表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/553

レイドイベント開催(1)


 自分の部屋の机に、『Blossom(ブロッサム)』四人のサイン入りCDを飾って手を合わせる。

 ここ最近の日課になりつつあるこの行為。

 五月の定期ライブも乗り越えて、六月の十日。

 魁星とも周とも連絡を取り合い、約束の時間十分前に旧型VR機を被り、ベッドに横たわる。

 仕方ない、淳はやはり声が出せないから。

SBOソング・バッファー・オンライン』を起動する。

 今日からSBO内でレイドイベントが開催される予定だ。

 ログインして、“シーナ”として待ち合わせ場所に向かう。

 待ち合わせ場所――『ファーストソング』の広場。

 その場にいたのは“バアル”、“カイセイ”、“アマネ”、“ハルナ”、“エイナ”が待っていた。

 広場に用意されたステージが見える宿の中で「お久しぶり〜」とエイナに声をかけられて、淳は硬直。

 最初は綺麗なお姉さんだと思ったけれど、エイナの中身は神野栄治。

 淳にとっての“神”であり、永遠の騎士(ヒーロー)

 何度会おうと、緊張しないなんて無理だ。

 

「おぉぉぉ、お久しぶりでっす!」

「シーナってば完全に他人行儀になっちゃったね。さーみしーい」

「そ、そそ、そ、そんなことおっしゃられましても……ひぎゃ!?」

「そういえば五月の定期ライブもすごく頑張ったんだってね。先輩が褒めてあげるね。よしよし♪」

「ひいいいっ!」

 

 抱き締められて、頭を撫で撫でされる。

 近い。近過ぎる。

 顔が近くて、ちゃんと温もりも感じて、あばばばば、と慌てふためくシーナ。

 その様子を目を細めて眺めるハルナとカイセイ。

 引き剥がしたいが、戯れの範囲内。

 が、距離が近いと複雑そう。

 

「エイナ先輩、あんまりシーナを弄ばないでくださいね」

 

 見かねてバアルがそう言うと、唇を尖らせてエイナがシーナを放す。

 そのままシーナは腰を抜かしてしまった。

 

「淳……いや、シーナ。君、ここで腰を抜かして、大丈夫ですか? このあとちゃんと歌えますか?」

「だ、大丈夫だよ、アマネ……絶対歌い切って見せるから」

 

 周のアバター、アマネに手を引かれて立ち上がる。

 その時、ちょうど広場にレイド開始合図を行うSBOのオリジナルキャラクター『そばお』が特設ステージに現れた。

 “そばお”は人の姿をした蕎麦。

 なにを言っているかわからないが、顔がざる蕎麦、体が真っ白な全身タイツ。

 どうしてこんなキャラクターを思いついたんだろう。

 何回見てもウケ狙いとしか思えない。

 

「どうもー、プレイヤーの皆さん。本日からついにギルドを実装、レイドイベントが開始です! レイドイベント中は、時間ランダムでプロのアイドルグループ、セミプロのアイドルグループがこちらの特設ステージでライブを行いプレイヤー全員にバフをかけてくださいます!」

 

 頭が蕎麦のそばおがマイクで宣言する姿はどう足掻いてもシュール。

 集まっていたプレイヤーは「わあ」と歓声をあげる。

 ランダムというのは、空き時間があるアイドルが適当に集まって歌う、という裏事情。

 しかし、そばおの横に現れたのは星光騎士団のステージ衣装を纏った――凛咲玲王。

 その後ろには“初代”星光騎士団グループメンバー。

 

「うわああああああ! 星光騎士団の初代メンバーが全員揃ってるううう! 凛咲先生だけじゃなく、作曲家になった梅橋梓(うめはしあずさ)と世界でダンサーデビューした酒牧始(さかまきはじめ)! しかも、凛咲先生たちのアバターが十代の頃の姿じゃん!? それにその後ろにいるのは二代目でシンガーソングライターになった沖壮太(おきそうた)と、マルチタレントの遠坂裕士郎(とおさかゆしろう)、三代目の――」

「え? じゅ、淳ちゃん、初代から全員の名前と現在の職業把握してるの?」

「え? 星光騎士団箱推しのドルオタとして当然だと思うけれど?」

「いやいやいやいや、怖い怖い怖い」

 

 さすが歴代振付全部踊れる箱推しのドルオタ。

 同期にガチ怯えされている。

 そんなシーナにエイナとハルナも若干表情が引き気味。

 

「ははははは! 知らないやつらにも自己紹介しよう! ミーは星光騎士団初代騎士団長、凛咲怜王(リンサキレオ)! 星光騎士団は東雲学院芸能科のアイドルグループ。ミーは星光騎士団の創設者で作詞家で教師だ! SBOでプロモーションを担当している神野栄治と鶴城一晴の先輩だゾ!」

 

 ドヤ、と胸を張る凛咲先生。

 そばおがマイクを向けると、凛咲先生がスッ……と目を細める。

 

「今日から実装されたなんとかっていうシステムで!」

「ギルドシステムね」

「星光騎士団を設立する!」

「もうしてある」

「理由はSBO内で星光騎士団を名乗り、ビギナー釣りをしている馬鹿者がいるという報告を受けたからだ!」

「ビギナー狩りね」

 

 凛咲先生の適当さを的確に訂正していくのは初代副団長、梅橋梓(うめはしあずさ)

 さすがにこなれている。

 そこでエイナたちが「そろそろ行こう」と声をかけられた。

 その場に集まった面々も頷いて移動する。

 

「だから星光騎士団(ミーたち)の名を騙る者どもは覚悟しろよ。これから星光騎士団(ミーたち)が顔も名前も晒してSBOを支えるからな!」

 

 そう言った凛咲先生の後ろに、初代から先代――今代、綾城珀に至るまでの歴代星光騎士団員がほぼ全員勢揃い。

 広いステージに三十人近いメンバーがSBOプレイヤーたちに”顔見せ”した。

 その端の方に、シーナから”ジュン”、カイセイ、アマネ、リアルの姿にアバターを変更した三人も加わる。

 そのことを知らせていなかったので、ステージの最前列にいた”チコ”が口も目も丸く開きっぱなしになっているのが見えて、少し笑いそうになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『不遇王子が冷酷復讐者の手を掴むまで』(BL、電子書籍)
5cl9kxv8hyj9brwwgc1lm2bv6p53_zyp_m8_ve_81rb.jpg
詳しくはヴィオラ文庫HPまで

『国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!』アンダルシュノベルズ様より発売中!
g8xe22irf6aa55l2h5r0gd492845_cp2_ku_ur_l5yq.jpg
詳しくはホームページへ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ