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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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二年目夏の陣、初日(7)


「「王子様かよ!!」」

「え、なにが……? え……? 怖……なんですか?」

 

 一曲終えてから舞台袖に戻ってくると、宇月と魁星にそう叫ばれた。

 柳が「わかるぅ」と宇月と同じ間延びした声で同意してくる。

 意味がわからなくて首を傾げる淳。

 後藤と周まで頷くので、やはりそれは淳のことらしい。

 

「レッスンでもそんな王子様オーラ出してなかったじゃん!? どうしたの、急に! 後ろから見ててビビったんだけどぉ!」

「ええ? いやいや、俺は星光騎士団の騎士なので、王子様は踏襲してませんよ?」

「淳くん最近部活行けてないって言ってたけど貴族部の部活効果出てる?」

「部活本当に行けてないので違うと思いますね」

 

 そのままスタッフに誘導されて、パフォーマンスが終わったグループの控え室へ。

 結果が出てからホテルに帰ってもよし、負けたならそのまま帰宅してもよし。

 もちろん星光騎士団としては負けるつもりがないのでapplause(アプローズ)のパフォーマンスが終わるのを控え室で待つ。

 モニターを眺めながら聴こえてくる歌声に目を細める宇月。

 やはり新曲。

 しかもやはりめちゃくちゃ上手い。

 さすが優勝候補の一角。

 

「上手いですねー。曲もさすがバンド系アイドル。かっこいー」

「ナッシーがそこまで適当な感想言うの珍しいねぇ?」

「いやー……なんか今回のことで好感度が下がったというか、幻滅したというか、だいぶがっかりしたというか……」

「それはそう。元々そんな好きじゃなかったけど」

「ということはやはりapplause(アプローズ)が主犯だったのですか?」

「知らなーい。まだわかんなーい。でも僕らに直近手を出そうとする理由があるグループなんて一つしかないじゃーん? 明日も続くようならapplause(アプローズ)でもなさそうだけどぉ、明日の相手は今日の結果次第じゃん? 他のグループは僕らみたいな被害受けてないってことは疑うのは自然だしねぇ。疑うのはよくないけどぉ」

「ですよねぇ」

 

 証拠が出なければただの疑惑。

 applause(アプローズ)を陥れるための策略とも考えられるが、噂を流してからすぐに偽スタッフがいなくなったのがどうにも解せない。

 そのあたりは調査を待つばかりだ。

 

「さぁて、applause(アプローズ)のパフォーマンスも終わって投票開始だねぇ。……いいね、の数を見る感じいい勝負……だけど……」

「ネットの反応は星光騎士団(うち)が優勢ですよ」

「あとは審査員の反応だね。聞いた感じ昨日applause(アプローズ)のリーダーが星科社長をナンパしたって聞いたけど……」

「あー、そういえばごたちゃん秋野直芸能事務所の人だっけ。あの星科社長ってやっぱりヤバい?」

「え? めちゃくちゃヤバいよ……? 秋野さんも絶対怒らせるなって真顔で首を横に振ってたよ……。怒らせたら終わるよ、って……」

 

 それはヤバい。

 ヤバすぎる。

 後藤が本気で怯えた顔のまま首を左右に振りながら教えてくれる。

 あの天下無敵のアイドル『CRYWN(クラウン)』の岡山リントもとい秋野直がそこまで言うなんて本当に相当にヤバいぞ。

 

「苗字同じだけどCRYWNの星科新とご姉弟かなんかなの?」

「えーと……他言無用で」

「うん」

「……夫婦らしいよ」

「「「エッ」」」

「マジで言ってる? 燃えるよ?」

「俺に言われても……」

「まあそうだろうけど」

 

 非常に言いづらそうに視線を彷徨わせる後藤。

 その暴露に淳たちも言葉が出なくなる。

 天下無敵のアイドルの頂点――CRYWNの星科新が既婚者!?

 そんなのバレたら大炎上どころではない。

 今でこそ綾城珀のおかげでアイドルの恋愛事情はかなりゆるやかに、穏やかに見守られるようにはなってきているが、CRYWNのレベルはまずい。

 

「誰にも言わないでね。始末されかねないから」

「言わないけどさぁ……」

「そ、そんなこと言われるくらいなら知りたくなかったんですけどぉ……!」

「そ、そうだよね、ごめんね」

 

 ガチ怯えの魁星。

 それは本当にそう。

 あのレベルの人たちのそんな核爆弾級の秘密、知らない方がよかった。

 好奇心は猫をも殺すとはよく言ったものだ。

 聞かなきゃよかった。

 

「えーでもなんかちょっと想像がつかないっていうか。いや、この話題はもうやめよ。とりあえず水分補給だけして、帰る準備もして〜。結果出たらホテル帰るよ〜」

「は、はーい」

「このあと予定ないんですっけ?」

「ないよー。初日はインタビューもないよー。インタビューがあるのは明日以降だねぇ」

 

 一年生たちは初めてなので、流れがよくわかっていない。

改めて淳が「二日目はMCを間に挟んで二曲披露して、上位グループが決まったらランダムでインタビューがあるけど、うちは最終日まで呼ばれないと思うよ」と宥める。

 が、柳も鏡音も「インタビュー慣れしているので大丈夫です」と非常に心強い発言。

 そういえば柳は子役からの俳優、鏡音はプロゲーマー。

 確かにインタビュー慣れしているか。

 宇月がそれを聞いて「それじゃあインタビューは任せるねぇ? 去年ナッシーが半壊状態でインタビューを受けたのが懐かしいね」と微笑む。

 それを聞いて「「え……」」と硬直する一年生二人。

 映像残っているから見て見な、と宇月に言われて淳がワイチューブから動画を捜し出して差し出す。

 だいぶドルオタフルスロットで喋っていて、ヤバい。

 表情が固まる柳と鏡音。

 

「三日目、ナッシーがこのくらい壊れるくらいにはヤバいよ」

「き……気をつけます」

「覚悟します……」



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