二年目夏の陣、最終日(6)
「さあ、次のインタビューはパフォーマンスを終えたばかりの星光騎士団に来ていただきました~~~! いらっしゃいませ! お疲れさまでした!」
「お疲れさまでした~! 星光騎士団、団長の可愛い担当宇月美桜だよぉ♪」
「お疲れ様で~す。同じく星光騎士団、第一部隊ドルオタ担当音無淳です」
「まだ結果は出ていませんが、感触としてはいかがですか?」
インタビュー室にいたのは去年とは違うアナウンサー。
質問に対して宇月は「そうですね、去年は綾城珀先輩や花崗ひまり先輩がいたので準優勝という好成績を残せましたが、今年は僕みたいな星光騎士団のリーダーにしては頼りない騎士なので」とかなり謙虚な言い方をする。
いや、本心からだろう。
別に宇月の人気が低いわけではないが、去年の三年生二人の人気が高すぎただけで。
あとはやはり謙虚な姿の方が、ウケがいいというのもある。
宇月のような可愛い容姿でこんなふうに儚げに答えられると、応援したくなるのが男の心理。
これらも計算。
恐るべし宇月美桜。
「やはり星光騎士団としても Blossomに優勝してほしいですか?」
これはなかなかに失礼な質問。
新人アナウンサーらしいが、平然と聞いちゃうのか、それを、出場者に。
顔が引きつらなかったか心配に感じる程度には、今年は余裕がある。
「え~~、それはもっちろーーーん! 僕、珀先輩だぁい好き♡」
が、そんな失礼なアナウンサーに神対応の宇月美桜。
カメラが回っていなければ言葉の拳でボッコッボッコだろうな、と思いつつ笑顔を崩さず話の続きを見守った。
「でも僕らも可愛いしカッコいいし騎士だから負けるつもりはないけどねー。言うてブロックが違うから、もし戦うことになっても去年同様決勝戦だけどぉ。でもステージで卒業した先輩に会えるのは普通に嬉しいじゃん? 会いたいし頑張っている姿見せたいし見てもらいたいじゃん~? そんで褒めてもらいたいじゃん? 僕とごたちゃんにとっては今年が最後の夏の陣だしねぇ」
「え? そうなんですか?」
あ、この人星光騎士団のシステム理解してない人だな、と悟って一層笑顔が優しくなる。
星光騎士団は学生セミプロ。
学生なので三年生は卒業するし、新しいメンバーが加入してくる。
だから毎年メンバーが違うのだが、この人はそんなことも知らないのだろう。
生暖かい眼差しで淳が眺めていると、宇月が笑顔で「僕ら学生だからねぇ」とかなり簡潔にアナウンサーへ答える。
東雲学院芸能科のアイドルグループはみんな同じシステムで入れ替えがあるのだが、このアナウンサーは知らなくて大丈夫なのか。
「学生でIG夏の陣出場なんてすごいですね! がんばってください!」
「お。………………はぁい、ありがとうございましたぁ。お兄さんもあとで怒られてくださぁい♪」
「え?」
さすがに最後にはブチ切れた。
まあ、これだけ失礼な物言いをされたら仕方ない。
カメラが止まり、ディレクターが「オーケーです」と合図を出した瞬間宇月が笑顔を消す。
「ディレクターさぁん、さっきのインタビューしてきた人にうちの学校の他の参加グループにも似たようなこと言わないように注意しておいてくださぁい。カメラでは言わないでおきましたけどお、うちの学校のこと知っている人から見たらマジ炎上モノでしたよぉ? 今の」
「はい! そ、それはもう! 申し訳ありません!」
「僕はいいけどねぇ。魔王軍の麻野だったら終わってたねぇ?」
「ああ、麻野先輩だったら終わってましたね」
今回不穏な空気を感じて始終黙っていたが、もし今のインタビューを受けたのが麻野なら「え? そうなんですか?」を聞いた瞬間「は? オメー、うちの学校のことなんにも知らねーのに俺たちにインタビューしてやがんのか?」といい出していたことだろう。
下手したら
真横にアナウンサーが立ったままなのに、あえてディレクターに告げるのは「もうこいつと話したくない」というアピール。
察したディレクターがペコペコ頭を下げるが、当のアナウンサーはなにが悪かったのかよくわかっていない。
ただ宇月が怒っていることと、下手したら炎上だった、という言葉に神妙な面持ち。
というか、もう炎上している可能性もある。
宇月が最後に冗談っぽくツッコミを入れたので。
「ナッシー、帰るよぉ」
「はい。そろそろ結果が出る頃ですよね」
「ね~。僕うっかり怒っちゃったからもしかしたらマジ炎上しているかもねぇ。あのアナウンサーさんイケメンだったし、ファンに怒られちゃいそう~」
「――そうですね」
そうか、アナウンサーさんにもファンがいる場合もあるのか。
いやこういう仕事をしていたら当たり前だが。
確かにあのアナウンサーのファン視点だと、宇月がキツイ態度を取ったようにも見える。
最悪フォロー入れておくかぁ、と呟く宇月について控室に戻った。
「勝った~?」
「はい、勝ちました。でも、勇士隊も負けたみたいです」
「勇士隊負けたの!? 今年の勇士隊が!?」
「まあ、相手が Blossomだったので……」
「あ、ああ……」
それは、となにか言いかけてやめた。






