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星光騎士団ギルド(1)


『病院での診断結果ですが、数日から数週間声を出すのは危険。無理に出せば声に後遺症が残るとのことでした。大変申し訳ないですが、歌は無理なのでダンスや歌詞を覚えるなどのレッスンには出てもいいでしょうか?』

 

 と、グループチャットに載せる。

 授業中や仕事中なのだろう、誰からも返事はない。

 会計を終わらせて車に乗り込む時、スマホに通知。

 

『今日レッスン出られるの? いいよ、つき合ってあげる』

 

 と、返事をくれたのは宇月。

 朝もそうだが、レスが早い。

 だが学校にいる組は比較的連続で反応があった。

 休み時間だろう。

 

『了解です。無理はしないように療養してください。衣装は制作予定なので、できることを頑張っていきましょう。お大事になさってください』

 

 後藤、本当に丁寧なレス。

 そして優しい。

 

『ジュンジュン、マジで大変なんだな。早くよくなるといいな。歌詞覚えるの一緒に頑張ろう!』

『振付を覚えるのも、やっぱり三人いた方が助かります。本日は仮歌を自分と魁星で収録予定でしたが、淳が来れるのなら立ち位置確認しながら練習しましょう』

 

 と、魁星と周も返事をしてくれた。

 仮歌を自分たちで録る、というのは貰った仮歌を覚える前に、自分たちで歌って自分たちの歌い方を覚えるようにする。

 仮歌は凛咲先生が歌ってくれたが、歌唱力が違いすぎて真似できない。

 ”自分たちの曲”に育てていかなければいけないのだ。

 自宅に着く頃、綾城からもメッセージがきていた。

 

『淳くん、診断結果を教えてくれてありがとうございます。声を出さないように、大事になさってください。SBOで新曲の練習しましょうね。今夜21時から一時間ほどログインできそうなんですが一狩り行きます?』

 

 というもの。

 さすがゲーム好き。ありがたい。

 

『はい、よろしくお願いします』

『SBOってこの間のゲームやな? わしもフルフェイスマスク型のVR機持ってきとるからライブしちゃう?』

 

 と、話に入ってきたのは今も沖縄にいるはずの花崗。

 SBO内はまだレイドイベント中。ライブは二十四時間参加可能。

 また星光騎士団でライブをするか、という話になった。

 フルダイブ型なら、淳も声を出して歌うことができるから。

 

『自分もログインできますが、衣装製作もあるので21時から一時間程度なら大丈夫です』

『僕も一時間くらいなら大丈夫~。ゲームの中でもライブできるの楽しいよね。珀先輩とライブできるの楽しみぃ~♡』

『21時からっすね! 了解です!』

『自分もログインできます』

 

 なんと、七人全員集合決定。

 ゲームの中でもみんなで練習しよう、と言ってくれるのが本当にありがたかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 夜、21時。

 ゲームにログインすると綾城――バアルからメッセージが届く。

 

『ファーストソングの第三区画に星光騎士団のギルド本部をいただいているので、そちらに集合しましょう』

 

 仰天した。

 今の拠点は第二の町『セカンドソング』の宿屋だったけれど、転移陣で慌てて『ファーストソング』に戻る。

 第三区画は六月のアップデートで追加された区画だ。

 星光騎士団の名前でギルドを設立し、本部まで購入しているなんて。

 建物はゲーム内の不動産で一室なら100,000ソング。ソングは通貨。

 一軒家ともねれば500,000~1,000,000ソング。

 それをポンと出せるなんて、と驚きながら目印の星光騎士団の旗を見つけた。

 大きな白い煉瓦作りの四角い、三階建ての建物。

 ごくん、と息を呑み、玄関ドアをノックすると「はーい」と中から人の声が聞こえてきてドアが開く。

 

「お。……誰……?」

「あ、音無です」

「ふーん」

「えっと……宇月先輩……?」

「そお。え? よくわかったねぇ?」

 

 ドアを開けたのは黒髪ロングの美少女。

 俗にいう姫カットで、装備も初期装備。

 だが、その声は宇月そのもの。

 レイドライブの時のリアルな姿ではなく、アバター。

 

「可愛いです。でも宇月先輩……」

 

 と、言いかけて頭の上のアバター名を見ると『ミオ』。

 本名はどうかと……と、言いかけたが女性プレイヤーでも違和感はない名前。

 まあいいか、と一度目を閉じて。

 

「プレイヤー名の、ミオ先輩とお呼びしますね。えっと、ミオ先輩、他のみんなはもう来ているんですか?」

「珀先輩しか来てないよ。ほら、早く入りなよ」

「は、はい」

 

 招き入れられると魔導士装備の長いマント姿の綾城珀もといプレイヤー名バアル。

 大きなテーブルの一角で足を組み、優雅に紅茶を嗜んでいた。

 シーナが入室するとゆっくり瞳を開くバアルは、ティーカップをソーサーに載せて柔らかく微笑んだ。

 王子様かな?

 

「喉は大丈夫?」

「はい、あ、いえ……リアルの方の喉は……全然」

「そう……。僕もあまり声変りの時に症状がなかったから想像がしづらいな。なんにしても、一生声が出ないことはないのだろうから、よくなるまでお医者さんの言うことをよく聞いて、大事にしてくださいね」

「あ、ありがとうございます」

 

 どうぞ、と椅子を引いてくれたのでありがたく座ると髭のある老紳士執事が「アールグレイです」と微笑んで紅茶の入ったカップを差し出してきてギョッとする。

 誰、と思ったらバアルがにこやかに「オプションの執事。屋敷とスケジュールの管理や雑務をしてもらおうと思って」とのこと。

 ちなみに名前はセバスチャンさん。

 それを聞いて、バアルに「あの、この建物どうやって購入したんですか?」と聞くとなんてこともないようにバアルに「凛咲先生と栄治先輩と一晴先輩が運営にかけってあってくれたんだって」とのこと。

 ひょえ、と震えた。



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