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仕事があるのはいいことです


「え? 待って? それは夏の陣用の曲……?」

「いえ? 別ですね。来年の夏の陣の時点ではまだ乙女ゲームの方のリリースはされていないと思うので」

「さらりとえぐいこと言ってない? マジで言ってる?」

「もちろん。夏の陣に出せない曲があと二曲事前に収録の予定なので、楽しく歌ってくださいね」

 

 松田、表情が唖然としたまま固まっている。

 可哀想。

 いや、淳も来年の星光騎士団の新曲のことを思うと覚える曲数が増えるのは負担だ。

 かなりえげつない。

 

「それは乙女ゲームのテーマソングだけじゃないってこと?」

「いえ。現時点で追加の曲はすべて乙女ゲーム関連です。オープニングテーマと挿入曲、エンディングテーマ。これはなにもFrenzy(フレンジー)だけが歌うんじゃないんですよ。Blossom(ブロッサム)バージョン、Frenzy(フレンジー)バージョン、メンバー未定ですがRepression(レプレッション)バージョンも加わる予定です」

「ああ、なるほどね。同じ曲でも歌い手が違うとってやつね」

「そういうことです」

 

 オタクの好きなやつだ。

 間違いない。

 淳も普通に好きだ、ソレ。

 推しが歌っているバージョンを延々リピートで聴くやつだ。

 

「しかし、Repression(レプレッション)はメンバーもままならねえのに仕事だけ先に決まっているのえぐいな」

「そうなんですよね。一応淳くんの同期の花房魁星(はなぶさかいせい)くんは現時点では仮所属なんですが、他のメンバーが決まり次第正規メンバー確定だそうで」

「誰」

「え!? ご存じでない!?」

「俺、勇士隊以外の後輩の顔と名前はお前しか覚えてないや」

 

 嬉しいやら解せぬやら。

 とりあえず淳の同級生で同クラスで同期であると説明すると嫌そうな顔をされた。

 

「また東雲の生徒かよ。青田買いしすぎじゃね?」

「他の芸能科やコースのある生徒も見てはいるのですが、東雲の子は質が年々上がっているとおっしゃっていましたね」

「ああ……蔵梨先輩の世代から星光騎士団が学院全体の底上げをしてたからな。今年もなんか星光騎士団の宇月が色々企画してたもんな」

「新しく『学力向上委員会』っていうのも始まりましたしね」

「……え? 馬鹿多いの?」

「えーと、三年生というより俺の同級生世代と一年生がちょっと……歴代最低平均点を更新したと、先生たちが……」

 

 要するに馬鹿が増えました。

 それを聞いた松田と石動の嫌そうな表情。

 母校の後輩の学力がそれほど落ちている時かされれば、そりゃあそんな顔にもなるだろう。

 若干申し訳なくなる。

 

「まあ、最近またいくつかのアイドル事務所が潰れたようですから、そこから気概のある子を連れてくるんじゃないですか? やる気のある子、社長好きですからね」

「潰れた? どこが?」

「ドリームキャッチエンターテイメントと大本芸能スタジオ、あと芸能サンルームですね」

「聞いたことねぇ」

「でしょうね。すべて設立から一年経っていません。それなのに抱えたタレントの数は二百人近かったようですよ」

「二百人……!? 三ヵ所の事務所でですか!?」

「ね。多いですよね。事務所に入れば芸能人になれると思い込んでいるごみを大量に放流して消えたんですよ? 許せませんよねぇ」

 

 などと笑いながら言っているが、目は笑っていない槇。

 業界にしても受け皿があるわけではないので、迷惑極まりないのだろう。

 そのまま別の事務所の養成所に入れられて、レッスン料を搾り取るまでがセットらしい。

 

「え、えげつない……! そんなことしているところがあるんですか……!?」

「昔からある“商売”なんですよ。そこから抜け出すには夢を諦めるか、本気で努力するかの二択ですね。社長としては後者の人材がいれば、と考えているみたいですが……」

「いるかぁ? そんなやつ。聞いたこともないような新しい事務所に飛びつく時点で危機管理能力相当薄いぞ?」

「春日芸能事務所も新鋭事務所なのでブーメランになりますよ、上総さん」

「気安く下の名前で呼ぶんじゃねぇよ。お前にそれを許した覚えはねぇ」

 

 睨みつけられても肩を竦める槇。

 相変わらず仲が悪い。

 果たしてこの二人、仲良くなることがあるのだろうか?

 双方歩み寄る気がなさそうなのだが。

 

「あ、知り合いにやる気のあるアイドルがいたら紹介でもいいですよ」

「淳の知り合いなんて東雲のアイドルしかいないだろ」

「えーと、まあ……そうですね。あ、千景くんとか日守くんはどうですか? 俺の同期だと顔面トップ3ですよ」

「ちかげくんとひもりくん? 誰ですか?」

「俺の――勇士隊の後輩だな。日守は印象薄いけど」

「勇士隊は東雲学院芸能科の三大大手グループの一角ですよね? 勇士隊所属なら実力も申し分なさそうですし、社長に聞いておきますね」

「え? 本当に……? 半分冗談のつもりだったんだけどな……」

 

 槇に提案してみたものの、あまり本気にはされないだろうと思っていた。

 だがあっさり「社長に聞いてみる」と言われて驚いた。

 日守はわからないが、千景は作詞作曲もできるので引く手あまただと思っていたので。

 多分、もう他の事務所からも声がかかっていると思われる。

 ただ、淳としては同学年の顔面トップ3が揃うグループなら単純に推す。

 まあまず間違いなく推す。

 ホクホク笑顔をしていたら石動にバレて優しいチョップをいただいたが、社長の采配によるので叶うかどうかはわからない。

 だが、叶ったらまず間違いなく推すので叶えばいいな、と思う。



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