表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソング・バッファー・オンライン~新人アイドルの日常~  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

413/553

前日打ち合わせ会議(1)


「こんにちはー! 星光騎士団、宇月美桜でーす」

「こんにちは、同じく星光騎士団、音無淳です」

「こちらへどうぞ」

 

 大きなホールのような部屋に、パイプ椅子が並べられ各参加グループのリーダー、副リーダーが揃っている。

 スタッフに促されて前の席に案内されると、視線がチクチクと突き刺さった。

 

(去年と顔ぶれがかなり違うな……)

 

 地方のご当地アイドルが格段に減ったのに対して増えたのは、各事務所の新人アイドル。

 昨年Blossom(ブロッサム)が夏の陣で優勝して以降、あたためていたらしく続々デビューして今では完全に入れ替え。

 ただ、地方のご当地アイドルや地下アイドルがそのまま事務所所属になり、新規グループメンバーになって再デビューしている人が多い。

 ある意味、ご当地アイドルや地下アイドルの中でもやる気と人気のある者が(ふるい)にかけられて、一握りが寄せ集められてデビューさせられている。

 一年間の準備期間を得てデビューしているBlossom(ブロッサム)に比べればどうしても“寄せ集め”感が出ているので、下手をしたら彼らの前グループや学生セミプロにも劣るだろう。

 果たしてそこまで考えているのか。

 

「んっふふ。大の大人が子ども相手にみっともなぁい♡」

「…………」

 

 そしてそれらの妬み嫉みの視線に気づいている宇月が煽る煽る。

 そういうところだ、宇月美桜の怖いところは。

 わざわざ聞こえる声量で言わなきゃいいのに。

 

「おぉい! 聞こえてんぞ!」

「ただの学生が、でかい口叩くじゃないか!」

「えー、急になんですかぁ? いきなり怒鳴るなんてこわぁい」

「っ!?」

 

 しかしまさか宇月の煽りに立ち上がって怒鳴る大人がいるとは思わなかった。

 いくら本番前日で気が立っているとはいえ、本番前日だからこそ喧嘩をふっかけてくる大人がいるなんて思わなかった。

 先に来ていた魔王軍の麻野が立ち上がって宇月の近くに歩いてくる。

 

「アァン!? ナンダァ!? テメェ!?」

 

 そんな気はしてたけど宇月を庇うように立ち上がって怒鳴ってきた男らに叫ぶ。

 声の通りがいいせいで、一気に注目を集めてしまった。

 頭を抱える淳。

 茅原と苗村が立ち上がるのも見えて「あ、これ止めるの俺だけだ」と悟ったからだ。

 

「なんだなんだ、喧嘩か!? よし! やろう!」

「物理的に沈めんのか? いいぜぇ?」

「なっ……ぐっ……」

 

 意気揚々喧嘩を買ったはいいものの、まさか物理的にやる気満々が出てくるとは思わず立ち上がった男たちが慌てふためく。

喧嘩っ早い麻野が拳を鳴らし、蓮名がニコニコ「悪は討伐されて然るべき」と空いているパイプ椅子を掴んだところで「やめんか」と止める声。

 茅原の近くに座っていた花鳥風月のリーダー、桃花鳥咲良(ときさくら)が立ち上がる。

 

「んん? 桃花鳥(とき)じゃないか。なんでいるんだ?」

「東雲芸能科グランプリの優勝者はIG夏の陣本選招待だったの~。僕が秋野直さんと直接交渉して、星光騎士団のシード権返上で確約貰ったんだってば。お前学院のイベントに興味なさすぎじゃない? いくら三大大手グループは参加不可だからって、蓮名だって運営側でしょ? しておけよ把握を」

「そんなことを言われても興味がなくてな」

「シバくぞ」

「宇月!? 星光騎士団のシード権返上の話は聞いていないぞ!?」

「IG本選だよぉ? そのくらいするよぉ」

 

 初めて知った桃花鳥(とき)の叫びにも宇月がさらりと言ってのける。

 よくよく考えると自分のグループのシード権を返上しても、数万のエントリーから本選に出るグループの一つに捻じ込むのは本当に難しかろう。

 一瞬で桃花鳥(とき)がたじたじになる。

 

「学生セミプロでシード枠は贅沢すぎたからいいよお。珀先輩の置き土産、学院のグループのために使ってもいいでしょ。プロだからって安心してる暇はないよぉって、しっかり圧をかけておかないとねぇ。僕らが卒業したら、お前らと同じ土俵で戦うことになるんだからねぇって、しっかり理解しててもらわないと。まあ、あと普通に就職先に実力見ておいてほしいしね~」

「く……しかし、だからと言ってすぐに喧嘩を売るようなことをするな。余計なトラブルのもとになる。運営に迷惑がかかってしまうだろう」

「それは僕じゃなくて喧嘩売られたと思って立ち上がったやつらに言って~。大人のくせにガキに喧嘩売られたと思って立ち上がる人も、喧嘩買う気満々で立ち上がる馬鹿もどっちも馬鹿~~~~」

「「はあ!?」」

 

 急にはしごを外される麻野と蓮名。

 むごい。

 

「美桜ちゃん、相変わらずだねぇ」

「え? わ、わ、わ! 珀先ぱぁい♡」

 

 入室してきたのはBlossom(ブロッサム)綾城珀(あやしろはく)鶴城一晴(つるぎいっせい)

 綾城の姿を確認した途端、淳も久しぶりに見る媚び媚びモードの宇月になった。

 可愛いんだが、相変わらずの変わり身の早さに驚嘆が先に来る。

 周囲は三連覇――殿堂入りのかかったBlossom(ブロッサム)のリーダーとメンバーに閉口した。

 

「でもあまり騒ぐのはダメだよ。席に着こうね。隣に座る?」

「はぁい♡」

「ムカつくけど可愛いんだよなぁ、ムカつくけど」

「え、蓮名って宇月を可愛いとかムカつくとか、そういう感情あったんか」

「俺だって健全な男子高生だぞ! 性格はともかく宇月の表面だけは可愛いと思うのは当たり前だろう!」

「聞こえてんだよ! ブチ殺すぞ!」

 

 始まる前から不安すぎる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ