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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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魁星の安否確認(1)


 翌日、ランニングをなしにして、朝食を準備だけして自転車で学院に登校。

 毎日行きすぎて今が夏休みということをまったく実感できないが、そろそろそれにも慣れてきた。


「朝から暑いなぁ……」


 一応まだ早朝のはずなのだが、まったく涼しくない。

 太陽が出てくると、陽射しも相まって一気に気温が上がる。

 項垂れそうになりつつ駐輪場に自転車を置いて、駐車場に向かうと周と宇月と後藤、鏡音が揃っていた。

 今いないのは柳と魁星。

 魁星はここ一年、淳を見習って早朝ランニングをしているはずなのだが。

 まだ集合時間前なので、きていないのは別に不思議ではないが魁星は何度かギリギリ遅刻経験があるので心配ではある。


「おはようございます。暑いですね、今日も」

「本当だよぉ〜。暑すぎてムカつくぅ〜。夏は八月で終われよぉ〜! 僕夏大嫌い〜……」

「自分も大好きな秋がなくなりつつあるので夏が嫌いです」

「自分も……」

「オレも夏嫌いです。PCがすぐ熱くなって、エアコン代が嵩みますし。夏の暑さのせいで何度PCがエラー起こしたことか……!」

「「「「……………………」」」」


 配信者&ゲーマーの強目の怒りに誰もなにも言えない。

 これは切実かつ正当な怒りすぎて。


「でも実際夏の電気代しんどいですよね」


 沈黙が気まずくて周が話題を繋げる。

 電気代の高さは確かに本当にしんどい。

 一人暮らしを一年経て、周がだいぶ庶民感覚を身につけている気がする。


「ですよね。国も電気代が上がるのがわかっているんですから、援助なりなんなりすべきですよね」

「ですよね!」


 周、だいぶ庶民に染まっている。

 いいことだ。


「おはようございますー」

「おはようー」


 次にやってきたのは柳。

 校門のところに車がさっていくのが見えたので、マネージャーさんに送ってもらったのだろう。


「凛咲先生も来ないね……」


 ぽそり、と後藤が口にする。

 車の運転は凛咲先生の担当。

 そういえば……と、全員が微妙な表情で沈黙する。


「凛咲先生が時間勘違いしてる可能性ないよね?」

「で、電話してみますね」


 いつもよりも早い時間だし、そのことは昨日ちゃんと伝えておいたはず。

 だが連絡が通じない。

 嫌な予感で暑さとは別の汗が噴き出す。


「ごたちゃんちの運転手って呼べる?」

「呼ぶ?」

「う、うーん……凛咲先生がこんなに遅いの初めてだし、一応呼んでもらえるとありがたいかも」

「了解。一応バス運転できる人派遣してもらうね」


 さすが後藤、家にすぐ動ける運転手がいるのか。

 こういう時、お金持ちの知り合いがいるのは助かる。

 だが、始まる前からだいぶ不穏だ。


「あれ、花房センパイもいなくない?」

「花房先輩ならまだ来てないけど、あの人結構いつもギリギリだし」

「あー、確かに。暑いとあんまり起きられないって言ってたけど、ちゃんとエアコン使ってるのかな、あの人。なんか前に『電気代もったいないから夜はエアコン消して寝る』って言ってたから心配だなぁ。まだ、エアコンつけっぱなしで寝ると喉乾燥して朝痛くなることあるから、夜寝る時はエアコンつけない派なのはわかるけれど」

「え、魁星って寝る時エアコンつけてないの?」

「え? そう言ってましたけど……」


 思わず周と顔を見合わせる。

 魁星、わりと喉が強い。

 エアコンをつけて寝て、朝喉が痛くなるということはないだろう。

 なんなら今まで会った誰よりも喉が強い。

 声変わりで喉がくたばった経験がある淳にとっては羨ましい限り。

 だが、それと夜にエアコンをつけないのはちょっと話が違う。


「魁星にも電話してみますね」

「よろしく」


 周も嫌な予感がしたのか、スマホで魁星に電話をかけてみる。

 こちらも応答なし。

 呼び出しはしているのだが、出ない。


「熱中症になってないよね……?」


 不安で口にした。

 人間、寝ている時にもコップ一杯分の汗をかくと言われている。

 夏場などより大量の汗を意識のない時にかくので、熱中症になりやすい。

 意識のない状態での熱中症は対処が遅れがちになり、非常に危険。

 予防策としては、枕元にすぐ水分を補給できるようにしておく、体温を下げる効果のあるタオルケットやシーツなどの夏用寝具を活用する、エアコンと扇風機を活用する――などだ。

 一人暮らしでカツカツ生活をしている魁星は、その中でエアコンを削っている。


「魁星の家に行ってみます。ちょっと心配なので」

「そうだねぇ。あいつ電気代ケチって熱中症になってそうだもんねぇ。これ、保冷剤持っていきなぁ?」

「ありがとうございます」


 クーラーボックスから凍った保冷剤をミニタオルに巻いて手渡される。

 対応が神すぎないか?

 受け取って、周と頷き合って校門の方へ向かう。


「そういえば魁星の家を知っているの、我々だけでしたね」

「そうだよー。でもなんか一年ぶりくらい? 行くの」

「そうですね」


 魁星も周も学生寮だ。

 周は少し、他の学生よりは広めの家賃が絶妙に高い部屋を借りているが魁星は格安物件。

 学生寮も一応家賃が均一ではないので。

 “人気アイドル”と“底辺アイドル”と“まだアイドルではない者”と生活基盤を選べることで、向上心に繋がるようにとの配慮だ。

 向上心のない者は結局永遠になにも変わらない。

 魁星が一番家賃の安い寮にいるのは、お金を貯めたいからだけれど。


「魁星ー、起きているー?」

「魁星ー、迎えに来ましたよー」



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