二つ目と三つ目のお知らせ
『今!? 今発表すんのかよ!?』
「するよ~。クオー、やっちゃいな」
「はい。まずワースト第一位、三年、『魔王軍』麻野ルイ先輩」
「おいお前ワースト一位かよおおお!? きゃははははひは!」
『く、くそがあああああ!!』
無邪気な笑い声のはずなのに、宇月の笑い声が完全に悪魔の笑いにしか聞こえない。
そのままワースト二十五位まで淡々と発表され、そのメンバーは不名誉コラボユニットのメンバーに強制加入となる。
なお、しっかりメンバーに加入されていた魁星と柳と鏡音。
宇月が出した平均点数はクリアしたが、それだって高いわけではない。
三人ががっくりと項垂れる。
誰がどのユニットに配属されるのかどうかは、今後くじで決める、ということになった。
「はーい、そんなわけで〜! 僕主催の『東雲学院芸能科学力向上委員会』の活動開始発表は終わりでぇ〜っす♡ 続いて魔王軍からのお知らせだよぉーん」
今更遅すぎるぶりっこモード。
ギリギリ不名誉コラボユニットから逃れた茅原が安堵の溜息を吐き出しながら、気を取り直して『俺から二つ目のお知らせを発表するぜー!』と高らかに宣言する。
二つ目のお知らせ。
それは――
『二つ目のお知らせは今年十月に開催される東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会前夜祭に! 東雲学院芸能科から我ら魔王軍と勇士隊、そして星光騎士団の出演が! 決定したー!』
うわー! という歓声が湧き起こる。
ただ、それはSBOのステージのお客さんが多い。
野外大型ステージのお客さんは、いまいちピンと来ていない。
『東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会前夜祭はゲームの世界大会……いわばオリンピック! 日本で開催されるビッグイベント! 俺たちがその前夜祭と開催日にライブできるってのはめっちゃすげーことなんだぜ!』
『おうよ! 世界中に配信されるんだ! お前ら、絶対観てくれよな!』
あっさりとしたお知らせの仕方ではあるが、東京ジャポニーズゲームショー及びeスポーツ世界大会前夜祭は十月。
まだまだ時間があるので、とりあえずは告知だけにとどめる。
その間にお客さんたち自身で大会のことなどを調べてくれれば、多少興味を持ってもらえることだろう。
『そして三つ目! これは俺たちにめちゃくちゃ関係あることだぜー』
麻野が拳を掲げて叫ぶ。
生徒たちが緊張の面持ちになり、茅原がモニターへ指を向ける。
『三つ目のお知らせだ! モニターに注目しろ!』
そして表示される最後のお知らせとは――
『東雲学院芸能科上半期校内売上ランキング“トップ4”発表ーーーーーー!』
今度は野外大型ステージのお客さんから、聞いたことのないような悲鳴じみた歓声が上がる。
東雲学院芸能科のアイドルにとって、校内売上ランキングは重要だ。
去年までは八月一日に『イースト・ホーム』に掲載されるのだが、おそらく東雲学院芸能科の知名度が上がったため大々的に発表する形に変更されたのだろう。
淳も驚いて「えー!」と声を上げる。
「やばーい! 発表されるんですか!? 今!? ここで!?」
「そうだよぉ」
「「校内売上ランキング……?」」
「そうだよ! 東雲学院芸能科の公式グッズの売り上げをランキング化したもので、一年生、二年生、三年生それぞれの売り上げごとのランキングが上半期と下半期に発表されるんだよ! 下半期のランキング上位四名は、年末の『聖魔勇祭』で“トップ4”として出演するんだよ!」
「「は……はあ……」」
テンション高めにオタク早口で説明する淳。
ドン引きの一年生ズ。
野外大型ステージの方から『はい。意図せず星光騎士団の音無がわかりやすく説明してくれましたがー』とドルオタの解説を拾って、さらに噛み砕いた説明をしてくれる茅原。
オタクは役立てて幸せです。
『まあ、そんなわけで今までは八月一日発表だったが! 本日の売り上げ分を含めないことになりました! ので! 今から各学年のトップ十を発表したいと思います! まずは一年から!』
茅原がコールした途端、ダダダダダ、とBGMが流れる。
直後、パッとランキングが表示された。
『一位! 鏡音円! 二位、柳響! 三位、夕陽廉歌! 四位、江花満月! 五位、石神真新!』
『ええええ〜〜〜!? 五位〜!?』
石神が叫ぶ。
しかし、東雲学院芸能科の箱推しドルオタからすると順当。
問題は名前を呼ばれた一位の人が宇宙猫になっている点だろうか。
「……………………え? オレ……? なんで?」
「普通に話題性でしょ。ドカてんめちゃくちゃ話題掻っ攫ったじゃーん。ナギーもねー」
「でも僕ら一ヶ月休んでたようなもんですよ……!?」
「いやー、あのインパクトは相当だったでしょー。東雲学院芸能科初の暴力事件だったからねー。まあ、怪我人もなくドカてんの人間性が人生何周目だって話になって盛り上がったってだけの話だよねぇ」
「うんうん」
「完璧で立派な対応でしたからね」
「うんうん」
ただただ頷く淳と魁星。
実際あの対応は実に見事だった。
あの、あまりにも大人な対応で鏡音円の“アイドル”としての知名度はあの事件の時に盛大に広まったと言える。
まあ、鏡音も柳も元々の知名度が特に高い。
夕陽も同じくコスプレイヤーとしての元々知名度かある。
江花は兄が有名人。
言い方は悪いが、兄の知名度のおかげが大きかろう。






