星光騎士団ギルド(2)
「その代わり、星光騎士団のメンバーで定期的にレイドイベント戦でライブをやる契約です。さすがにイベント日数もあるから物理的に無理だし、凛咲先生は東雲学院芸能科を巻き込んでやるつもりみたいなんだよね。フルフェイスマスク型のVR機を在学生の人数分購入するのが難しくて、いつになるかわからないけれど」
「東雲学院芸能科も話がいくんですか?」
「その予定です。SBO運営も都合よく大量のアイドルがライブを行ってくれるのはありがたいみたい。東雲学院芸能科のファンもゲームに興味を持ってくれると思いますしね」
「な、なるほど」
淳自身、智子に合格祝いで『神野栄治がプロモーションを担当したから』フルフェイスマスク型のVR機を購入してもらった。
高額商品なので、ファンの母数が多い東雲学院芸能科のアイドルたちがゲーム内でライブをすればファン心理で財布の紐がゆるゆるになって、売り上げが貢献してもらえるかもしれない。
アイドルたちもライブの練習になるし、知名度アップにも繋がる。
双方に利益があるし、ファンも無料でライブが見られ、現実では不可能なファンサも出てくるだろう。
淳は参加できなかったけれど、『 Blossom』のSBO内オンリーライブ後の握手会など。
思い出すとガチでへこんでくるのだが、Blossomメンバー全員のサイン入りCDが今、世界で自分だけが持っているということを思い出してメンタルを持ち直す。
その直後、カイセイとアマネが入ってきた。
間を置かず、ヒマリとルーヴァというキャラクターが入ってくる。
ヒマリは花崗だ。
ナイスバディのお姉さん系美女のアバターに、ミオがわかりやすいほど表情を歪めた。
その後ろの短髪スポーティー美少女、ルーヴァ。
ここまでの面子が揃うと中身が誰なのか察して、全員が半目になる。
「ご、ごとちゃん……? 意外。ごとちゃん、ネカマになっちゃうタイプなんて……」
「ミオちゃんもネカマやんけ。わしは単純にネタのつもりでネカマやったんやけど思いの外女の子になっとるメンバー多くてなんや滑った気ぃするわ……」
ガチで落ち込む花崗。
確かに、七人中四人が女性アバター。
なはは、と乾いた笑いを浮かべるバアル。
「俺はこっちの方が喋りやすいんで」
「ごとちゃん、自分の顔本気で嫌いすぎない? 僕、いつもカッコいいって褒めてるのにぃ」
「美桜ちゃんに褒められても嫌いなものは嫌いなの。ごめんね」
「え? 後藤先輩って自分の顔嫌いなんですか!? あんなにイケメンなのに!? モデルだってできそうな高身長と顔面偏差値なのに!? なんでですか!? 男も羨む爽やか系イケメンなのに!? 嫌う要素が一切ないと思うんですが!?」
本気で驚いた淳。
普段は長い前髪で顔を半分隠している後藤だが、ライブ中はセットで顔がわかるのだが本当に整っている。
爽やかで、甘い顔立ち。
星光騎士団メンバー上級生組は全員、東雲学院芸能科全生徒の中でもトップクラスで顔面がいい。
まあ、芸能科なので基本顔がいい男しかいないのだが。
ちなみに一年生の中では魁星が群を抜いて顔がいい。
おそらく学年で一番顔がいい。
「だよねー! でもごとちゃんのお母さんとお祖母さんは女の子がほしかったんだって。ずっとネチネチ言ってくるんだよ。挙句僕のことまで女の子扱いしてきて、ちょっと怖かった」
「あれはちょっと異様だよね。本当にごめんね、美桜ちゃん」
「いいけどねぇ。ごとちゃんが二人をシメてくれたから、今も普通に生活できてるんだし。まあ、未だにごとちゃんと『結婚してうちの嫁に来てね』とは言われるけど」
「は?」
「あ」
後藤もといルーヴァが笑顔のまま聞き返す。
確かに今なんかシレっとすごいこと言っていた。
幼馴染とは聞いてたが、後藤家、もしかしてヤバいのだろうか?
全員の仰天の目がミオに向けられる。
「え? なに? 聞いてない。美桜ちゃん? 俺の母さんとお祖母様に関わったらどんな些細なことでも教えてねって言ってるよね? なにされるかわかんないって言ってるじゃん……! 美桜ちゃんは可愛くてアイツらに気に入られているんだから、本当に気をつけて! 美桜ちゃんがいるから俺に婚約者をつけてないとか言ってるような母・祖母なんだよ……!? まだ頭花畑なんじゃないか! 間違ってもついて行かないでよ!?」
「しないしないしない! ついてってない! テレビ局の廊下で偶然会っただけだから!」
「美桜ちゃんは可愛いんだから気をつけて! 世の中変な男ばかりじゃないんだよ!? 頭のイカれているババアどもも存在しているんだよ! うちの財力と人脈を舐めないでって何度も言ってるよね!? 美桜ちゃんを拉致するのも美桜ちゃんのお父さんとお母さんから仕事を奪って借金まみれにして俺の親戚の家に美桜ちゃんを引き取らせて俺の奥さんもどきにすることも日本の法律変えて男同士でも結婚できるようにすることも造作さないんだからね!?」
「もおおお~~~! 怖いこと言うのやめてって言ってるじゃん!」
「その怖いことを本当にやりそうだし、できるんだから気をつけてって言ってるの!!」
後藤がこんなに感情丸出しでたくさん喋っている……という衝撃と、後藤が宇月に懇々と言い聞かせる内容もすさまじくてヒマリとバアルもポカーンと口を開けている。
さすがに三年生コンビもこんな後藤は初めて見たのだろう。