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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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二年目夏の陣、最終日(10)


 数時間後、ついに優勝決定戦に決着がつく。

 ステージに上がるように促されると、そのステージに残っていたのはBlossom(ブロッサム)

 これでBlossom(ブロッサム)は殿堂入り。

 今年のIG冬の陣から出場停止……名誉出禁である。

 メンバー全員の穏やかな感想と、準優勝に輝いたLethal(リーサル)が先に賞品と賞金を渡された。

 改めてBlossom(ブロッサム)にインタビューがされ、賞品と賞金の贈呈と「殿堂入りでーす。二度とIGには出場できませんが実力者として永遠に名前が刻まれますよ」とのこと。


「おめでとうございます〜」

「おめでとうございます!」


 四位以上のグループに混じって淳たちも心の底から称賛と拍手を贈る。

 こうして、Blossom(ブロッサム)は伝説を残して宇月美桜が団長(リーダー)の星光騎士団の夏の陣は終わった。

 色々とあるらしいので、翌日には「リーダー変更は学校始まってから書類申請すればオケっ」と言われて了解する。

 ちなみに淳と宇月がホテルに帰ってから各々の部屋を覗いたが全員泥のように眠っていた。

 淳もすぐに寝たけれど、去年ほど疲労が蓄積していなかったので翌日いつも通りに目を覚ますことができたのでランニングした。


「やっぱりクーラーが効いてたのがでっかいよねえ」

「絶対それ。今年の夏の陣、割と涼しかったよね。アレどういう原理なんだろう? 屋根はあるって言われてたけど、ガラス張りで陽射しは普通に厳しかったよね。それなのにずっと程よく暑いっていうか、夏ってこういうものだよね、っていうか。最新技術って言われてたけど、お客さんも熱中症で倒れた人もいなかったらしいし、すごいね」


 後藤も大絶賛の今年の会場設備。

 去年は例年の異常気象、猛暑で体力を相当に削られていたのだ。

 それが改善されて、演者はパフォーマンスに集中できる環境になったといえる。


「あの施設の冷房、うちの学校にもほしいね。年々暑くなるんだもん」

「あー、あると本当いいねぇー。でも絶対目ん玉飛び出るほど工事費用とかヤバいんだろうなぁ〜」

「それは絶対そうだよね。でも冬場とかもほんのり暖かい、とかだとライブもしやすいと思うし」

「だよねぇ。でもそういうの学校に言ってなんとか導入まで持ってってくれるもんかねぇ?」

「ダメ元で?」

「東京ジャポニーズゲームショーの会場にも導入してほしいです」

「あー、ね。世界大会だもんねー」

「はい」


 朝の話題は今回の会場の冷暖房設備。

 実際そのくらい素晴らしかった。

 今回の設備が広まれば、夏のイベントごとは相当増える。

 熱中症患者も激減するだろう。


「まあいいや。それじゃあ明日以降のお仕事の話するよぉ〜。直近でデカいお仕事は二十三日から二十五日にある『四方峰町アイドルフェス』かねぇ。九月は定期ライブだけだけど、十月は『SBO歌姫&歌い手グランプリ』と『東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会前夜祭出演』。ゲームショーはドカてん抜き。ねぇねぇ、ナッシー、四方峰町アイドルフェスはリーダー任せていい〜?」

「はい。頑張ります」


 要約すると今月末にある四方峰町アイドルフェスから星光騎士団の新リーダーとして働け、ということだ。

 Frenzy(フレンジー)の方はデビューに向けた色々なジャケットやら宣伝用のアレそれやらグッズ用のアレやこれやなどの撮影が中心になりつつある。

 追加曲の練習も始まってはいるものの、来年の夏の陣に向けて余裕は少し出てきていた。

 まあ、練習が鬼畜なのは変わらないけれど。

 それに比べると星光騎士団の新曲は新入生が加入してきた時に『全員分』と『新入生用』の二曲だけ。

 今回は千景の趣味で作った曲を一曲いただいたけれど、曲を外注しているグループは予算的にも二曲が限界だろう。

 去年は花崗(みかげ)や後藤が時間を縫って数曲作ったが、本人たちが「これ星光騎士団っぽくなくない?」「というかシンプルに恥ずかしい」と封印された。

 雛森日織(ひなもりひおり)という超量産型がいたこともあり、星光騎士団用ではなく東雲学院の他のアイドルに提供されたそうだ。

 淳たちも曲作りは多分無理なので千景に外注するかもしれない。


「じゃあ副団長は狗央くん……」

「はい。謹んで承ります」

「はあーー……先輩たちから引き継ぎ、かあ……なんか、本当に終わっちゃったんですね……」

「そりゃそうだよぉ。来年はナッシーたちがドカテンたちに引き継いでいくんだよぉ。新しく入ってくる加入者たちに、ドカてんたちが引き継ぐしね。そうやって繋いでいくのが義務なの。頑張ってねぇ」

「……はい。頑張ります」


 まだ離れてしまうわけではないけれど、やはり宇月と後藤とは一緒に過ごした時間が長い。

 それがあまりにも色々な感情を揺さぶる。


(これ卒業式、泣くなぁ……)




 ◇◆◇◆◇




「そういえば四方峰町アイドルフェスってなにやるの?」


 夏の陣が終わってから数日。

 明日から始まる四方峰町アイドルフェスに向けて、荷物を整理している淳と周のところに魁星が近づいてきた。

 そして唐突にそんなことを聞いてきたので、淳と周が一瞬無言になって真顔になる。


「え……なんかまずかった……? 聞いちゃダメだった?」

「魁星……あなた、最近事務所に仮所属して忙しそうなのは致し方ないと思いますが……一度しっかり説明したことを、どうしてそうも綺麗に抜け落ちてしまうのですか」

「え……説明……あったっけ?」

「魁星……」


 頭を抱える淳と周。

 魁星、春日芸能事務所に仮所属し、新グループのリーダーに任命されて忙しくなっているのはわかるがだいぶ……アレだ。



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