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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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自分も仲間も認めて応援して


「じゃあ、目指しちゃおうかな」

「いいじゃん。目指しな目指しな。俺も理想のゲームを作れるように頑張るよ」

「はい、やりたいこと全部やっちゃいましょう!」

 

 人目のあるところなので声には出せないけれど、Frenzy(フレンジー)のことも含めて。

 視線だけで頷き合って、手を振って別れる。

 まさかのところで遭遇したけれど、会えてよかったように思う。

 

(上総さんも、多分『やりたいことをやりたいようにやれば』って言ってくれるだろうし……うん……)

 

 顔を上げる。

 そうだ、なにも我慢したり諦めたりする必要はない。

 好き放題できる時に好き放題しておかないと、対策取られてできなくなるよ。社会っていうのは自分が気にいらなければ締めつけてやろうっていう、声のデカい他人で溢れ返っているんだから。規制される前にやんないと、世の中どんどんつまんなくなる――なんて言っていた人だ。

 もちろん、複数の“やりたいこと”をやるのなら相応の努力が必要。

 時間割を作り直す必要がありそうだな、と考えながらホテルに戻る。

 そのあとは宇月、周と勉強会。

 学年が違うというのに、淳も周も成績優秀なだけあり宇月との勉強に余裕でついてこれる。

 

「お前ら頭よすぎ。いいなあ、お前ら大学余裕で受かるじゃん。どこの大学行く予定なの?」

「自分はこのまま東雲大学に行く予定ですね。綾城先輩たちもおられますし」

「俺も今のところそうですね。宇月先輩は違うんですか?」

「ううん。僕も東雲大学の予定。通いやすいしね。でも今から不安だよ~。僕ちゃんと大学行けるのかな~~~」

「「大丈夫でしょう」」

 

 思わぬセリフ被りに少し驚いて顔を見合わせてしまったが、学力向上委員会で底辺を見たあとなので余計に断言できた。

 宇月は絶対大丈夫だろう、と。

 


 ◇◆◇◆◇



 翌日、十月十六日、早朝。

 東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会前夜祭のために、朝から最終リハーサル。

 前夜祭の開始は十六時。

 それまでに、徹底的なリハーサルが繰り返される。

 たった一曲のために何度もパフォーマンスを行い、確認した。

 普段とはやはり、イベント会社の力の入れようが違う。

 それだけの金が動いているのだから当然だが、だからこそ時間が迫ると緊張感が増してくる。


「はあああああっ」

「ナギーさぁ、このくらいの緊張感とか今までも経験あるんじゃないのぉ? なんでそんなに緊張しまくってるのぉ?」

「いやいや、今まで感じてきた緊張感とは全然違うんですよぉ! 今日も宇月先輩を演じてもいいですかー!」

「いいよぉ」


 ごすん、と宇月に抱きつく柳。

 入学から結構経つのに、まだまだライブ本番が苦手な柳は、宇月を“演じる”と緊張を和らげることができる。

 その影響か、演じていない時まで宇月の口調が映っている気がするのだが、そこはご愛嬌だろうか。

 間もなく昼食の時間となり、ケータリングを味わったあと一時間休憩。

 十六時までは待機時間となるが、十五時から前夜祭放送および配信が開始。

 特番が組まれ、今回のイベントのタイムスケジュールや展示に関する情報、大会情報、対戦情報、eスポーツチーム紹介などが盛りだくさんで流れていく。


「な、なんかさぁ……改めてマジででかいイベントにお呼ばれしてるんだよねぇ、僕ら」

「そうだね」

「まあ、でもしょせんは添え物なので。そんなにみんな、緊張しないでくださいねー」

団長(リーダー)が一番身もふたもないこと言ってる……」

「だって事実だしね。俺たちよりも余程緊張と、国を背負った重圧で苦しんでいるのは選手たち。鏡音くん、今頃どんな気持ちでいるのかなって思うとね」


 と、言うと全員神妙な面持ちになる。

 それは本当にその通り。

 日本からも複数のeスポーツチームが出場しているが、鏡音はその中でも格闘ゲームとFPSの二つのジャンルの選手として抜擢されている。

 三日間の日程の全日程出場というのは、心身に凄まじい負担がかかるのだ。

 VRゲームなので、脳の負担はどれほどか。

 想像するだけでぞっとする。

 国を背負う責任も、世界に見られる緊張も、星光騎士団として出演するよりも比べ物にならない。


「鏡音くんは本当にすごい人だったんですね。年下なのに、すごいです。世界と戦っているんですものね」

「うん。だから緊張はしててもいいけれど、俺は心から応援する気持ちで歌おうと思っているよ。鏡音くん、エイランさんに勝ってほしい」


 レベリング手伝ってくれるし。

 あとは予備選手とのことだが、鶉ナツメも。

 応援歌として歌うなら、全員表情が明るくなる。

 確かに緊張はしているけれど、星光騎士団メンバー(仲間)の応援なら特に力も入るのだ。


「それではそろそろ前夜祭開始となります! 出番の早いAグループの皆さんはこのまま会場横の控え室に残っていただき――」

「あ、集合入ったね」

「いよいよ本番かぁ。これが終われば僕とごたちゃんは本格引退だからなぁー」

「ちょっと、宇月せんぱぁぁぁい! 今月も定期ライブがあるの忘れないでくださいよぉ!?」

「あー、はいはい。忘れてないよ〜」

「それに先輩たちが本格引退するのは冬の陣ですよね?」

「くっ……いやいや、いい加減みんな自立してよねぇ?」



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