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結構脳筋な作戦


「お、お前さん、普通にプレイヤースキル、高くねぇ?」

「単身レベリングもしていましたから? まあでも、あまりログインできなかったので、鏡音くんに聞いた『効率のいいレベリング方法』を聞いて実戦はしましたけれど」

「鏡音か。アイツも結構無茶なレベリングやるからな……」

「さて、接敵する前にプレイヤースキルツリーでHPに振ってください。歌バフである程度ダンジョンのデバフは耐性をつけられますが、HPがあればあるほどここでは有利です」

「ああ、そうだな。防御力……攻撃力もあるが――」

「HP全ぶっぱあああぁぁあ!」

「うるさ」

 

 バイソンは淳の助言通りHPに全スキルポイントを投入。

 晶穂は攻撃、防御にも少し振ったらしい。

 

「しかし結構レベル上がったな? レベル10か。このままサーモンを4、5匹倒したらレベル25も難しくないんじゃないか?」

「その前に接敵すると思います。エギュン選手はエイムがいいですよね。さっきサーモンを倒す時に晶穂さんの銃声で大まかな位置はバレていると思うので、滝壺の近くに隠れて迎撃するのがいいと思うのですがいかがでしょう?」

 

 淳がバイソンに振ると、コクリと頷かれる。

 おおむね同意見、とのこと。

 

「しかし、滝壺付近ていうのはどうしてだ?」

「相手チームが対策をしっかりしていたとしても、基本的に上から敵を探すのが定石だと思います。が、この龍水龍牙の滝りゅうすいりょうがのたきは滝壺付近の方が圧倒的に隠れる場所が多いです。むしろ、見上げてみればわかると思いますが、滝上の方が目立つんですよね、下から見上げて」

 

 指さすと、二人も滝の上の方を見上げる。

 滝の上は飛沫が見えるものの、天気もいいのでよく見えた。

 対して滝壺の付近は無数の滝が落ちる時の飛沫でほぼ霧。

 茂みも岩も多いので、隠れる場所には困らない。

 なんなら茂みなどに隠れれば、魔物とも遭遇しづらくなる。

 

「両チームともにタイプの似た戦略を立てることになると思います。ので、俺としては既プレイの経験を活かして対戦するのがいいと思うんですが」

「まあ、道理だな。敵の位置を把握するか、おびき寄せて罠に嵌めるか。この地形とダンジョンの特性を考えればおびき寄せて罠に嵌めるのが楽。そしてそれは、向こうも同じ。まず虚を突くために、上からの利点を捨てて待ちに特化した場所を確保するってことか」

「いいねぇ、テリトリーを定めて誘い込んで一気に、ってやつか。得意だぜぇ、そういうの!」

 

 バイソンの表情が一段と楽しそうになる。

 ああ、悪い顔になって。

 しかしそういう戦略はエンロイも得意だろう。

 

「じゃあ、まずは場所の確保だな。どっか見通しのいい場所はあるか?」

「それならおすすめの場所がありますね。個人的に面白い“ギミック”がある場所なんですが……」

「そういえばこのダンジョンはギミックが多いと言っていたな」

「はい。面白いですよ」

 

 悪戯っ子のような顔で、中心部近くに案内する。

 そこで色々と準備。

 とっくに接敵解禁時間は過ぎているが、先方もこちらを探している感じがしない。

 ある程度準備が整ってから、三人で『ホーム』に定めたところから移動。

 相手も同じ作戦――罠を仕掛けた拠点に敵をおびき寄せようと思っているはず。

 

「~~~♪」

 

 三人分の[鈍足耐性][凍え耐性]を再付与。

 杖をしまって、弓矢に装備変更。

 

「おっし、準備万端だぜ!」

「それでは始めましょう」

「ああ! 始めてくれ」

 

 バイソンと晶穂にGOを言い渡されたので弓を引く。

 なんだか、初めて弓矢を選択して遊び始めた頃のことを思い出した。

 憧れの人と一緒に冒険に出かけることができた、奇跡。

 SBOは本当に、そういう思い出がたくさん詰まっている。

 だからプロの人たちにも、エキシビションマッチを見ている人たちもどうか楽しんでみてほしい。

 

「~~~~♪ ~~~~~♪」

 

 空へ向かって弓矢を放つ。

 相手をおびき出すのが目的の一矢。

 この矢に付与されたのは[魔寄せ]の効果。

 それをいくつも、自分らの『ホーム』の近く以外の滝上部に撃ちまくる。

 

「よし、狩るぞ!」

「「了解」」

 

 バイソンとともに、周辺に集まってきたサーモンたちをプレイヤースキルのみで倒していく。

 レベルが上がったら交代でプレイヤースキルツリーを解放していってもらう。

 あっという間にレベル26。

 

「いたぞ」

「うわっ!」


 晶穂が淳の首根っこを掴んで引っ張る。

 淳が立っていた場所に銃痕が刻まれ、撃たれたのだとわかった。

 すぐさま撃たれた方向に向かって晶穂が銃を撃つ。

 

「掠ったな。だが、仕留めきれていない」

「そんなことわかるんですか」

「着弾した時の音でな。滝の音でかなり……だが。行くぞ、バイソン!」

「おう! 指示よろしくな、マロ!」

「こっちだ!」

 

 作戦通り淳が再び[魔寄せ]のデバフの歌を歌い弓矢で撃つ。

 そこへドーンという大きな音。

 サーモンが一気にその付近へ集まった。

 

「向こうさんもレベリング楽しんでる頃かねぇ?」

「SBOは魔物と戦うのが醍醐味の一つなので、楽しんでいただけているといいのですが」

「もう一丁やってやんな」

「はーい」

 

 二本目の[魔寄せの矢]を放つ。

 歌バフで敵に対するデバフとして、武器に付与して使用する。

 剣や弓でも同じ効果が出るものではあるが、これは完全なる嫌がらせ。

 今頃配信をモニタリングしている人々はツッコミの嵐だろうなぁ、と思いながら、もう一度[魔寄せの矢]三本目を叩き込む。

 

「よっし、武器スキルツリーと防具スキルツリーもフル開放だぜ!」

「ああ、俺もだ」

「了解です。俺も新しいスキルを使わせてもらいますね」



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