表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

478/553

赤逆の森へ(2)


「まあ、我々はアイドルについて勉強するほど時間が使えないので、淳がアイドルの勉強……という建前の追っかけを行ってくれるのはこちらとしても構わないのですが」

「建前になってなくない?」

「建前なのですから前に出さなければ建前にならないでしょう」

「そうなの? ……そうなのか」


 だそうで。


「響くんと鏡音くんもいい?」

「はい。弱い魔物がいるんですよね? じゃあ、引き続き歌の検証もできるので大丈夫ですっ!」

「オレも構わないですけれど……SBOってそんなにアイドルグッズ売ってるんですか?」

「すごいんだよ。リアルだと絶版になっているグッズや卒業済みのアイドルグッズも売ってるんだよ……! 俺が東雲学院芸能科にハマる前の東雲学院アイドルのグッズとか、SBO内の東雲学院芸能科公式ショップで再販されてるの! もう、お金がいくらあっても足りない……!」

「は、はあ……」


 もちろん、卒業生の中でも販売許可が出ている人だけだけれど。

 今はもうアイドルとは無関係な生活をしている人も多い。

 今更アイドルをやっていた、とバレるのも困る――という人もいるだろう。

 なので許可が出ている人のみ。

 それがどれほど希少か。

 当然お値段もそれなり。


「まあ、それはそれとして武具の修理はした方がいいと思いますけれど」

「う……。は、はい」

「じゃあ狙うのはダンジョンボスということでいいですか?」

「そうですね。一応宇月先輩たちに我々の行く先をメッセージに残しておくことにして……では、行きましょうか」


 周が宇月たちにメッセージを送ってから、六人で『赤逆の森』へと向かう。

 入り口が見えてくると、独特の緊張感が流れ始める。

 淳や鏡音は一度来たことがあるが、初めて『赤逆の森』にやってきた者は思わず背の高い木々を見上げてしまう。


「で……っっっっか……! なんか『○撃の巨人男』に出てきた森みたいだ。めちゃくちゃ赤くて目が痛くなるけど」

「本当に赤いですね。気味が悪い。……さすがに木以外は赤以外の色もあるようですが……」

「わあ! ……ええ!?」

「どうしました、響くん」

「あ、あ、あっ……で、でっかい恐竜!」


 柳が指差した方には、まさに恐竜。

 赤いTレックスのような魔物が、大きな足音を響かせながら森の奥に向かって歩いていく。

 その横ではステゴザウルスのような魔物。

 あのあたりだけ時代が太古。

 だが、逆側からは小さなリス……ではなく、巨大化したリス型の魔物が鳥を追いかけていた。

 上を見上げれば怪鳥。

 怪鳥の横には『井の中』にいた空飛ぶ魚型魔物。


「なんか……本当にたくさんのダンジョンの魔物が闊歩している?」

「どれ、ではダンジョンボス探しますか」

「見つけたら狩っていいんだよねぇ? へへへ、楽しみぃ」

「「「「………………」」」」


 プロゲーマー二人から放たれるのはなんとも言えない圧。

 歴戦の猛者……というか、これはアレだ。


((((絶対殺すマン……))))


 というやつだ。

 魔物の方が可哀想なやつだ。

 実際襲ってきたカバのような魔物を、鏡音がほとんどなにが起きたのか理解ができない速度で三枚に下ろした。

 血の匂いで寄ってきたようなTレックスも歌バフなしに鶉が全身膾斬りに仕上げて倒す。

 怖い。

 強すぎて怖い。

 本当に魔物が可哀想。


「レベル低いのしかいないなぁ」

「まあ、こんなものでしょう。あ、我々には気を遣わず、歌バフ検証を続けていただいて大丈夫です」

「あ、はい」


 と、言ってつかず離れずの距離で狩りを行う二人。

 この二人がいればもっとレベルの高いところでもよかったかも、と思わないでもない。

 先程二人が倒した魔物のレベルがあまり高くなかったのか、淳たちのレベルは特に上がらなかったけれど。


「えっと、それじゃあお言葉に甘えて……〜〜〜♪」


 柳は一番レベルが低かったせいか、それでも今のでレベルが上がったらしい。

 ビバ、パーティー経験値共有。

 ドシン、という足音と共にドードーのような姿なのに五メートルはありそうな陸鳥型の魔物が目を光らせて駆けてきた。

 柳の歌バフで付与されたのは[速度上昇LV2]。付与効果はなし。


「ぐっ、この曲は付与効果も出ないっ」

「上手かったけどね?」

「ええ、最近本当に歌が上手くなっていると思いますよ、柳くん。夏の陣から特に」

「え? ほ、本当ですか……!? え、えへへ……う、嬉しい。歌、あんまり自信なかったから……。レ、レッスン、ちゃんと身になってたんですかね」

「そりゃあそうだよ。俺も事務所のレッスンでだいぶ上手くなったって言ってもらえているもん。頑張れば頑張った分だけ上手くなれるよ」


 淳が柳の肩に手を置いてそう言ってやると、本当に嬉しそうにはにかむ。

 これは可愛い。

 さすが人気の元子役俳優。

 新たな一面を出していけば、きっともっと人気が出ることだろう。


「音無先輩、狗央先輩、ちょっと様子がおかしいです」

「え、どういうこと?」

「魔物が多すぎます(・・・・・)。この森は素材の宝庫として他のダンジョンとは違い、魔物は倒されたらすぐに“湧く”んですが、こんなに湧いているということは誰かが掃討レベルで狩りをしているのだと思います」

「考えることはみんな同じってことなのかな?」

「少なくとも高レベルのプレイヤーはあまりお金に困ってはいないはずなので、中位のプレイヤーではないかと。歌バフがあれば中位プレイヤーでもレベル90のダンジョンボスに太刀打ち自体はできると思いますので」


 確かに。

 SBOのいいところは、歌バフがあればどれだけレベルの高い魔物相手でも戦うこと、勝つことができる点。

 その下剋上が最高に楽しいのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ