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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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偶然遭遇


「開発部としてもやっぱり他社の新作や新技術は気になるから、見学することで今後の開発に生かせるかもしれないって」

「ああ、なるほど」

「淳くんこそなんでここにいるの? ご両親がゲーム会社の人、とか?」

「え? あれ? 言ってませんでしたか? 星光騎士団が前夜祭に出演するんですよ」

「え? え!? 聞いてない聞いてない!! えええええええ!? 星光騎士団って学生じゃ……」

「そうなんです。大抜擢で困惑しましたけれど……」

 

 ちらり、と松田のブースを見る。

 紫電株式会社――SBOを開発したゲーム会社だ。

 そして、淳たちが所属する春日芸能事務所のグループ会社の一つ。

 無言で顔を見合わせる淳と松田。

 

((やってるな、春日社長……))

 

 今回の東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会、当然のようにスポンサー看板に名前があった。

 なのでまあ、星光騎士団を捩じ込んだに違いない。

 複雑な気持ちで肩を落とす。

 いくらIG本戦常連とは言っても、星光騎士団は学生セミプロ。

 綾城のおかげで夏の陣準優勝という実績はあるが、彼はもうBlossom(ブロッサム)という伝説になっている。

 彼の所属していたグループで、それなりの公式大会実績がある、という点だけ見れば学生セミプロアイドルでも世界大会の前夜祭出演は無理ではない、のか?

 もちろん、やはり春日社長の力が大きいとは思うけれど。


「あの人、お金ありすぎだろ……どうなってんだ……」

「春日社長の金銭感覚は、深く考えるのをやめた方がいいです」

「ミュージカル劇団も買ったとか言ってたもんね。淳くんは卒業したらその……アイドルとミュージカル俳優どっちもやる予定なの?」

「希望としては。ミュージカルの劇団の方は、来年から顔を出すように言われているんですけど……」

「スケジュールミッチミッチすぎない?」

「はい。今から勉強面が心配です」

「心配するところそこなんだ」

「大学にも通いたいので」


 実際スケジュールはミッチミッチである。

 例のBLドラマの撮影はほぼ終わっているが、今はデビュー待ちのFrenzy(フレンジー)の諸々に追われている状態。

 粗方の準備はこの一年を通してやってきているけれど、それとデビュー直前でしかできない準備はまた別のもの。

 情報開示前なので、SNSやワイチューブチャンネルなどは名前を変えて準備を進めている。

 それはそれとして淳の夢であったミュージカル俳優への夢に関しても、春日社長が買い取った劇団の方が落ち着いてきているらしく、顔見せを試みる許可が出た。

 買い取った当初は演出家と劇団長がゴタゴタして、そのあとは男女関係でゴタゴタして、そんなトラブルメーカーたちを追い出してようやく平和な感じになっているらしい。

 新しい劇団員の補充も来年行われる予定らしく、淳もそこに組み込まれるとのこと。


「劇団ってそんなに人間関係面倒くさいんだ……」

「そうですね。ぶっちゃけ……劇団スター☆コスモに通っていた頃、大人の部の先輩俳優の皆さんが惚れた腫れたで地獄みたいな空間になっているのは、見たことありますね」

「うっわ…………」


 思わず目を背けてしまう。

 これは淳にとってあまり関係のない話だが、当時一緒に劇団スター☆コスモに通っていた長谷川十和(はせがわとわ)橋良聖(はしらひじり)は小学校高学年の時から整った顔立ちと中学生と言われても不思議でない雰囲気、身長をしていたため上の学年の女生徒に人気があった。

 高校生の女優志望の子数名が二人に声をかけて「付き合おう♡」と言っていたのも見たことがある。

 当時小学生の二人に、高校生が、だ。

 いくら未成年同士とはいえ、さすがに気持ちが悪く感じたのを明確に覚えている。

 それでなくとも精神年齢が大人になるのに時間がかかるのが男子という生き物。

 今や旬の若手俳優の名を欲しいままにしている長谷川と橋良両名も、当時はただのガキンチョ。

 女子高生に声をかけられても、付き合うという概念すらよくわかっていない。

 それなのにそんな女子高生に迫られたとて。

 しかも、相手にしなければ相手にしないで女子高生側が勝手になにやら喧嘩し始める。

 二人とも相手にしていないのに、奪い合いが始まる謎。

 当然それで、上の年代のクラスは地獄の空気。

 彼女らと同年代の俳優志望は女優の卵とお付き合いを目論んでいる者が八割。

 演技にとち狂っている者は事務所に所属して若手俳優として活動しているため、クラスにいるのはだいたい邪な目的の者ばかり。

 そんな地獄の空気を見ていると、なんだか演技へのモチベーションが下がってしまう。

 当たり前なのだけれど。

 淳が養成所を辞めたのは高校に入学が理由だが、少なくとも橋良が事務所に移籍したのは人間関係が大きかったと言っていた。

 その地獄を見ていたから、淳も劇団に入ることに不安が大きい。

 ミュージカルを演じるのには劇団に所属するのが一番なのだが、それはそれとして……だ。

 それに――。


「それに、アイドルも……楽しいんですよね」

「楽しくなっちゃってる?」

「はい。Blossom(ブロッサム)という目標もありますし。演技も楽しいから好きなのですが」

「そっか。でも、楽しいことが多いのはいいことだよ。メジャーリーガーで打って投げるのどっちも得意な選手みたいに、二足の草鞋履いちゃったっていいんじゃない?」

「そう……でしょうか?」

「うんうん。いうて俺も兼業だしね」


 確かに。



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