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学力底辺たちの修羅場(1)


「あ、あれな〜〜〜。あれ、マジでやんの?」

「え? やるよ? もちろんやるに決まってるじゃん? っていうかもう始動してるよ」

「うげぇ……」

「グッズも出ないとか本当に罰ゲームだな……」

「みんな頑張ってね☆」

 

 不名誉コラボユニット送りにならないように。

 という意味の笑顔。

 

「じゃあ、本番の準備も始めていただいて」

「あ、本当だ。そろそろ野外大型ステージ行くか。そろそろなにかを発表する時は野外大型ステージってことになってきてるな」

「今日は昼にお知らせもありましたしね。あの時一緒にwelcome(ウェルカム)のこともお知らせできたらよかったんですけどね」

「うーん、でも告知の規模を思うと、ちょっとね」


 と、あの場にいた夏山も仕方なさそうに頰をかく。

 確かにコラボユニットの話を、学院規模の告知の合間に挟むのはちょっと肩を並べられないかな、と思ったのだろう。

 ただ、野外大型ステージという東雲学院で一番大きなステージでコラボユニットの始動を告知してライブするのは、単体の方がいい。

 その方が目立つ。

 

「じゃ! この二ヶ月仕上げてきた実力をみんなに見てもらおう!」

「「「はい!」」」

「音無もありがとう! SNS用のスケジュール表も使わせてもらうね。いやー、音無ってプロデューサーの才能もあるんだな」

「プロデューサー、ですか」

 

 ちょっと驚いてしまった。

 プロデューサーというと、淳の中では槇湊(まきみなと)

 あまりプロデュースされている感じはなく、どちらかというと現在はマネージャーの感覚が強い。

 そのくらい、槇とFrenzy(フレンジー)の距離が近いので。

 

「そういう経験になっているのなら、よかったです」

 

 これがプロデューサーの仕事なのなら、今後役者としていい経験になる。

 そう受け取ってレッスン室を出た。

 次に向かうのは校舎内の会議室。

 廊下を歩いていると、会議室から阿鼻叫喚の悲鳴や怒号が聞こえてきた。

 いかん、もう入りたくない。

 いや、入らないわけにはいかないので入るけれど。

 

「お疲れ様でーす」

「音無くーん!」

「来たか、音無」

「あ、えーと……大丈夫です?」

「宇月は別件か? 宇月が来た方が早いのだが」

「え? 宇月先輩は学院側との調整に行くと言っていましたね。仕事の調整……まあ、強制参加なので強制的に露出させる手筈を整える感じですけど」

「ぎ、ぎぇえええー!」


 発狂したような声を上げるのは麻野。

 そんなに不名誉ユニットに入れられたのが不満だったのか?

 出迎えてくれた半泣きの千景と桃花鳥(とき)には止められそうにないほどなんかよくわからないことを叫んでいる。

 ガチギレではないか。

 

「お、お前らみたいに頭がいいやつに俺らみたいな頭が悪いやつの気持ちなんてわかるわけねぇ! 勉強しろって言うな! 勉強嫌いなんだよ!」

 

 とのこと。

 いや、淳も別に勉強が好きで勉強をしているわけではないので、その発言はかなり理不尽に感じるのだが。

 

「だーかーら、最高学年のお前が後輩の前でそんなことを言うんじゃない! 勉強ができないことを叱っているのではなく、勉強をしようとしない姿勢を叱っているのだ! そんなお前たちが少しでも勉強の役に立つパフォーマンスをできるように、御上が作詞作曲したのだぞ。しかも星光騎士団の秀才二人が監修もしてくれた。実際曲を聴いてみれば、身になること間違いなしだ。とにかくまず楽曲を聴いてみろ!」


 桃花鳥(とき)に叱られてグッと言い淀む麻野。

 だが成績底辺生徒たちの怒号はそれで止まることはない。

 

「麻野先輩の言うとおりだ! 俺たちだって勉強してないわけじゃねーよ!」

「勉強したってわかんねーんだよ!」

「そうだそうだ! 教わったって理解できねーんだよ!」

「自分がなにをわからないかわかんねーんだよ!」

「それなのに無理やり勉強させようとする、その根性が悪い!」

「こんな見事な逆ギレあります?」

「お前もそう思う?」

 

 ギャーギャーと騒ぎまくる学力底辺たち。

 桃花鳥(とき)が一度頭を抱えてから、これみよがしに溜息を吐いてからギロっと学力底辺たちを睨みつける。

 宇月に次ぐ怒らせたら怖い三年生――桃花鳥(とき)が口を開く。

 

「黙れ馬鹿どもが! 貴様らの言い分なんぞ何度聞いても聞くに耐えん! 言っておくが今選出されているメンバーの中で、芸能科の生徒としての勉学が免除されても仕方がないと判断されるほどの功績を残している生徒は魔王軍の麻野くらいなものだぞ! ……ああ、あとは星光騎士団の三名か。あの三人はまあ……実績も素晴らしいからな……」

 

 と、名簿を見ながらつけ加える無慈悲さ。

 事実魁星、鏡音、柳は現在空きステージでライブ中。

 実績に数えられるのはやはりIG出場、事務所所属済み、鏡音の場合は入学前からの動画サイト登録者数。

 こう言ってはなんだが、東雲学院全体のグループの専用チャンネルの登録者数を合算しても太刀打ちできない登録者数なのだ、鏡音は。

 なんなら今度の十月には世界大会に出場も決まっている。

 芸能人としてというよりは、プロゲーマーとしての評価が非常に高い。

 

「それに比べて? お前たちは? なにか実績があるのか? いや、ないわけではないのは認める。だが、それが学業を免除してもらえるほどのものだと思っているわけではあるまいな? 特にWalhalla(ヴァルハラ)折織理人(おりしきりひと)! こんなに雅な文学的な名前だと言うのに平均点が15点とは何事だ!?」

 

 桃花鳥(とき)、若干の涙目。

 確かに折織の名前はとても理知的に見える。

 が、一人スン……と座っていた折織は不敵に笑む。

 

「名前で勉強できたら誰も苦労しませんよね? なに言ってるんですか、先輩」

「屁理屈を言うな馬鹿が!」

 

 平均点15点はシンプルにやばい。

 というか、これ以下なのか、麻野。



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