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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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実行力を持ったオタク


「地域を蔑ろにはしていないので、大丈夫だと思います。でも、収入減っちゃうのはこれから入ってくる新人にはきついかもぉ」

「そうですね。地域貢献は引き続きやっていこうと思っていますが……」


 宇月にとっては卒業後のことだ。

 複雑そうにしているけれど、事実上関係あるのは淳。

 先輩たちがわざわざ出向いてまで忠告してくれるということは、相当に減る可能性が高いのだろう。

 東雲学院のアイドルは基本的に複数の素人が“学院”という“事務所”の後ろ盾の下、プロになるために努力して成長していく。

 しかし西雲学園は既存の芸能事務所に所属するアイドルが通う。

 正直そこに手を入れても、青田買いはできない。

 西雲学園のアイドルのために、Dancing(ダンシング) Link(リンク) Production(プロダクション)ができるのは、有限の仕事を確保して彼らに回すこと。

 当然ダンリン自社のタレントにも回さねばならないだろうが、なんと来年度から東雲学院芸能科に回っていた分の仕事を確保して、西雲のアイドルが所属する事務所に流すらしい。

 学生セミプロにはかなり渋いことになるだろう。


「ダンリンは大手ですからな。そういう手回しが上手いのです。手練手管といいましょうか。春日芸能事務所も新参者ですからな、自社関係以外は難しいようでして」

「もちろん、そこまでのことは東雲学院側も望んでいないというか……強要はできませんし。春日社長のご厚意で仕事の依頼が増えていたのは存じています。今は……綾城先輩も卒業しましたし」

「そうだね。はーくんは本当頑張ったよ。今年の星光騎士団も頑張ってたけど」


 一応フォローはしてくれたが、宇月にはかなり重い一言だっただろう。

 心配してチラリと見たが、おくびにも出さないあたりさすがである。

 しかし、そういうことならば来年の夏の陣よりも今年の冬の陣はより重要になってくるだろう。

 綾城のおかげで星光騎士団はかなり知名度の高いアイドルの一角に近づいている。

 だが、やはりプロアイドルに比べると仕事の幅は“学生”は少ない。

 当然のことだけれど。


「まあ、この情報をどう活かすかは今のリーダーさんに任せるよね。ジーくんははーくん並みに忙しくなるだろうけれど、それプラスだからお兄ちゃんたちは心配なんだよね」

「ああああ、ありがとうございます……! こ、光栄です! ……必ずこの情報を活かして星光騎士団をより高見に導きたいと思います」

「真面目すぎる」

「重く受け止めすぎだよね」


 なんなら床に片膝をついてガチ目に言うので神野がややドン引きである。

 仕方ない。

 淳にとっては神に等しい人なので。

 綾城と同じようなアイドルにはなれないけれど、星光騎士団の新しいリーダーとしてこれ以上評価を落とさないように尽力しなければ。

 神野と鶴城がわざわざ教えに来てくれたのだから、それを無駄にしないためにも新たな仕事の形を考えた方がいいかもしれない。

 つまり――営業である。

 

「つまりこれはドルオタの願望を叶える営業をしてもいいという思し召し」

「それはなんか違くない?」

「ちょうどファンとなにかしら交流ができたらと思っていたんです。人が集まるところにお金もまた集まりと申しますし、定期ライブでファンとアイドルの交流会をすべきではないでしょうか? 握手会もここ数ヶ月やっていませんし、安全面を考えてそれとはまた違うような……SBOの中ならそういう交流会もできるという話だったのに、結局スケジュールの関係でなかなか実現しませんでしたし」

「まあ、その辺りは今考えなくてもいいんじゃない? 確かにファン交流は減り続けているし、ゲーム内でやるのは安全性も高いからいいと思うけれど」


 じゃあいくつかオタク心を擽るイベントを企画書にして提出すればいいのか。

 コラボカフェも聞いたばかりなので大変興味津々である。

 ゲーム内でのコラボカフェをやるには、料理人職を取らなければならないが、なること自体は簡単だ。

 アイドルが作るケーキや、アイドルが淹れたお茶を嗜みながらファン同士交流できたら最高だろう。

 正直アイドルと会話するとか触れ合うとかは恐れ多くてできない。

 ガチ恋勢でもなければそういう考えのオタクが多かろう。

 もしくは、アイドルが作ったケーキの販売を、アイドル自身に行ってもらうのがいいだろうか?

 直接手渡され、三十秒でも会話ができたら……。


「あとはやっぱりチェキですよねぇ。一緒にチェキ撮れたらオタクとしては最高。アイドルが真横にいて正気でいられるかどうかが不安ですけれど、時間も短くて済みますし最高の思い出にもなりますし、俺としてはチェキ撮影会を推したい。ゲーム内の安全性の高さなら直接的ではないにしてもリアルの姿で参加できるのでゲーム内という非日常な衣装もリクエストできる感じにしたら色んな意味で嬉しいですし、リアルの姿に自信がない人や遠方な人も気軽に参加できていいと思うんですよ。アバターの作り込み要素も自由度高いですからね、SBO。まずはファン交流会でチェキ撮影会どうでしょう?」

「ああ、うん。いいのではないでしょうか。企画書があれば」

「じゃあログアウトしたら早速作ってこよう」

「行動力と権力のあるオタクに成長しておりますな」

「まあ狗央ってストッパーいそうだし大丈夫じゃない?」


 夢が止まらなくなっているドルオタ。



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