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ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

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二年目夏の陣、初日(5)


 今年デビューして、今回のIG夏の陣に出ている元地下アイドルもいないわけではない。

 だが、淳は王道のアイドルが好きだ。

 Blossom(ブロッサム)のような、星光騎士団のような。

 というか、シンプルに神野栄治が好きなのだけれど。

 彼がまたアイドルとして活動を始めた時の感動たるや。

 

「相手の知名度を考えても勇士隊が負けるとは思えないな。今年の勇士隊は強いよ」

「えー、ごたちゃんがそこまで言い切るのはちょっといが〜〜い」

「パフォーマンスはわからないけれど曲は本当によかった。衣装作った時に少し聴いたけど、ものすごく、こう……ニチアサ」

「「「ニチアサ」」」

 

 勇士隊……というか、蓮名と苗村はニチアサ特撮モノが大好き。

 ライブでも特撮もの、戦隊モノのお芝居をやろうとして二年生と摩擦が生まれている。

 二年生は王道アイドルとして活動していきたいが、蓮名と苗村は本気の特撮ショーをやりたいと言い続けているらしい。

 さすがに二人でやりたいと騒いでも、二人でできるものではない。

 

「そういえば千景くんが、そんな先輩たちを心配して特撮番組を研究して曲を書いたって言ってたな」

「えー、へぇー……」

 

 そんな話をしていると、いつの間にかCMが開けていた。

 先鋒は新人アイドルグループ。

 もちろん一定以上の実力はパフォーマンスからもちゃんとうかがえる。

 しかしやはり初日は一曲のみ、MCなしなので非常に終わるのも早い。

 すぐさま勇士隊のパフォーマンスに入るが、演奏がすでに格好いい。

 始まった瞬間、淳と宇月も思わず言葉が漏れる。

 

「「ニチアサだ……!」」

「でしょ? ニチアサでしょ?」

「こ、これニチアサなんですか?」

「めっちゃニチアサ」

「レンジャーものだよね」

「そうそう、なにレンジャーのテーマソングなやつだ」

 

 ダンスも子どもがマネできそうなシンプルさ。

 曲の合間や間奏に蓮名と苗村が客席に呼びかけたりマイクを向けるので、客席も同じフレーズの部分を歌ったり拳を掲げたり二番以降は会場全体が盛り上がる。

 これはもう圧倒的だ。

 

「あー、これはマジで強いね」

「でしょう?」

 

 アイドルとはお客さんを楽しませるものだ。

 先鋒のアイドルと勇士隊なら間違いなくお客さんを巻き込んだ勇士隊の勝ちだろう。

 歌詞が覚えやすく、ダンスも真似できそうな勇士隊はある意味アイドルの原点回帰のようにも思える。

 お客さんの表情が、わかりやすく明るくなっていた。

 まだまだ会場が温まり切っていないこの時間帯に勇士隊がこのノリの曲で参戦したのも大きい。

 案の定、『いいね』の数の上昇は勇士隊が圧倒的。

 

「蓮名と苗村が特に、本気で楽しんでいるのがお客さんにも伝わっているんだろうね。ヤバいな~~~。灯台下暗し。星光騎士団(ウチ)も足元救われそうな勢いだったんだけどぉ?」

「うん。でもうちはうちの戦い方があるしね」

「まあね! 蓮名ごときに遅れは取らないけどね! それにしても、これ、来年の方が怖くない? 魔王軍はあんまり二年が育っている感じしなかったんだけれど――」

 

 と、若干濁しながら淳と周の方を見る宇月。

 言いたいことはわかる。

 来年は作詞作曲も顔面もつよつよの御上千景(みかみちかげ)をリーダーに、同じく学年で三人いる顔面偏差値最高の一人、日守風雅(ひもりふうが)が揃って活動していくことになるのだ。

 千景のスペックを見てきた淳だから、来年の勇士隊が強敵であろうことはわかってきた。

 

「俺はドルオタだし、千景くんのファンでもあるので来年の勇士隊がすっごく楽しみです!」

「ナッシーはそういうタイプよねぇ。ま、僕は来年卒業だからあとはお任せだけどさあ」

「あ、結果が出ましたよ」

「「早あ」」

 

 やはり勇士隊が圧倒的。

 その上すでに投票の始まっている全参加グループへの『いいね』投票数がBlossom(ブロッサム)に迫る勢い。

 この投票数も明日の二日目へ進むために必要ではあるが、序盤でこれほど差があるのもBlossom(ブロッサム)三連覇への期待が窺える。

 

「おーい、お前ら全員揃っている~~~?」

「あ、凛咲先生。チャットルーム見ましたぁ?」

「見た見た~。それとは別に、スタッフさんに星光騎士団への危害を加えようというなんらかが確認されたと教えてくれた。ホテルの部屋も俺たちが施設にいる間に別室にしてもらう手配をしたとのことだ」

「え? ではあの、ホテルの荷物は――」

「ホテルと運営のスタッフですべて一時的に荷物預かりに移動し、保管ののちホテル帰還後に新しい部屋に運んでくれるそうだ。実は柳のSPからホテルと俺に連絡がきて、不審な男がホテルスタッフに扮して酒の缶を宇月の部屋に投げ込もうとしているのを捕まえたんだとさ」

「はあ!? お酒の缶!? 僕の部屋にぃ!? き、きっっっっもぉぉぉぉぉ!? ちょっと待って、部屋に勝手に入られたってことぉ!?」

「そう」

 

 あっさり頷く凛咲に、自身の腕をさすりながら「うざぁい! きもぉい!!」と叫ぶ宇月。

 宇月の部屋に偽のホテルスタッフが入り、酒缶を散らばそうとしたと。

 そんな写真がもしも表に流されれば、未成年の宇月が飲酒したと誤解をされかねない。

 その偽スタッフの目的はそれらしく、ホテル側は警備会社と連携して警備強化を図るとのこと。

 警備が厳しくなればホテルでのリラックスは難しくなるが、安全を最優先するそうだ。



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