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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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学力向上委員会の今年の成果


 十月十二日、学力向上委員会の楽曲MVが公開された。

 宣伝は行うが、それぞれの教科の難しい部分を、リズムに乗ってわかりやすい歌詞で覚えられる。

 それを目的に作られた曲を、学力底辺ユニット×5が歌って踊るのだ。

 十月の半ばといえば受験生たちが最後の追い込みに向けて、様々な授業系動画を漁る時期。

 学力向上委員会楽曲MVは、東雲学院芸能科ワイチューブチャンネルでアップロード。

 再生リストに『学力向上委員会楽曲』としてまとめられた。

 これが存外ヒットして、急上昇ランキングに五曲すべてランクイン。

 一番聞かれた英語の曲はなんと急上昇ランキング五位にランクインした。


「という感じでサブスクの方も好調みたいです。よって学力向上委員会は来年も継続。来年入学してくる一年生の成績上位者は強制委員会加入。底辺学力者も強制ユニット加入が決定しました。皆さん、おめでとうございます!」

「「「おめでとうございますー」」」

「「「……………………」」」


 そんな報告を翌日、十三日にすると学力底辺ユニットメンバーたちは死んだような目で拍手をする。

 なにが絶望かって、来年最高学年になる二年生、来年二年生になる一年生たちは次のテストで下位を脱しなければ来年も底辺ユニットメンバーとしてこういう曲を歌わされるという宣言なのだからこんな顔にもなるだろう。

 でも仕方ない。

 勉強しない方が悪い。

 委員会の方は「次の曲の範囲はこのあたりがいいんじゃないか?」「数学だったらこの公式を……」と早くも来年に向けた話し合いを開始している。

 その横で周が「それでは前回のテストの結果を踏まえて、復習を行います。まずは三年生」と簡易授業を開始。

 底辺学力たちの死んだような目は、さらなる深淵を感じさせるものとなった。


「いやー、想像以上にいい感じな定着のされ方してて企画者としては安心した〜。来年もナッシーとクオーがいるから安泰だしぃ〜。僕もうやり残したことなんもないやー」

「宇月先輩……」


 数多の底辺学力者たちを絶望と地獄に叩き落としたあとだが、目を閉じて感慨深そうにする宇月。

 彼らは底辺なので、あとは上にあがるだけ。

 それを見届けて、学校を卒業していく――。


「まあ、あとはでっかい仕事があるけれど」

「そうですね。頑張りましょう」

「ホテル取ってある?」

「はい。少しランクの高いところを学院が取ってくれました」

「まあでかいもんね」


 でかい仕事――東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会前夜祭出演だ。

 学生セミプロがこれほどの大舞台に招待されるなんて思わなかった。

 宇月美桜にとってこれほどの大舞台で“実績”が残せたのは行幸だろう。

 ウキウキしながらその日は報告だけして解散。

 東京ジャパニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会前夜祭は、学院側全面協力の全面バックアップ。

 ホテル代も交通費も最初から学院持ち。

 前夜祭は世界大会の前日だが、リハーサルは二日前から行われるので、明日には現地入りしなければならない。

 幸いというべきか、鏡音は本番までの追い込み期間で本日からお休み。

 ゲームチームの方に合流して、仕上げ期間に突入。

 まあ、彼もプロなのである意味当然。

 だいぶ特殊な学生生活を送っているけれど、すでにプロとして活動しているのだからお給料分の働きをするべく仕事を優先するのは当然のことだろう。


「正直格ゲーなんて特によくわかんないジャンルだから、その世界大会とか言われてもよくわかんないよねぇ」

「そうですよね。でも鏡音くんって元々FPSの方が上手いらしいですよ。そっちもちょっと見てみたいですよ」

「えー、僕そういうゲーム特に苦手〜。対人系は全般苦手〜。音ゲーなら好きだけど」

「SBOは……」

「SBOはギリ音楽関係でもあるからー。僕、VRゲームって実際ほとんどやってこなかったんだけど、SBOは普通に面白いしねー」


 それを聞いてにっこり。

 まあ、宇月の場合“推し”の蔵梨柚子(くらなしゆず)とSBOで遊ぶことができるというのも大きそうだけれど。

 いや、推しと同じゲームで遊べるのは本当にでかい。

 淳も“あの”神野栄治と再会できたのはSBOのおかげだ。

 しかも同じ事務所に入ることもできたし、彼が親しい者にしかつけない“あだ名”まで。

 それもこれもすべてのきっかけはSBOだ。

 思い出すと緊張で背筋が伸びてしまうし、やはり恐れ多い気持ちが大きいけれど同じくらい嬉しい。


「あと!」

「はい!?」

「前夜祭でしっかり活躍して『トップ4』にしっかり返り咲いてよね。星光騎士団の団長が『トップ4』以下なんて許されないよぉ〜?」

「あ……。は、はい。そうですね。頑張ります」


 ビシッと指さされて苦笑いをしてしまう。

 さすがにそろそろ校内売上ランキングも固定されているはず。

 今から逆転は難しいと思うのだが。

 それでも、宇月の言う通り――東雲学院芸能科三大大手グループの一角、星光騎士団の団長が『トップ4』から外れたままなのはやや外聞が悪い――のかもしれない。

 またWalhalla(ヴァルハラ)に舐められても困る。

 来年は最高学年にもなるのだし。


(頑張ろう)



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