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エキシビションマッチ開始


「なので俺は大丈夫ですね。多少の炎上なら名前がバズるきっかけになりえますし、そこから誹謗中傷になるようでしたら情報開示でがっぽりいただけばいいですし」

「お、おお……。アイドルってチャラチャラして軟弱だと思っていたが、アンタは強いんだな……」

「まあ、生半可な覚悟でやってられませんからね。そういうメンタルの強化やケアも授業でやるんですよ。心が弱くなることももちろんありますけれど、人前に出る職業の人は業界が違えどそういう神経図太さが必要だと思いますし」

 

 ね、と笑顔を向けると肩を揺らして「いい性格だな」と褒められた。

 そして淳が「なのでどうせ叩かれるのでしたら全力で叩き潰させていただいても?」と聞くと、悪戯っぽい表情で――。

 

「当然だな」

 

 バティにもお許しをいただけたので、既プレイのアドバンテージを存分に発揮させていただくことにした。

 それもどこまで通じるかわからないけれど。

 

 

 

「さあ、本日最初のエキシビションマッチはサービスが開始されて一年が経つ人気VRMMO、『SBOソング・バッファー・オンライン』の新機能! 高性能翻訳機能のご紹介です!」

 

 司会の女性がまばらな客席に向かってゲームの説明を始める。

 各国のベンチにいるのは、各国の有名人気選手ばかりだというのにこの客席の閑散とした感じ。

 わかってはいたことだが、注目があまりにも低い。

 

「開会式前にバイソン選手に教えた内容を、他の国の選手にも教えてもいいですか?」

「ん? ああ」

「先ほど時間が来てしまって武器屋にも行けませんでしたし、ダンジョン前に各国選手に俺から武具屋へ案内してもよろしいでしょうか?」

「ああ、まあ、それも構わないが……」

「よかった。では恩をたっぷり売って適当に好感度上げだけさせていただきますね」

「ああ、そういう“サービス”くらい、受けていいだろう」

 

 淳の言わんとしていることを即、察してくれたらしい晶穂。

 さすがベテラン選手でいらっしゃる。

 せっかくの世界大会なのだから、淳もしっかりと恩恵を受けておきたいのだ。

 名だたる世界の歌い手たちに交じってプレイするのだから、多少は目立っておきたい。

 既プレイヤーとしてのアドバンテージを使って他国の選手たちに多少のアドバイスをすれば、あとから『海外勢に対して不公平』『手を抜いた』『不平等』などという声は減らすこともできる。

 もしくは、「自分の手でゲーム性を探りたい」という選手には情報を相手が規制した、という建前も立つ。


「それでは今回のエキシビションバトルロワイヤルに参加する選手たちを紹介いたしましょう! まずは日本! 晶穂(あきほ)マロ選手! 昨日の前夜祭で完璧なパフォーマンスを披露してくださった星光騎士団、団長(リーダー)音無淳(おとなしじゅん)さん!」

 

 一言話すこともなく、チェイス型VR機に案内される。

 司会に紹介されたらそのままログインしろ、ということらしい。


「ログインしたら先に武器屋へ連れて行ってくれ」

「了解です」


 晶穂に言われて、頭上に落ちてくるVR機に目を瞑る。

 すぐにSBOのスタート画面。

 音声認証、生体認証、サーバー選択、パスワード入力を済ませ、キャラクター選択で『音無淳』を選ぶ。

 なんとなく不思議な感じがするが、今回だけのアバターなのでまあ仕方ない。


「あ、他の国のプレイヤーさんはどうしましょうか?」

「む……確かにそうか。俺たちが一番先のようだし、全員揃うまで待っていてもいいかもしれないな。全員揃ってから、武器屋に連れて行って情報を共有しよう。確か、全員揃ってから運営がテレポートポイントをこの場所に設置するとかいう話だったな――あ、いや。もうテレポートはできるようになっている」

「仕事が早いですね。それじゃあ、いつでもテレポート可能ってことですか」


 最初にログインした地点は、まだマップ移動ができないプレイヤー用の転移石。

 そこの選択肢にダンジョン『龍水龍牙の滝りゅうすいりょうがのたき』が入っている。

 というか、ダンジョン『龍水龍牙の滝りゅうすいりょうがのたき』しか行き先がない。

 そうこうしている間に中国、韓国、アメリカのチームがログイン。


「………………。減ってないか?」

「ああ、直前でイタリアやフィリピンは他のエキシビジョンマッチの予備選手ってことで呼び出されたらしいぜ。要約すると歌手に『急すぎる』って断られたってことだな!」

「ああ、なるほど」


 真っ先にバイソンが親指を立てる。

 言うてこの場にログインしているのは選手のみ。

 中国と韓国の選手も、顔を見合わせている。


「すごいな、バイソンが中国語を話している」

「僕も韓国語に聞こえるよ。聞いていた以上に高性能!」

「そうだろうそうだろう! これなら色々なゲームでのコミニケーションが円滑になる! それなのにこの高性能翻訳機能を堪能できないなんて他の国の奴らは可哀想な!」

「あのー、ところで皆さんの相方さんは……」


 淳が首を傾げると、バイソンたちは一瞬の沈黙。

 からの目を逸らす。


「あー、一応、連絡はついているのだが……」

「うちの国の歌手、リンソも連絡はついている。そのうちここにログインしてくるとは思う」

「多分、うちも」

「なるほど」


 淳以外の歌バフ要員は、日本に来ていない。

 突然の依頼を国で受け、VR機でログインしてこの場にくる――予定。

 それならば、彼らが来るまで「自己紹介と、ゲームの仕様を少しお話ししても構いませんか?」と淳が提案する。



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