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いったんログアウト


「俺の出番はなしかー。まあ、まさかここまでバフの重ねがけができるとは思わなかった。晶穂とアンタのことを信じて正解だったな」

「俺を主軸に作戦を考えてくださってありがとうございました。まさかプロの方にここまで信頼して任せていただけるとは思いませんでした」

「いやいや。既プレイヤーは絶対なんか隠してるって思ってたからなぁ。ここまでとは思わなかったけど……」


 作戦を考えたのはバイソン。

 晶穂は最初からベイト役。

 移動中、[魔寄せ]と[鈍足耐性][凍え耐性]を使いながら撹乱しつつ、自分自身へ[防御力上昇]と[HP増加]バフをかけ続けていたのは淳提案、晶穂指示でバイソンが立てた作戦の一部。

『ホーム』として定めたこの滝壺を、彼らの墓場にするようにとデンキウナギを[魔寄せ]スキルで誘き寄せるつつ誘導し、接敵してからもここへ移動するようにした。

 配信を見ていた者たちもそれを一部始終見ていたはずだ。

 もちろんそれにしたってオーバーキルだろうと言われるレベルのフルボッコではあるが、晶穂が最初にキルされるのは危険な役目を受けてくれた時から想定していたこと。

 中心戦力の晶穂が抜けたあと、それほど戦闘の得意でないバイソンとプロゲーマーではない素人の淳が一国の代表選手に勝つには加減なんてしてられない。


「普通に戦っても勝てたかもしれんな〜」

「いやぁ、相手はプロでしたからね。しかも、やはりエギュン選手という主戦力を温存していた。念には念を入れておいて正解だったと思いますよ」

「だよなぁ! TPSゲームの世界ランキング一位経験者相手だもんなぁ!? 俺ら、そんな輝かしい戦歴ないもんなぁ!?」

「そうですよ。俺だってPvP初めてですし」

「そ、それは嘘だと言ってくれよ……?」

「本当ですけど? 初心者狩りに襲われたことはありますけれど、PvPは初めてです」


 なんでそんなこと言うんですか、と言っていると、配信モニターが淳たちの方に近づいてきた。

 視線をモニターの方へ向けると『お、お疲れ様でしたー!』と司会の声が聞こえる。


『見事な作戦勝ちでした! それでは、勝利したチームのお二人にもそろそろスタジオの方に戻ってきてくださいー』

「了解しました。一度ファーストソングに戻りましょうか。ここでログアウトできないので」

「あ、そうなのか? どうやって戻るんだ?」

「マップを開いていただけると、一度行ったことのある場所が表示されるので、そこから――」


 と、説明して、二人でファーストソングに戻る。

 リスポーン地は転移石の前のままで、ログアウト。

 ワア、と思いの他大きな歓声が待っていた。

 てっきりドン引きされるかと思っていたが、意外にそんなこともないらしい。


「おう、お疲れ。作戦通りだったな」

「over kill ジャ、ナカッタカ?」

「OKOK。そんなことねーよ」


 よいしょ、と起き上がると、別のチェイス型VR機から筋骨隆々の男が出てきた。

 晶穂にかなりガタガタのカタコトで話しかけると、晶穂は彼の背中をどんどんとなかなかに強い力で叩く。

 そういえば、リアルでは初めましてだ。


『お疲れ様です、バイソンさん』

『おおん!? オトナシ、お前英語喋れるのか!?』

『少しだけ』


 淳もチェイス型VR機から立ち上がって手を差し出すと、握手じゃなくタッチをされた。

 大層嬉しそうで、しかも淳が英語を話すとテンションがわかりやすく上がったようだ。


「お前さん、英語も達者なのか」

「少しだけですよ。歌詞に英語が入っていることが多いので」

「なるほどなぁ。アイドルってのはなかなかに多芸でないとダメなんだな。そういえば最近鏡音も英語が少し話せるようになってて、チーム内でざわついてたっけ」

「鏡音くんは学力向上委員会対象生徒ですからねぇ。身に成っているのでしたらなによりです」


 にこり、と答える。

 若干の怯えた顔で「が、学力……なんて?」と聞き返されるが鏡音が勉強の成果を出しているのなら学力向上委員会をやった甲斐があるというもの。

 鏡音も成果が目に見えればやる気も出るだろう。

 今後とも頑張って勉強していただきたい。


「それでは、インタビューしていきたいと思います! まずは中国代表、エンロイ選手! いかがでしたか?」

『いやー、僕は弱いから、ベイトを請け負ったんです。晶穂さんを倒せた時は役目を果たせたと思って喜んでいたんですが、バイソン選手の方が一枚上手でしたねー。完全に作戦負け。そして、ゲーム性の理解不足でした』


 中国語で答えるエンロイ。

 司会、うんうん、と頷いているが後ろの通訳さんがすぐに翻訳してくれているので多分司会本人はよくわかっていなさそう。


「次に韓国代表エギュン選手。いかがでしたか? 最後はかなり混乱していたようですが」

『そうなんです! 完全に作戦負け! そして我々、オトナシくんの話、ちゃんと聞いていたつもりで聞けていなかった! 目先の武器のことやダンジョンのことでいっぱいになってしまった! 思考をそちらに誘導されていたのならもうそれは完全にオトナシくんの勝ち! 彼はすごいね、プロゲーマーに勝つにはどうすべきなのかちゃんと考えていた。バイソンの作戦も見事。晶穂さんは自分を囮に使ってて、まさに予想外! 完敗! 強かった! 畑違いのゲームとか言い訳たくさん思いつくけれど、それを差し引いたって彼らが見事!』

「なるほど!」

 

 こちらも多分あまりよくわかっていない。

 まあ、とりあえず大絶賛してくれたのは純粋にありがたい。

 が、彼らの場合国にめちゃくちゃ怒られそうである。

 大丈夫かなぁ、と心配そうにしていると、最後にソンさんへとマイクが向けられた。



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