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レイドイベント開催(2)


 そして、ステージからやや離れた場所にビギナー狩りをしていたプレイヤーたちの顔も見えてしまう。

 生身ならば真っ青になっていそうな驚愕の表情の五人。

 名を騙っていたインディーズアイドルが、現在はプロとして活動している者、引退している者、関係なく勢揃いしているのだから。

 レベル差もあるのに、ツルカミコンビと蔵梨柚子のたった三人に返り討ちに会った五人組は、星光騎士団のほぼ全員を敵に回したと宣言されたも同然。

 顔を見合わせたあと、ビギナー狩りの五人はそそくさと広場を去った。

 レイドイベントには参加するつもりだっただろうけれど、この人数を敵に回したと他のプレイヤーにバレたら袋叩きに遭うのは不可避。

 まあ、レイドイベントに参加する際には特設フィールドに入らなければいけないし、そのフィールド内でランダムにプロ、セミプロのアイドルが歌でレイドイベント参加プレイヤーにバフを提供する。

 そこにキルプレイヤ――も普通のプレイヤーも隔たりはない。

 

「はいはーい、SBOプロモーション担当の神野栄治と~」

「鶴城一晴ですぞ」

 

 星光騎士団現役時代の衣装を纏ったツルカミコンビにチコ、淳の脳内フィーバー。

 ちなみに今回淳たちも含めて纏っている星光騎士団衣装アバターは運営にお願いして作ってもらった。

 自分たちでカスタマイズした衣装アバターとは完成度が違う。

 一応裾や襟の色など個々のイメージカラーなどに変更はできるけれど。

 スマートな騎士服のツルカミコンビに淳は「サイリウムと団扇がほしい……」と半泣きで呟いて周に肘で小突かれた。

 

「時間になりましたのでレイドイベント、開始しまーす」

「では! レイドイベント応援ライブも始めますぞ! 一曲目は星光騎士団初代――凛咲怜王(りんさきれお)梅橋梓(うめはしあずさ)酒牧始(さかまきはじめ)による星光騎士団ファーストシングル『Starlight』!」

 

 SBO内で課金すればサブスクに登録されている曲が歌えるようになっている。

 初代の歌声は力強い。

 久しぶりのライブだろうが、三人の息はぴったり。

 声量があるので聴き心地がよかった。

 そのまま二代目、三代目、と歌い手が変わる。

 その間プレイヤーたちはレイドモンスターへと挑む。

 自分でも歌唱バフをかけることもできるけれど、星光騎士団メンバーの歌唱バフの方が大きかった。

 歌い終わった星光騎士団メンバーは、空き時間を無理やり作って駆けつけていた者がほとんどで、一曲歌ったらログアウトするわ、と立ち去っていく。

 本当に、たった一曲だけの復活に星光騎士団箱推しの古参はステージ前で硬直して泣いている。

 チコや淳以外にも、やはり星光騎士団箱推しがSBOをプレイしていた。

 

「結構面白いなぁ。俺VRゲーム初めてだったけれど、時間ある時プレイしてみようかな」

「本当~。アタシもVRMMOって初めてだけれど、こんなに自然に体が動くものなのねぇ。空き時間にまたライブしに来ちゃおうかしら?」

騎一(きいち)ちゃんと(せん)ちゃんがゲームに興味持ってくれたの嬉しいやん~! やろやろ、ライブやろ! レイドイベント、今月末までやってるんやろ? 時間合せて歌いに来よ~!」

実千(みち)ちゃん、ゲーム好きだものねぇ。ええ、ええ、いいわよぉ」

 

 と、弾む会話をしているのは星光騎士団十代目、光原騎一(こうはらきいち)真歳閂(まさいせん)椎名実千(しいなみち)

 光原はアクション俳優、真歳はモデル、椎名はテレビドラマを中心に活躍する俳優。

 彼らの姿に手を合わせる淳。

 十代目メンバーといえば、神野栄治と鶴城一晴を見初めて星光騎士団に引き入れたそうだ。

 神野と真歳はモデルの先輩後輩。神野は真歳に逆らえないとかなんとか。

 

「日向ちゃんとまた歌えるの嬉しいな~。ねえねえ、また一緒にゲームしようよ。おれSBOは今レベル20になっているよ~」

「柚子、お前SBOもやってたのか? プライベートをゲームに消費しすぎじゃないか?」

「当たり前じゃん~。おれはねえ、ゲームの中でネカマプレイをしてネカマのおれに男たちが鼻の下伸ばしてるのを見るのがだ~~~~い好き♡ ぶりっ子プレイヤーのおれに女子やNPCに冷た~~~い目で見下されるのも気持ちいい~~~♡ この気持ちよさを日向ちゃんにも感じてほしい~」

「嫌。無理。お前のその歪んだゲームプレイ性癖につき合うつもりは一切ない」

「即答ひどくない?」

「でも、久しぶりに一緒にライブできるのは――楽しみ。順番早く来てほしいな」

「…………。え、もう日向ちゃん好き愛してる結婚しよう」

「無理。生理的に受けつけない」

「言い方ひど~~~~い♡」

 

 その横では十三代目の蔵梨柚子と佐藤日向。

 歴代の中でもツルカミコンビに匹敵する夫婦漫才ぶり。

 あんな辛辣に拒絶されたというのに、蔵梨の表情は恍惚としている。

 

「はあ、はあ、すごい、本物の歴代星光騎士団団長と副団長とメンバーたちだ……引退した三代目の稲見晃大(いなみこうだい)や八代目の原司(はらつかさ)、十三代目副団長の佐藤日向までいて……はあ、はあ……ああ、色紙とサインペンを持って回りたい……」

「淳ちゃん……」

「先日は淳だけオーディションに受かったことに嫉妬してしまいましたが、この熱意と知識量を見せつけられると納得してしまうというか……嫉妬する資格もなかったというか……」

「ちなみに淳くんが喜ぶと思って、このゲーム内ライブ映像は録画してあるので星光騎士団のワイチューブチャンネルにアップ予定だよ」

「マジですかぁぁぁあ!? 絶対に観ますー!」

 

 綾城の言葉に生身の状態なら嬉し泣きしている自信がある。

 この歴代メンバーの復活ライブ。

 コレがいつでもまた見られるなんて!



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