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神経は図太いです


「というわけで出し惜しみなくやらせていただいてもいいでしょうか? エイランさん」

「いいですよ。容赦なくやってください。海外のプロゲーマーの適応能力の高さは絶対に侮らないでほしいので」

「わかりました!」

 

 エイランに許可をいただけたのでそのつもりでプレイをすることにした。

 選手紹介から帰ってきた選手たちに軽くお辞儀をしてから晶穂に近づく。

 

「すみません、エキシビションマッチをやる会場がわからないのでご一緒しても?」

「もちろん。すぐにスタッフが呼びにくるだろうから……」

 

 と晶穂が言いかけた時、扉がノックされて運営スタッフが「SBOエキシビションマッチを担当される方、ご案内します」と呼びにきた。

 先ほどチームスタッフに総合評価「怖くて気難しいけどゲーム上手すぎおじさん」と評された晶穂だが、淳に対してはかなり紳士的。

 笑顔も見せてくれる。

 ただ、晶穂のその態度に選手の一部が「え? 晶穂さんが笑った……?」「嘘だろ? 初めて見た」とか話しているので普段は本当に険しい感じのおじさんなのだろう。

 

(それにしても――アイドルとして日本一になってもいないのにこんな形で世界大会に参加することになるなんてなぁ。人生わからないものだなぁ)

 

 世界大会のエキシビションマッチに参加するなんて。

 しかも、ゲームの。

 アイドルとしての代打協力なので、実力を認められてと受け取ってもいいものか悩ましい。

 

「開会式は――その……」

「はい、見ていました。俺はBlossom(ブロッサム)のファンなので、最初は選手紹介も鏡音くんが見られたらそれでいいかなって思っていたんですが、選手紹介は全員見ました。海外選手も、全然知らない方ばかりでしたが」

「そうか。まあ、部門も関係なくチームとして流れ作業のような紹介だったからな」

「試合が始まるとそうではないんですよね?」

「いや、試合数が多いし、単独ゲームの大会ではないから一人一人紹介されて入場ということはないな。だが……まあ、勝った時の賞金がいつもより多いから……」

 

 とそこまで言って目の前に運営スタッフがいるのを思い出し、ごにょる晶穂。

 まあ、世界大会と言えば豪華賞金。

 プロのゲーマーといえば、勝って賞金で生活するもの。

 ふと、「エキシビションマッチにも賞金って出るんですか?」と気になって聞いてみる。

 

「出ない」

「出ないんですか」

「だが、エキシビションマッチは発売前のゲームを無料でプレイできる。プロにとってはそれが大きな利点だな。エキシビションに使われるのはβ版も終えた、本当に発売直前のものだから」

「なるほど。確かにキャラクター作成で入った時の翻訳機能すごかったですもんね」

「あれはすごかったな。エキシビションに使うなら、各国のプレイヤーと歌バフ要因をランダムに入れ替えた方がいいように思うが」

「ああ、それ面白そうですね」

 

 が、残念ながらルールはスポンサーが適当に考えたもの。

 SBO運営も突然のエキシビションマッチ打診でそこまでの提案をできなかっただろう。

 淳も声には出さないが、多分本当に……エキシビションマッチに参加するほどんどの選手は思っても口にはしない。

 

(スポンサーって無能な人は本当に無能で思いつきだけで喋っているんだなぁ)

 

 スポンサーがいなければこういったイベントが開催できない。

 だから仕方ない。

 それに急遽決まったことだから、曖昧な部分が多いのも無理のないこと。

 ただ曖昧な部分が多い分、恐らくネットは荒れる。

 適当な仕事をしても、まっとうに全力に仕事をしても、結局は勝てば『海外勢に対して不公平』『手を抜いた』『不平等』と言われ、負ければ『既プレイがいるのに負けている』『プロと言われてもこの程度』などと好き放題言われるだろう。

 

「その……」

「はい? なんでしょうか?」

「こういう業界は、どんなプレイをしても炎上しやすい。本当に、いいのか?」

「ああ、もしかしてそれで気を使ってくださっていました? 大丈夫ですよ?」

「だ、大丈夫、な、のか? ほ、本当に?」

「はい。まあ、言わせたい人には言わせておけばいいかなって! 俺は結構ネットでなにを言われても気にしないですし、言われるなら完全勝利して批難轟々の方が気分いいですよね!」

「ああ、アンタその爽やかなツラでそういう性格なのか……プロゲーマーに向いてるよ」

 

 よくわからないが褒められた。

 心配してくれたのは大変にありがたいのだが、音無淳というアイドルは筋金入りのドルオタである。

 ドルオタ歴が長いので、ネットでの炎上に心を痛めることはない。

 なぜなら『推し関連の炎上系ネット情報は八割信じない』ことにしているので。

 そう思うようになったのは綾城珀の炎上騒動だ。

 入学の時から知っていたので、綾城珀が『彼女を作った』程度で大炎上した意味がわからなかった。

 なぜなら東雲学院芸能科は別に恋愛禁止ではないからだ。

 だって恋愛リアリティ番組の出演とかがあるから。

 そういう擁護をする人間にも噛みつくリアコ系ドルオタの醜さにドン引きし、結果綾城珀の自殺未遂騒動に発展して『悪いことをしてないのに騒ぐネット民のいうことはマジで聞く耳いらねー』と学習した。

 案の定、最初に『綾城珀の彼女』を自称した女は綾城を陥れようとしたリアコ。

 そこから東雲学院芸能科の方ではそういったネットの炎上や誹謗中傷には、かなり警戒とともに法的対処の強化が行われている。

 そして現在だと、学院よりも春日社長が、怖い。

 後ろにあの人がいると思うとなにも怖くない。

 あの人が敵に回る方が怖い。



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