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初戦

 

 ――そうして、淳は知り合ったエイナとともに町を出て街道を歩く。

 エイナが“知り合い”に教わったところによると、SBOは完全なるオープンワールドタイプ。

 メニューからマップを開くと一度到達して開放した転移石のある場所には、一瞬で行くことができる。

 システムはスキルツリー開放型。

 この辺りは比較的ゲームによくあるシステムだ。

 

「で、他のゲームと違うのはゲームタイトル通り“歌”を歌うとバフや敵に対してデバフがかかる点。これが一番の重要要素……なんだって」

「は、はい」

「スキルツリーを開放するとバフの種類とデバフの種類が増えていく。プレイヤー以外に、武器や防具にもスキルツリーが設定してあって、武具のスキルツリーの開放にもプレイヤーのスキルツリー開放度が関係してくる。プレイヤースキルツリー開放度が高ければ、弱い武具のスキルツリー開放は容易って感じらしい」

「なるほど……」

「初期武器のスキルツリーは二つまでだから、二つ開放したあとは武具屋に持って行ってワンランク上位武器と交換できる。ただし、初期武器のスキルツリーが開放状態が条件。なんかそんな感じで武具のスキルツリー開放済みの武器を複数作って、どんどん上位武器と交換させていくらしいよ。新しい武器を買うのにはお金がいるけどね」

「つまり、やっぱりプレイヤーのスキルツリー頼みってことなんですね」

「そーね」

 

 スキルツリー系はスキルポイントが必須。

 レベルを上げなくても、クエストをクリアすればSPが手に入るので、スキルツリーは開放しやすい。

 特に――歌が上手ければ。

 

「歌は精密採点――カラオケよりも精密に採点されて、それに応じたバフ・デバフの数値が変わるんだって。ま、とりあえずそれはやってみるといいよ。ほら、初期モンスターがいるよ」

「っ!」

 

 エイナが指差した先にいたのはヒヨコの姿に似た鳥のモンスター。

 さすが初期モンスター、弱そうだ。

 

「初期武器は剣?」

「はい」

 

 淳が希望している星光騎士団は剣を使う”殺陣”を演出としてよく行われる。

 殺陣の習得は必須事項の一つ。

 だから入団が困難ということなのだが、入団前からできる必要はない。

 それでもどのみちやることになる。

 今からある程度型を覚えておくといい、と思ったので剣を選択した。

 

「――星光騎士団では殺陣習得必須だもんね」

「そうなんです! えっと、じゃあ……」

「うん、初期ソングの一節を歌ってご覧。それで“バフ”がかかる。まあ、最初のモンスターとかそのまま戦っても大丈夫だと思うけど、せっかくだから練習練習」

「はい!」

 

 最初に覚える“歌”は『始まりの歌』というタイトル。

 初期のスキルツリーで使えるバフは、この『始まりの歌』のAメロ部分のみ。

『始まりの歌』Aメロでプレイヤーが得られるバフは『攻撃力上昇』。

 

「~~♪」

 

 Aメロを口ずさむ。

 右の頭上にポコン、と四角いアイコンが現れる。

 ――攻撃力上昇のアイコン。

 これがバフだ。

 アイコンの上には30秒の文字。

 バフの継続時間だ。

 

「い、行きます!」

「うん」

 

 剣を構えて、目の前にいるヒヨコモンスターに駆け寄る。

 近づいてきたプレイヤーに気がつくと、さすがに迎撃態勢を取るようだ。

 間抜けな顔がキリッ! とこちらを向いて、先制攻撃をせんとばかりに突進してくる。

 心が痛むような顔をしているのだが、相手がモンスターである以上仕方ない。

 モンスターらしくヒヨコの姿のくせに無駄にでかいので。

 

「はあああ!」

 

 剣を振り下ろすと、デロローン! と効果音が鳴ってレベルが上がった。

 スキルポイントは5。

 モンスターは斬りつけてすぐに砕けて消えてしまう。

 残ったのはアイテム『ヒヨコの羽根』。

 なにに使うのだろう、と思いながらそれを拾う。

 

「ないすー」

「あ、ありがとうございます! なんとなく遊び方がわかりました!」

「そ? ならよかった。あ、最初は武具のスキルツリーを開けるスキルのレベルを上げるといいらしいよ。武具のスキルを解放して、先に武具のレベルアップを優先させた方が効率いいって有識者が言ってた」

「あ、それでエイナさんは装備がもう違うんですね」

「そう」

 

 装備を変えるのは、お金があまりかからない。

 初期装備は特に、スキル解放を行なったものとの交換と言っていた。

 早速言われた通りに、武具のスキルを解放するスキルツリーを強化していく。

 

「武具のスキルツリーを解放すると、さっきとは戦いが格段に楽になってると思うよ」

「やってみます!」

「じゃあ、俺も歌バフかけるね。バンバン狩ってこー」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 エイナが息を吸い込む。

 最初の一つの音が唇から放たれた瞬間、背筋がゾワッと粟立つ。

 

(上手……!?)

 

 ほんの一節。

 Aメロも完成していない最初の一文のような歌詞だけでエイナが歌うまだとわかる。

 出だしだけでこんなに背中がゾワっとするほど上手いなんて。

 頭上に『攻撃力上昇』と『速さ上昇』のアイコンが浮かぶ。

 始まりの歌のAメロのバフは『攻撃力上昇』のみのはずなのに、エイナの歌は採点による追加付与で『速さ上昇』効果が付属した。

 それだけ、エイナの歌が上手いということだ。

 

(この人、すごい……!)

 

 そのバフを受けながら、殺陣の動きを意識しつつモンスターを狩っていく。

 ほんの一時間で、なんと10もレベルアップした。



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