表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

439/553

二年目夏の陣、最終日(9)


 不安が広がりながらも舞台裏のモニターを見上げた。

 舞台裏モニターには音声こそついていないが、リアルタイムでステージの上の進行役が話している声が聴こえてくる。

 出場グループの面々が、静まり返ってモニターに注視するこの瞬間の緊張感は言葉にならない。


『結果は――Lethal(リーサル)! 星光騎士団、ここで無念の敗退です!』


 客席からの歓声と、舞台裏での盛れる様々な声。

 魁星が「えっ」と予想外とばかりの声を漏らしたが、周も淳もモニターを見上げたまま動けない。

 腰に手を当てていた宇月が少し長めの沈黙ののち「おっし、帰るかぁ」とどことなくすっきりした顔で振り返る。


「お疲れ、みんな」

「――お疲れ様でした」

「次は冬の陣だからねぇ〜。Blossom(ブロッサム)が優勝したら殿堂入り。今年の冬の陣には出られなくなるから〜、新しい団長(リーダー)のお手並み拝見かな〜?」

「……頑張りますね」

「帰る空気になってるけど別のステージで順位決定戦やるからねー。ほらほら、気合い入れ直してよぉ?」

「「「はっ……!」」」


 淳と後藤、あまり興味のなさそうな鏡音はともかく魁星と周と柳は順位決定戦を完全に忘れていた。

 荷物はそのままに、スタッフの誘導で会場内にある室内ステージの方に移動する。

 一応順位決定戦にもお客さんが入るようにはなっているが、お目当てのアイドルが来るかどうかは賭けなので出入りは完全に自由という仕様。

 映画館のような作りにはなっているが、完全自由席であることと、会場内で購入したものならば飲食オーケーなので休憩所のように使われている。

 相手はBブロック準決勝で敗退したアイドルグループ。

 そちらの勝負はなんなく勝利を収めて、星光騎士団は五位という順位を確定させた。

 シード権は四位からなので、来年は通常と同じとなる。

 とはいえ今年もシード権返上しているので、たいして変わり映えもないが。


「優勝決定戦ののちにステージで表彰式がございます。六位以上にはステージで優勝者グループを祝福する権利がございますが、参加なさいますか?」

「僕する〜! ごたちゃんたちはどうする?」

「自分は帰る、かな……疲れた……」

「俺は残ります! 絶対にBlossom(ブロッサム)が優勝すると思うので、直接間近でお祝いしたいです!」

「俺は……俺も帰りたい……ホテルで寝たい……」

「自分も少し作業したいのでホテルに戻ります」

「僕も寝たいです……ごめんなさい」

「オレも寝てから練習したいので」

「「鏡音は休みなさい」」

「う……」


 結局残って優勝グループを祝いたいのは宇月と淳だけらしい。

 強制されるものではないし、彼らがこの三日間長い時間全力で戦ってきたのは知っているので休みたいというのなら休ませてあげたいと思う。

 ただし鏡音は寝たあとすぐに格ゲーの練習をしたいとは何事か。

 どうにも根っからのゲーマー、配信者が出ている。

 

(世界大会で仲間の足を引っ張りたくない、って気持ちはすごく伝わってくるのだけれど……)

 

 淳も少しだけVR格ゲーは触ったことがあるので、鏡音のやっている練習がどれほど大事なのかはよくわかるけれど。

 いや、実際現実の肉体がゲームの動きを真似できるぐらいに練習をしているのだから、本当にすごい。

 それでも満足せずに努力する鏡音は、きっと世界大会でも活躍することだろう。


「さぁてと、僕らは優勝決定戦が終わるまでのんびりするかぁ」

「そうですね。ご飯食べます?」

「いいねー。お昼食べた気がしなかったし。ちょっと早いけど夕飯食べよっかぁ」


 という感じでスタッフが差し入れとして持ってきていた屋台のケータリングを漁りに向かう。

 まだほかほかとしているところをいただき、のんびりと控え室の一つでもぐもぐし始める。 


「リーダーの引き継ぎだけどさあ」

「はい。そういえば夏の陣が終わってから儀式的なものもなくヌルッと代わりますよね」

「そうそう。あんまり大々的にやると燃えるんだよね、リーダーの代替わり。っていうか昔魔王軍が大々的なリーダーの代替えイベントやったら石とか空き缶投げ込まれて大変だったらしいよ。学生セミプロ相手にそんなに熱狂的な人いるぅ? とか思ってたけど、自分が応援して育てた、みたいな痛い勘違い系が昔は今よりも多かったから起きたみたい。アタシが育てたのに学校と一緒にグループまで脱退するなんておかしいー、みたいな」

「ひえ……」

「それ以来三大大手グループのリーダーの代替えはしれっとやることになってるんだ〜。まあ、今の時代ならそんなこともないかもね。ナッシーがやりたいなら今年からやってもいいけど……」


 言葉を濁す宇月。

 今から、イベントを準備する?

 笑顔のまま、お互いを眺めて沈黙を選ぶ。


(無理。宇月先輩のことも後藤先輩のことも大好きだけどそれはそれとしてイベントを一から企画して会場を教えて告知して人を集めるとか無理。しんどすぎる)

 

 まして今、特に疲れ果てている状況では。

 体力も気力も持たない。

 多分夏の陣のあとにそんなイベントを行う体力気力は歴代にもなかったはず。

 しかも頑張って企画しても炎上する危険性があるなんて聞いたらそりゃあどこもやらなくなる。

 

「あ、でもそれならSBOの中で簡単なライブやりますか」

「あ、それはいいかもねー。星光騎士団だけじゃなく、カラオケ機能で好きな歌歌えるし」

「星光騎士団以外の曲歌うのも楽しいですもんね」

「うんうん」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ