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レプレッションのメンバー候補(3)


「じゃ、全員揃ったし移動しよう。俺、このあと普通に仕事あるからね」

「あ、待ってください。自己紹介もしてないんです」

「あ、そうなの? じゃあ、して」

 

 早く、と言わんばかりに睨まれて、魁星がビクッと肩を跳ねさせる。

 やはり本能的に逆らってはいけないと理解している。

 

「はあ? 僕のことを知らないやつがこの場にいるの?」

「お前の知名度なんて日本じゃ雑誌買ってるやつがもしかしたら知ってるかも〜程度だよね」

「はあ!?」

「うるさいって言ってるよね。俺、うるさい人嫌〜い」

「ぐぬぬ……」

 

 まあ、実際神野の言う通りエアリムの声は通る。

 アイドルや歌手、俳優向きの声だ。

 姿勢もいいし、程よい筋肉もついており、発生の練習もしっかりしているから出る声だろう。

 身長も高く手足も長いから、彼のダンスはさぞ映えるだろうし本当に楽しみなアイドル候補だ。

 

「とりあえずミホシッチから自己紹介しなー」

「ミホシッチ……?」

「あ、えーと、花房魁星(はなぶさかいせい)です」

「ボク、アンニーズ・アル・ジェーベッド」

「僕を知らないなんてありえない!」

「えっと、ごめん。俺は君知らない。誰?」

 

 どストレートで聞いてしまい、ブチギレの表情になるエアリム。

 だが自己紹介もできないのは、アイドルとしてなかなかに致命的。

 

「エアリム・ルークスだけどぉ!? なんで知らないの!?」

「ごめんね! でも俺、自分のことでいっぱいいっぱいすぎてわかんないよ!」

「ぐぬうー!」

「ま、日本でのお前の知名度なんてそんなもんだよね」

 

 やれやれと肩を竦める神野。

 残念ながらそれが現在のエアリムの状況なのだ。

 

「初の顔合わせはこんなもんでいいんじゃない? 俺仕事あるんだから早く移動しよ」

「そうですね。じゃあ、撮影が行われるフルーツパーラーに移動しましょうか。栄治先輩そのまま仕事ですもんね」

「そう。最近モデルの仕事なかったから楽しみにしてたんだよね~」

「え!? エージ、モデルの仕事するの!? いつ公開の!?」

「守秘義務でーす」

 

 淳にはあんなにやさしい声で教えてくれたのに、エアリムには超低音。

 カフェを出てから汗がぶわっと毛穴から噴き出す感覚。

 芸能界に生きる者にとって、特に容姿を売りにする者にとって本当に嫌な季節だ。

 

「で、そのフルーツパーラーってどこにあるの?」

「南区寄りの中央区に建ったそうです。今回紹介するのは店自体ですが、お店の新メニューをグルメ番組で取り扱うとのことでもっと詳しいことは現地スタッフが教えてくれると思いますよ」

「っていうか、なんでジーくんがそこまで詳細知っているの? 普通こういうのってマネージャーかリーダーが把握しておくものじゃない?」

「あ、でもえーと……まだこの三人、グループというわけではないので……? 事務所の中で今回撮影に参加するメンバーの中で一番先輩なの、俺なので」

「ああ、まあ、それもそっか。でもその辺ちゃんとリーダーになる子に教えておかないとダメだよね?」

「そうですね。その時になったら教えていきたいと思います」

「ふーーーーーーーーーーん」

「……?」

 

 突然冷たい眼差しになって淳を見下ろす神野。

 なにか変なことを言っただろうか?

 自分の発言を思い返すが、神野を不快にさせるようなことは言ったと思えないのだが。

 

「はーくんとなっちゃんもいい子なんだけどさあ」

「え? あ、はい。はい?」

 

 一瞬「誰だ?」と思ったがあれだ、綾城珀(あやしろはく)ではーくん、甘夏拳志郎(あまなつけんしろう)でなっちゃんだ。

 神野、自分の気に入っている後輩には変なあだ名つけがち。

 淳もこれで「ジ――くん」と呼ばれている。

 綾城と甘夏がいい子、というのはよくわかるが、なんで急にあの二人がいい子な話に?

 

「曲の中には“いい子”じゃないのもあるんじゃない?」

「えっと、まあ、そうですね?」

「多少我を出して我儘になるのも必要じゃない? そういう意味ではスルギっちはいい見本でしょ」

「スルギっち……」

 

 誰、と聞きそうになったが石動上総(いするぎかずさ)の苗字からとったのか。

 相変わらず独特だなぁ、という感想と神と崇める神野栄治が上総にあだ名をつけている――イコール気に入った後輩にカウントしている――という事実に口元がにやけそうになるのを必死に耐える。

 そんなことよりも神野に言われたことをしっかりと受け取らないと。

 

「俺、いい子すぎですか? そんなことないと思うんですけど」

「自覚ないのヤバくない? 妹がいるから余計かもしれないけど、自己主張少なすぎるよね、ジーくん」

「う、ううーん。でもうち、妹もいい子なのでそんなに我慢させられたりとかもないですし」

「天然でそれってこと? じゃあそれはそれで個性だわ。ごめんねぇ、捻くれた人生送りすぎて天然いい子とか絶滅危惧種に見えちゃって喧嘩売りたくなるんだよね」

「え!? そんなことないですよ!? すごいと思ってますし、そういう生き方をしてきた栄治先輩のこと尊敬してます!」

 

 はーくんもその婚約者ちゃんも天然いい子なんだよねぇ、と唇を尖らせる神野。

 神野の周り結構天然いい子多いな。

 しかし、神野の言いたいことも理解できる。

 去年の夏の陣で決勝の日、今までいい子だった Blossom(ブロッサム)が急に治安の悪い曲を歌い出した時のことを思い出した。

 あのギャップは強かった。

 多分、神野の言いたいことはそこだ。

  Blossom(ブロッサム)よりもFrenzy(フレンジー)の方が、そういう曲がかなり多い。



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