? ソンさんはVRゲーム自体が初めてとのことでしたが、楽しめましたか?」

 

 司会がマイクを向けたのはモニターだ。

 ソンジェンは中国からのログイン。

 彼女は会場にいないので、中継でのインタビュー。

 

『とっても楽しかったです。負けてしまったのは悔しかったですが、オトナシさん、本当に丁寧にたくさん、私がパンクしないように順序立てて教えてくださいました。とても感謝しています。でも、負けっぱなしは悔しいので、中国でもサービスが開始したらSBO、絶対やります! 私の歌、オトナシさんみたいに強くなれるってことですもんね! 私、最強になれるってわかったので、最強になりますよ!』

 

 胸を張ってドヤ顔のソンさん。

 客席から『可愛いー!』『ソンジェン最強可愛い!』『いいぞー!』と歓声が飛ぶ。

 そりゃあ可愛い歌手がそんなこと言ったら可愛いに決まっているし、淳の重ねがけバフの威力を見たらソンジェンが最強可愛いになるのは目に見えている。

 約束された最強可愛いだ。

 

「では次に、勝利チームにインタビューしてみましょう! まずは晶穂選手、いかがでしたか? まさかの一番最初に脱落ということでしたが……」

「ああ、それは作戦通りなんです。ベイト役に一番経験があるのは俺でしたし、音無とは今日が初対面だったがうちの次期エースの鏡音が『強い』と認める男だ。雑魚魔物と戦った時もいいエイムしていたし、任せていいと思ったから任せた。なにより、この中で一番SBOというゲームに理解が深く経験豊富なのか彼だからな。同じくSBOプレイ経験のある鏡音と、エイランの推薦だから信じられた」

 

 目が丸くなってしまった。

 プロゲーマーの中でも、相当に経験もあり有名な人に初対面でここまで言ってもらえるなんて。

 

「ありがとうございます。では次に今回の作戦を考えたバイソン選手。いかがでしたか?」

『サイコーにクールなゲームだった! アメリカでサービスが始まったら絶対に配信でプレイする! だから俺にバフをかけてくれる歌が上手い女の子! 俺と遊んでくれよ! ああ、ジュン! お前でもいいぞ! 来年SBOがアメリカで発売されたら一緒に遊ぼう!』

『喜んで』

 

 淳が先んじてマイクを受け取った瞬間に話を振られたので、咄嗟に笑顔で答えると英語で答えたのに驚いたのか視界が口を開けたまま固まる。

 というか作戦に関して聞かれているのにノータッチ。

 ゲームの宣伝を優先してしまっている。

 

『ああ、作戦についてだったな。ジュンに色々聞きながら三人で考えたんだ。ジュン、あとで連絡先交換しよう! 俺がやっているゲームも遊んでくれ! お前ならすぐ上位ランカーになれるぞ!』

『本当ですか? バイソンさんに教えてもらえるならぜひ!』

 

 基本的にゲームは大好きだ。

 問題はスケジュールだが、せっかくのご縁を終わらせたくない。

 というか、いよいよ個人チャンネル解説も考えた方がいいかもしれないと思い始めた。

 スケージュール的に動画配信などの個人活動は難しいので、そういうのはFrenzy(フレンジー)の公式チャンネルが開設してからでもいいかな、と思っていたのだが。

 いや、頻度は少なくとも個人チャンネルは作ってくださいね、とは言われていた。

 しかし宣伝用のSNSアカウントだけでいいかも、と軽く考えていたのだ。

 

(作るかぁ、動画サイトにもアカウント……)

 

 幸い星光騎士団の活動で動画制作の知識も経験もある。

 作れとも言われていたので、頻度はともかく作るだけ作ってもいいだろう。

 

「それでは最後、音無淳さん! 今回は唯一の経験者で、日本代表チームから指名されての参加とのことでしたがどうでしたか? 周りはプロゲーマーばかりでしたが……」

 

 というおずおずとした聞き方に察した。

 そうだろう、ここは国際大会。

 エキシビションマッチとはいえ、中韓選手を容赦なくフルボッコにしてしまった。

 エギュンもエンロイもスポーツマンなので先ほどのインタビューも爽やかな返答だが、彼らの母国は結構ネットが炎上しやすい。

 まあ、ソンジェンのおかげでかなりカバーはできそうなものだがそれも限度がある。

 そのあたりに対する配慮が求められているのだ。

 大変な業界だな、とこの世界で日々そういうものに晒されている彼らに感心してしまう。

 

「そうですね。なので全力を尽くさせていただきました。しかし、SBOのゲーム性をお伝えするのにかなりお時間もいただいてしまい、進行に影響を出してしまったかもしれずそこは配慮が足りず申し訳ありませんでした。ゲーム内では会場や配信先の様子がわからなかったので、もしかしたら退屈に思われてしまったのがずっと気がかりだったのですが……」

「ヒュッ」

 

 司会のお姉さんにはなにも恨みはないのだが、そっちがそのように配慮を求めるのならこちらも最大限に配慮させていただこうと思う。

 申し訳なさそうな顔で胸に手を当ててそう言うと、解説の人が慌てたようにマイクを握って「とんでもない! こちらもゲーム性の解説を大変参考にさせていただきました!」というフォローが入る。

 まあ、そうだろう。

 そもそも今回のエキシビションマッチは不備が多すぎる。

 急遽決まったのだから仕方ないことだし、参加してくれた選手たちも歌手のソンジェンも無償のボランティア。

 自分たちの競技が今日じゃないからと好意で参加してくれたのであって、そこからさらに配慮しろ、は求めすぎである。

 なんなら解説の人も恐らくSBOのプレイ経験者ではない。

 だから淳がゲーム性やシステムの解説をやっている時にも、マッチ開始を急かされたりしなかったのだろう。解説なのに。



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