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二年生最初の期末テスト終わり


「具体的にどうするんですか?」

「必須教科の歌を作って歌う」

「なるほど」

「範囲の抽出はお任せください」

「じゃあ歌詞と楽曲の製作は千景くんに依頼しよう。俺、制作進行します」

「オッケー。じゃあ学校との調整と企画進行を僕がやるわ」

 

 シゴデキトリオがシゴデキすぎて勉強できないトリオが涙目で震える。

 あっという間に宇月によって企画書が作られ、『イースト・ホーム』経由で学院に申請がされ、淳が千景に作詞作曲の依頼とそれに伴う報酬額の算出を行い、周が中学一年生で習う五教科の範囲を選出して歌詞にできるよう説明文を描き上げた。

 マジで仕事が早すぎる。

 

「うぃーす」

「後藤先輩! やっと来てくれた!」

「……?」

 

 そのタイミングで部活が終わった後藤が現れる。

 手には大きめな紙袋。

 縋るように近づいてきた魁星と一年二人に首を傾げる。

 勉強できないトリオの必死な説明を聞き終わり、淡々と仕事をこなす三人に視線を移してから、リュックの中のSDを取り出し「また仕事背負い込んで……」と淳たちのワーカホリックぶりに頭を抱えた。

 その様子からできない三人はシゴデキ三人を止めてくれるもんだと思っただろう。

 

「知り合いの大学教授に監修してもらって、完成度を高めた方がいいと思う」

「「「後藤先ぱーーーーーい!?」」」

 

 残念だが後藤も三年生の成績上位者である。

 無慈悲に参戦。

 仕事の話もいつも通りにさらりと終わって、その後淳により勉強できないトリオへ簡単なテスト範囲の勉強会を開催。

 誰も逆らえなかった。

 

 

 

 なんてこともありつつの六月も中旬。

 IG夏の陣がああるので早めな東雲学院芸能科の一学期期末テストの開催である。

 淳、周、千景は二年生の中でも余裕で全教科90点以上。

 無事に仕事もなくテストを受けられたとしても、少なくともA組の教室内は全日程が終わると全員が死人のような顔で机に突っ伏している。

 まあ、でもやっと地獄が終わった、ということで。

 

「相変わらず音無と狗央は余裕の表情だなぁ」

「というか、今回も範囲の解説はしたでしょう? なんでみんなしょんぼりしているんですか」

「でも最近レッスンが忙しくて授業しか勉強できなかったから不安だったけれど、応用問題ばかりで助かった~」

「クソ! 勉強してなくてもそれなりの成績取れる頭いい奴! 羨ましい!」

「人に合った勉強方法があるからだよ。みんなも自分に合った勉強方法がわかればすぐに成績上がると思う。勉強方法の種類は塾とか家庭教師に聞くといいよ」

 

 死屍累累にド正論を告げてから、周と一緒にテストの答え合わせ。

 魁星も巻き込んで低近点を算出すると45点。

 これならSBOの生配信ゲーム実況に出ても問題はなさそうだ。

 問題は一年生ズか。

 まあ、あの二人は素直に淳と周の授業をちゃんと聞いていたので大丈夫ではないだろうか。

 

「あ、俺、そろそろ仕事だ。周、あとお願いしてもいい?」

「ドラマの撮影でしたっけ。いってらっしゃい」

 

 例のBLドラマの撮影である。

 柳も引き続き受け役の主人公を続投だったけれど、そのドラマの原作漫画家さんの強い要望で続編から淳も役がもらえた。

 現在第一期が地上波で再放送されているため、ドラマの知名度がどんどん上がっている。

 二期のテーマソングは現メンバー、淳を中心にしたオリジナルソングに決定しているので、それの収録も近々行われる予定だ。

 なお、製作陣は空前絶後のBlossom(ブロッサム)ブームに「どうして去年交渉にテーマソングが出された時に受けておかなかったんだ」と大後悔しているとかいないとか。

 去年は綾城がいたので、まったくもって惜しいことをした。

 だが、今年は星光騎士団に主演の一人、柳がいる。

 それも相まって、今年は淳と柳をダブルセンターにした曲をテーマソングにすることが決まっているのだ。

 なお、それはIG夏の陣でお披露目される新曲の一つ。

 先日『東雲学院芸能科学力向上委員会』が発足した日に後藤が持ってきた紙袋に入っていたのは、その曲用の学生服を模したステージ衣装である。

 期待値がどんどん高まっているのだが、全員揃っての練習が存外難しい。

 先日もせっかく揃ったのに学力向上委員会やってしまったし。


「えっと……ドラマの撮影のあとは雑誌取材と、そのあとはMVのチェック……うわ、新曲の仮歌チェックが来ている……」

 

 駐輪場まで来てからスマホを出すと、メールが色々来ていた。

 新曲の仮歌はFrenzy(フレンジー)のものだ。

 すでに十曲を詰め込んでいる上、星光騎士団の新曲も三曲、テーマソングが一曲と普通よりも覚える曲数が多かったのに。


(まあ、ありがたいことだよね。聴きながら電車乗ればいいか)


 自転車でイヤホンをしながら運転は法律で禁止されたので、ひとまずスマホをカバンにしまって駐輪場を出たところで「音無先輩」と声をかけられた。

 先輩、ということは後輩か?

 振り返ると話したことのない一年生がいた。


「君は……確か『魔王軍』の果林(かりん)トウラくん」

「はい!」


 右が赤、左が黒という真っ二つの派手な髪色をした、かなり制服を着崩した一年生が、真っ直ぐに淳を見ていた。

 この子は一年B組の果林(かりん)トウラ。

 魔王軍の南軍所属のロッカーだ。

 プロフィールとしては、我が校にしては珍しく楽器が得意なアイドル。

 ギターを愛好している麻野ルイの目に留まり、魔王軍に加入した子。



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