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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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エキシビションマッチの選手たち


「自己紹介! そうだね! 僕は韓国の代表の一人、エ・ギュンというよ。よろしくね! 普段はTPSをやっているよ!」


 TPS――|Third Person Shooterサードパーソン・シューター

 三人称シューティングゲームの総称である。

 イカ塗りゲームなどが有名。

 今大会も、イカ塗りゲームが競技種目となっており、明日行われる予定である。

 VRになってからは難易度が爆上がりしたジャンル。

 神視点からプレイする、正直やってるやつは格ゲープレイヤー並みに頭の構造どうなってる? と心配されるジャンル。


「ボクはエン・ロイ。中国代表。DCGやってる。中国で一番強いよ」


 DCG――デジタルカードゲームのことである。

 日本発祥と言っても差し支えのないアレとかそれとかが大会競技種目となっている。

 VRゲームになってからはある意味、もっとも競技人口が多いと言っても過言ではない。

 だって、いっちゃんカッコいいのだから。

 カードが目の前に3Dで現れ、戦い、寄り添ってくれるのだ。

 もう夢の具現化と言っても過言ではない。最高。

 こちらも明日の競技種目。


「さっき会ったが、バイソンだ! MOBAをやってる! 生まれも育ちもアメリカだ!」


 MOBA――マルチプレイオンラインバトルアリーナ。

 チームで敵陣を破壊するゲーム。

 戦略が重要となり、かなりの頭脳戦を求められる。

 VRゲームになってからは陣頭指揮をプレイヤーが執ることも求められ、昨今はどんどん難易度が上がっていく。


「音無淳と申します。一応学生です。星光騎士団というアイドルをやっております」

「見てた、見てた! 昨日、パフォーマンスしてたアイドル! 君がいて驚いた!」

「見てくださったんですか? ありがとうございます」

「君歌本当に綺麗な声だった。学生? 本当に? それが一番びっくり!」


 スーー、と運営のカメラが五人の横に現れる。

 配信中継が始まった、ということだ。

 一瞬無言。

 その後、滝のような汗が流れ始めるバディのいない三人。


「さすがにドタキャンは……」

「き、きっとVR機に手間取っている、のだと……」

「そ、そうそう」

((可哀想に……))


 口には出さないが、三人とも不安そうで仕方ない。

 バディが来ないと、この場を移動できないので、今はひたすらメンバーが揃うのを待つ。

 その間に、と淳がいつもの“のばし”で鍛えたトーク力を発揮させていただくことにした。


「では、バディの方が来るまでSBOのシステムについてある程度ご説明してもよろしいですか? 一部は先程キャラクター作成をした時に、バイソンさんにもご説明した内容と被るのですが」

「おお! いいのか!?」

「ぜひ聞きたい。あなたはこのゲームをやったことがあるの?」

「はい。実はSBOがリリースされた頃からプレイしているんです。今回はエキシビションマッチ用に新しく作成したアバターですが、本アバターはレベル86なんですよ」

「やり込んでる!」


 えへへ、と笑いながらも『まあエイランさんと鏡音くんにはレベルあっさり追い抜かされてるんだけど』と、内心で突っ込む。

 プロゲーマーの恐ろしいところである。

 

「基本的にSBOはその名前の通り歌で複数のバフをかけることができるゲームです。プレイヤーは最初の職業で得た武具を、ダンジョンやフィールドで魔物と戦いレベルを上げたりスキルポイントを得たりしてスキルツリーを解放して育てていきます。スキルツリーがすべて解放された武具はNPC武具屋でワンランク上位の武具と交換してもらえます。そうして、武具を強くしながら進んでいくんです。ここまでは大丈夫でしょうか?」

「「「オッケィ」」」

「歌バフですが、武具を育てることで新たな種類が解放されます。武具のスキルツリーは歌バフの種類の他に『武器スキル』の解放もできます。武器スキルは一度覚えれば、同系統の武器であればそのスキルを使うことが可能です。次に必殺技(ウルト)ですが、上位武具と交換していくことで定期的に覚えることができます。なので、今回のエキシビションマッチは難しいかと」


 そう言うと全員が渋い表情。

 わかる。

 ゲーマーなら使いたいよね、必殺技(ウルト)

 派手だし。


「しかし、それだと歌歌う人もたくさんバフ種類使えない?」

「いいえ、それがそうでもないのがこのゲームの面白いところなんです。歌バフは“プレイヤーが歌った歌”をゲームシステムが自動で採点・分析することで該当のバフがかかるようになっています。歌を歌う人の歌唱力によっては歌バフのレベル……強さや長さ、効果に大きく影響するんですよ。自分が覚えていない歌でもアカペラで歌えば効果はちゃんと発動しますのでご安心ください」

「おお……!」

「それは我が国の歌でも大丈夫?」

「はい。歌であればいいのです。複数の歌を連続で歌えば、その効果が上乗せされてバフがどんどん重なっていきます。ご自身で歌っても歌バフはかかるので、恥ずかしくなければぜひ歌ってみてくださいね」


 と、言ったら全員顔を真っ赤にして顔を背ける。

 これは誰も歌うのヤダタイプだ。

 需要ありそうなのだがなぁ。


「それで――先程バイソン選手に話した内容なのですが……今回バトルロワイヤルの会場として指定された『龍水龍牙の滝りゅうすいりょうがのたき』には他のダンジョンとは違うギミックがあります。これが非常に厄介なものでして、知らないと多分、致命的なことになるかと思いますのでご説明させていただきます。あ、でももしもご自身でギミックやフィールド効果を体験して打破したい、ということでしたら控えます。プロゲーマーにネタバレはプライドを傷つけかねないと聞きましたので……。お話しした方がいいですか? それとも、知らない方がいいですか?」

「うーん」

 

 淳が“予防線”を張ると、案の定エギュンとエンロイは顔を見合わせて悩み始めた。

 当然、この会話はエキシビジョンマッチ前の配信として全世界に放映されている。

 見ている人間が多いかどうかはわからないが。



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