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緊急依頼(1)


 もしもリアルタイムで翻訳されて、喋る言葉がすべて相手の言語に聞こえるのなら言葉の壁は消え失せる。

 フルフェイスマスク型VR機を作っているソルロック社は、それが上手くいくようであればイヤホンなどの形で応用し、発売。

 世界展開したいと考えているらしい。

 それらの技術発表も、ゲームショーの方でされているとか。

 トラブルも増えそうだが、言葉の壁がなくなるというのは政治や軍事を始め、様々な業界に関係してくる。

 翻訳家を雇う必要はなくなり、自分の言葉がそのまま相手に伝わるようになるのだ。

 もしそれが実現すれば――。


(世界が変わる。本当にそんなこと可能なのかな……?)


 SBOのエキシビジョンマッチは、他の新作ゲームのものとは意味合いが違う。

 しかも、SBOもフルフェイスマスク型VR機も日本産(自国)のもの。

 それなのに――


「え? それなのに日本のアーティストが出演できなくなったの……!? な、なんで!?」

『VR酔いするそうです……』

「あ……ああ〜〜〜〜……す、する人は、するねぇ〜……」


 あまりにも納得の理由でなにも言えなくなっちゃった淳。


「でもそれなら代わりの人をスポンサー側が提案するのが筋じゃないの? 特に言い出した企業が。なんで鏡音くんが代打を探してるの?」

『それはあの……自分が星光騎士団のメンバーなので……あの、伝手があるだろうと言われてしまいまして……実際先輩たちが前夜祭で完璧にパフォーマンスした直後ですし……』

「ありがたいけど無茶振りすぎる……。というか、自社のアーティストを宣伝するのが言い出した理由なのに……いいの?」

『自分もそれは指摘させていただいたのですが、あのー……言いづらいんですがその……SBOのエキシビジョンマッチ、開会式の直後なんです……そのーーー……』

「あ、ああ……eスポーツ大会があるもんね。開会式直後のエキシビジョンマッチは注目度が低いもんね」

『は、はい。それに、世界的人気作品の――あの……エーテルラグナロクという海外ゲーム会社の新作のエキシビジョンマッチが……時間被せで行われまして……そ、そちらの出演チームが、あの、ふぁ、ファーストチームで……』

「アー……」


 そういえば鏡音が最初に『セカンドチーム』と口にしていた。

 要するに大会に出る“オールドチーム”の他に、エキシビジョンマッチを担当する“ファーストチーム”――メインチームの予備選手たちと、さらにまたその予備たる“セカンドチーム”が存在するという話のようだ。

 当然、注目度はメインチーム。

 すぐに世界大会が開催され、お客さんの目はそちらに向く。

 エキシビジョンマッチは新作ゲームに興味津々な層から注目される。

 なにしろ、今回のイベントの名称は『東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会』。

 どちらも“メインイベント”なのだ。

 既存ゲームのSBOのエキシビジョンマッチは、その真の意味がわからない層からはどうしても注目されづらい、ということ。


『いや、別にあの、セカンドチームが弱いとかではないんです。セカンドチームはFPSジャンルの担当でVRMMOもできる、みたいな担当と言いますか』

「う、うん」

『それに、セカンドチームのリーダーの晶穂(あきほ)マロさんは総合ステータスがエイランさんに次いで二位……日本のFPSの代表作のランキングほぼすべてで一桁の順位を保持している、自分から見たら怪物みたいな人なので』

「ひょえ……」


 淳、FPSはわからない。

 一度遊んでみて「無理ぃ……」となったジャンルのゲームだ。

 人を撃つ抵抗感が凄まじくて、どうしてもハマれなかった。

 FPSは基本的にすべてがPvP――プレイヤー同士で戦うもの。

 そのジャンルを極めるということは、プレイヤースキルのレベルに直結しているということだ。

 日本のランキングですべて一桁。

 普通にヤバい人である。


『なので断じて、あの……日本チームが手を抜いているわけでは、なくてですね……!』

「うん。それはわかった」


 とんでもねぇ人をエキシビジョンマッチに差し出している。


「それなのに歌う人がVR酔いしちゃう人なのか……。えっと、やっぱりスポンサーの人に新しい人を紹介してもらうのは無理なの? 正直そんな大舞台で俺たちが歌うのは……難しいというか……いや、アドバンテージはある自信があるけれども」

『スポンサーの人がSBOのことをよく知らなくて、今回のバトルロワイヤルルールがプレイヤー&歌バフ要員一人ずつの2v2なんです……』

「嘘でしょ、バカすぎない?」


 どストレートな感想が出てしまう。

 あまりにも、あまりにもすぎる。

 しかしここは誰もが通る廊下。

 慌てて自分の口を塞ぐ。

 どうにも、こういう時に石動のようなところが出るようになってしまった。

 先輩の影響というのは、どうにも大きい。


「戦いを担当するプレイヤーが一人と歌バフ担当が一人……しかもそれをVRMMOに不慣れな歌手の人に初見で任せるつもりってこと……? 無茶振りがすぎる」

『自分もそう思います。でも、SBOのエキシビジョンマッチはあくまでも、その……自動翻訳機能のお披露目なので、スポンサーはそれほど、プレイヤーの勝敗に重きを置いていないんです。だから余計に、プレイヤー同士のバトルを楽しみに見にきている人には、面白く見えないだろう、というのと……スポンサーがそういうノリなので、プレイヤーの方も……選手の方もやる気が感じられなくて』



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