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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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関係性ドルオタ歓喜


 とりあえずスムーズとにはいかないがリハーサルは無事と言っていいのかわからないながらも終わり、翌日は早朝リハーサルで七時入り。

 柳と鏡音が「七時!?」「早くないですか?」と驚く。

 確かに通常十時開演なら八時入りで軽いリハーサルと着替えたり化粧したりの準備を行う。

 七時は相当に早い。

 スタッフ並みの早さ。

 というか、演者がその時間だと、スタッフはもっと早いのでは?

 何時起きだ?

 

(((えぐ……)))

 

 動き回るスタッフの顔にはすでに疲労が滲んでいる。

 ちょっとこき使いすぎではないか?

 イベント会社の人も大変だな、と眉尻を下げて眺めてしまう二年生ズ。

 

「七時はつらい……六時起きか……それならもう今夜は徹夜した方がいいかもしれない」

「ドカて〜〜〜〜ん?」

「う……すみません。寝ます……ちゃんと」

 

 これはゲーマーというよりも配信者の思考。

 若いから無理がきくとはいえ、さすがにまだまだIG夏の陣の疲労が残っている。

 星光騎士団のメンバー全員で格ゲー練習漬け、配信やりたがりの鏡音をどう休ませるかで気を揉んでいるほど。

 ただ鏡音の場合、配信活動が副業のような側面もあるので無理に止めることはできない。

 こういう活動をしていると、配信も大事な活動の一環だとわかるから。

 西雲学園側のアイドルは、東雲のアイドルたちに会釈だけして早々に控え室に戻っていく。

 次の予定は〜、という声がしたので、三グループとも仕事があるのだろう。

 星光騎士団のメンツはあとは帰るだけだ。

 

「魔王軍と勇士隊はどうするよぉ〜? うちは先生が送って行ってくれるけれど」

「うちも今日は解散だな。明日の集合が朝七時っつーと、なあ?」

「だよねぇ……」

「うちも一度解散だな! 御上はなにか予定があるんだったか?」

「は、はい。演奏スタジオに……用があって……」

 

 そういえば最近千景と話をしていない。

 夏の陣の時もいっぱいいっぱいでろくに顔を合わせることもできなかった。

 他にも色々、本当に色々あったけれど。

 

「演奏スタジオって軽音部?」

「あ、は、はい。えっと、一年生の、えーと……江花満月(えはなみつき)くんが……」

 

 おや、と顔を覗かせると、頬を好調させて目を輝かせつつ挙手する江花。

 確か、バンドをやりたいとか言っていた子。

 少し気怠げな口調の子だった記憶。

 

「御上センパイが! 曲を作ってくれるって!」

「そうなんだ? よかったねぇ」

「そうなんです! 軽音部のセンパイたちが本当にバンド組んでくれるって言って!」

「え! すごいね! よかったね! やりたいって言ってたもんね」

「はいっ」

 

 あんなに怠そうに話していた子が、こんなにもハキハキと話すとは。

 チラリと軽音部部長の麻野を見ると、鼻の下を指で擦りながら「へへ」と笑っている。

 そうか、軽音部としても“やりたいこと”だったのか。

 江花のやりたいことと、軽音部のやりたいことが合致した結果だろう。

 

「俺様がギターで!」

「自分がドラムですよ」

「作詞作曲を担当いたします」

「すごーい!」

「お披露目とかいつの予定なんですか?」

「まだ目処が立ってないぜ!」

 

 そんな力強く。

 胸を張る麻野に、江花が「そうなんですよね〜……」と肩を落とす。

 魔王軍の四天王と勇士隊の一年生が仲良しになっているのは、ドルオタには大変美味しい情報である。

 なにかいいお披露目の場があればぜひ呼びたくなってしまう。

 オタクなので。

 

「普通に考えたら定期ライブだけど、せっかくだから全然東雲学院のこと知らない人たちにも見てもらいたいよねぇ」

「東雲学院芸能科ドルオタとしては定期ライブでお披露目してもらったら死ぬほどエモで横転からの号泣ですけどね」

「泣くの……?」

「泣きますね」

「でもそれならなんかこうめっちゃサプライズにしてぇよなぁー」

「サプライズ、いいですね!」

 

 公表のやり方はこだわりたい気持ちはわかる。

 宇月が「いつ頃発表まで漕ぎ着けそうなのぉ? 御上くんが作詞作曲するって言っても練習に一ヶ月はかかるよねぇ?」と首を傾げた。

 麻野が首を傾けつつ「そうなんだよなぁ。今から練習すると十月だろ? めぼしいイベントもねぇんだよなぁ」と腕を組む。

 確かに。

 大きなイベントが多く、初の試みであるバンドアイドルのお披露目に程よい中規模イベントがない。

 うーん、と悩んでいるところに後藤が「まあ、そのあたりの話はここでなくてもいいのでは?」といつの間にやら装備したSDに話させる。

 

「それもそうだな。ま、そういうことで俺様たちは学院に帰るぜ」

「俺は普通に帰るけどな」

「おう、また明日な」

「話し合うのはいいけど、遅刻するなよ。麻野」

「わあってるよ」

 

 茅原に注意されても江花と一緒にウキウキしている麻野。

 宇月が「えー、でもなんか麻野のアホがあんなに後輩可愛がってるとこ初めて見た~」と目を丸くする。

 確かに、誰にでも噛みつく麻野のあんな楽しそうに後輩と話す姿は見たことがない。

 

「これは関係性ドルオタ大歓喜案件」

「わかります……!」

「なに? 関係性ドルオタって。新しい用語ポンポン出るのこわ……」



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― 新着の感想 ―
バンド組みたいと言ってたのはエピソード375,376の魔王軍1年果林トウラ君だったと思うのですが、別エピソードありましたっけ? 軽音部部長麻野(ギター)部員果林(ギター)に江花(ドラム)が加わった、で…
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