SBO実況生配信(5)
ふん、と淳を持ち出した鏡音に乗っかったのに、他の星光騎士団メンバーからまで突き放されてしまった。
解せぬ。
「それではここからはうちの異常者どもの戦闘シーンをお届け☆ ナッシー推しとドカてん推しのみんな~、お待たせ~♪ ここからはボーナスタイムだよぉ♡」
「言い過ぎじゃありません?」
「あ、これは俺と鏡音くんに全部丸投げされるパターン……」
スン……となる淳と鏡音。
だがもう宣言されてしまったので仕方ない。
ダンジョンの際奥に向かい、ナマズのような魔物がそこに泳いでいた。
「じゃあ行きますね。先にバフをかけるよ、鏡音くん」
「はい。よろしくお願いします、音無先輩」
「〜〜〜♪」
今回淳が使うのは弓矢。
鏡音は銃。
パーティー全体に[射程距離プラス2メートル][攻撃力上昇LV6 追加付与5][命中率上昇 追加付与3]のバフをかけた。
ナマズのダンジョンボスがこちらに気づかない状態のまま、チャージを開始する。
「〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪」
チャージレベル、3。
鏡音が弾丸をナマズに撃ち込む。
ナマズは弾丸を受けてバタバタと動き、周りを探すが狙撃手がどこにいるのかわからないのかキョロキョロとしている。
「このままここから撃っていてもいいんですけど、それだと絵面が悪いですよね」
「いいよ。次の一撃で終わらせるから」
「あ。はい」
チャージMAX。
淳が弓を引く。
狙いをナマズにセットして技を発動する。
「必殺技 ステラシュート、チャージMAX!」
射程距離をバフで伸ばしたので、ナマズが淳たちを視認できる距離外から必殺技をかます。
ド派手な星型の光線が放たれ、ナマズに直撃する。
一撃でナマズが壁まで吹っ飛び、爆散。
「終わりました〜」
「見どころ少なすぎない!? つまんなかったんだけどぉ!?」
「えー? 俺と鏡音くんが戦ったらこうなるって言ったじゃないですか〜。ね?」
「っていうかほぼ淳一人で倒してませんでした? 鏡音くんなんにもしてなくないですか!?」
「え? いや、鏡音くんの武器、現時点でSBOの中で一番強い遠距離武器だよ? 一発でダメージ500くらい入るのに、歌バフで一発1800くらいになってるからさっきの数発でダンジョンボスのHP半分くらいになってたよ」
「えっぐうううう!? オーバーキルやんけ!?」
「そうですよ?」
ついでにいうと射程距離をプラス二メートルにはしたけれど、この距離からナマズに適切に全弾命中させているのがヤバい。
歌バフの命中率上昇はあるが、元のプレイヤースキルが高いので本当に補助程度。
「っていうか二人とも長距離タイプなん?」
「サポートが多くて」
「攻撃力重視でやっていたら、いつの間にか」
「えぐぅ……えぐいわぁ……歌バフってこんなに威力上がるんやな。うわー。でもワイ、ソロやしなぁ」
「歌いながら戦えますよ?」
「無理無理無理無理」
全力で顔と手を左右にぶんぶん振られてしまった。
長距離武器なら歌いながら戦うのも難しいことではないと思うのだけれど。
逢魔の場合はただ単に歌うことに抵抗があるのだろう。
「いやー、すごいわー。みんな見た? マジで歌いながら戦ったわよ、この子たち。遠距離やけど」
「音無先輩、近接武器も使えましたよね?」
「うん。最初は剣から始めたから。でも両方スキルツリー育ててる途中だから鏡音くんほど威力出ないんだよね」
「ガッツリやり込んどるやん」
「東雲学院のアイドルがライブしてたら時間を捻出してでもライブ観に行くしかないじゃないですか。それになによりライブしてくれたアイドルの歌バフを有効活用しないのは失礼だと思います」
「え? アイドルなのにアイドル好きな人なん?」
「音無先輩はドルオタだそうです。重度の」
「イケメンがイケメン好きな世界線がホンマにあるん?」
逢魔のコメ欄、荒ぶる。
『現実にいるだと?』『ドルオタのアイドルだと?』『腐男子なの?』『音無くんドルオタなの!?』『自分の学校大好きかよ』『アイドルのドルオタマ?』『草』などなど。
「俺は元々東雲学院のアイドルの人に、変質者から助けてもらった経緯があるんです。その人に憧れて東雲学院芸能科に入学したんです」
「変質者ぁ!? アイドルが変質者から助けた? え? どゆことどゆこと? それ電波に乗せて話していい話なん?」
「大丈夫ですよ。ご本人にも許可いただいてますし。でも、話すと少し長くなるので場を別に作る形でもよろしいでしょうか?」
にっこり笑って聞くと逢魔は「え! それって……逢魔あげは、アイドルとコラボ! って、こと!?」と驚いているが淳のことを知る先輩後輩同級生はスン……と無表情になる。
ただ単に神野栄治を延々と語りたいんだな、そのための時間がほしいんだな……どんだけ語るつもりだよ? と、いう呆れの表情。
よくおわかりである。
「もちろんもちろん! 円の先輩たちとコラボなんておもろそうやん! なあ!」
「音無先輩のアイドル語りに付き合うなんて逢魔さんは時間があるんですね……」
「どないな意味やねん」
「いえ……別に……」
「では、フレンド登録しませんか? そちらからメッセージをお送りします!」
「うおー! しよしよ! フレンド登録……どっからやるん?」
「メニューからフレンドを選択していただいて……」
と説明をして、無事に逢魔とフレンド登録を済ませる。
スケジュールを確認します、と言ってちょうど時間は二十時。
もう少し遊べるが、星光騎士団としては一時間程度の配信予定だったのでここで配信は終了するとこにした。
色々予定外のことも多かったが、初めてのゲーム実況生配信は成功、ということだろうか?






