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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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おバカたちのお披露目


 九月の定期ライブの目玉は学力向上委員会の底辺たちのライブ。

 五つのユニット『不名誉』『バッカ隊』『底辺』『学力ゴミーズ』『Nobisiro(ノビシロ)』。

 開場十時に一回目のライブ。午前の部を開催。

 午後三時にもライブを開催予定なので、こんな――虚無の顔をされていては困る。


「いやぁ、儲け儲け。想像以上の集客力〜。どう? 苳茉(ふきま)くん。物販の様子は」

「は、はい。学力向上委員会の底辺ユニット五つとも、グッズの70%が売り切れです。残り30%は缶バッチなどの量産品なので、売れ残った場合は通販分に回す予定ですね」

「いいじゃーん。みんなやっぱりバカが好きなんだねぇ」


 と、ご機嫌な宇月。

 学力向上委員会の底辺ユニット、なかなかの人気ぶりらしい。

 元々夏の陣のあとはお客さんが増加する傾向にあるのだが、人気の三大大手グループからランダムでコラボユニットに参加者がいたためか非常に面白おかしく見られているようだ。

 そして今回は宇月が苳茉を構い倒しているのが少々珍しい光景だろうか。

 理由は四月から星光騎士団に苳茉を迎えるため。

 宇月としては苳茉を星光騎士団に迎えることは、あまり歓迎できることではない。

 本人も「ちょっとねぇ」と言葉を濁していた。

 だが、現団長(リーダー)の淳が受け入れているので、それを尊重しようとしてくれているのだろう。

 星光騎士団の前団長として、苳茉を迎え入れる体制を整えようとしてくれている。優しい。


「MVの撮影は終わってるので、納入が終わったら確認して公式チャンネルに上がるんですよね? えっと……その日付って決まっているんでしょうか?」

「今のところ納入予定日が来週なんだよね。明確な日付はわからないけれど、学院の公式SNSで MVが上がる日は別途ご報告〜みたいに宣伝してもらいましょうか」

「そうだねぇ」


 という話を委員たちで話し合う。

 それを虚無の顔で聞いている底辺ユニットメンバーたち。

 見かねた周が「ほらほら、みなさん出番が終わったら自分たちのグループの方に戻っていただいて大丈夫ですよ。散ってください、早く」とぺっぺっ手を振る。むごい。

 ダンスも小学生レベル。

 歌詞も基本はひらがな。

 自分たちが勉強ができないアホですと言っているようなライブをやらされたら、そりゃあ虚無顔にもなるだろう。

 しかも、撮影した MVの歌詞のつけ方が下の方にひらがなで、と決まっているので余計。

 だが受験勉強をする小中学生向けになる予定なので、読める人は多いに限る。


「じゃ、俺たちは出番まで出店でご飯食べようか」

「そうですね」

「あ、オレが買ってきます。(うずら)が来てるみたいなので、ちょっと会ってきます。買ってきてほしいものがあったらチャットルームに書いておいてください」

「鶉って……(まどか)くんのゲームチームの後輩?」


 柳が少し眉を寄せて聞き返す。

 それに対して不思議そうな鏡音は「そう」とあっさり返答。


「鶉くんってアイドルに興味ある人だっけ?」

「いえ、SBO歌姫&歌い手グランプリで歌う人を見ておきたいらしいです。SBOにもかなり入り浸っているみたいなのですが、リアルの方の歌を聞いてもバフになにも関係ないよ、って言ってるんですけれど……」

「へぇ……? 確かによくわからない理由、だねえ?」

「まあ、多分オレをからかうつもりなんだと思います。性格が本当にクソガキで」

「へ、へぇ……」


 なるほど、歳の近い先輩をからかう目的なのか。

 聞きしに勝るクソガキ感。


「でも、なんだかすごく、鏡音くんに甘えている感じがするね」

「そうなんですかね? 甘えられても困るんですけど」

「チームには鏡音くんよりも歳が近い人がいるわけではないんだろう? それじゃあお兄ちゃんとして甘えられているんじゃない? 構ってほしいんだ思うよ」


 と、言うと突然柳が「わかる〜。僕も淳先輩にめちゃくちゃ甘えたくなってるもん!」と言い出した。

 受験勉強を見てあげていた頃からだいぶ懐かれていると思っていたけれど、どうやら鶉は柳にとっての淳のような関係性をお望みなようだ。

 だが鏡音はとても嫌そうな表情。

 淳は妹がいるから兄属性というものがあるけれど、鏡音は一人っ子。

 なんなら結構叔母に甘やかされている。

 育ってきた環境が年上に見守られてきたようなものなので、年下への対応がわからないのだろう。

 懐かれても困る、ということ。


「来年は先輩になるのですから、歳下への対応の練習になるのではありませんか? 自分と魁星も一人っ子なので、後輩への接し方はあなたたちで練習したようなものですよ」

「そ、そういうものですか」

「来年には僕らも先輩、かあ……。なんかあっという間だね。そういえばもう九月も終わるんだもんねー。早いねー」

「そうですね」


 本当に、あっという間に二年も九月末。

 もう間もなく冬の陣。

 そしてFrenzy(フレンジー)のデビュー。

 来年の淳は星光騎士団の団長として星光騎士団を勝たせなければならないし、Frenzy(フレンジー)のリーダーとしてFrenzy(フレンジー)を勝たせなければならない。


(綾城先輩もこんな気持ちだったのかな)


 どちらのグループもリーダーとして思い入れがある。

 だから、どちらのグループも優勝させたい。

 複雑だけれど腹はもう決まっている。



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