新企画もちゃもちゃ
「ねえねえ、ドカてん。ゲーム実況生配信って僕たちにもできそう~?」
「パソコン室の機材を見る限り問題ないです。そもそもフルフェイスマスク型VR機がVtuberにも対応している防音機能付きのものなので、問題は誰の視点で配信を行うかどうか」
「その点は安心してください。どうやらSBO内で配信者用単独カメラが販売されているそうです。課金アイテムの中に見つけました」
「仕事が早ーい……」
逃げ場をどんどん潰していくシゴ出来タイプ周。
だが反対したいわけではない。
ドルオタとしてはゲームのキャラクターの如く戦う姿のアイドルは絶対に堪らなく好きだ。
それに、Vtuberはすでにそうやって配信をしている。
別に新しいことをやるわけではないが、現役アイドルがやるのは初ではないだろうか?
「淳、そんなに反対ですか?」
「ううん。ちょっと……強制ログアウトしそうだなって……不安で……」
「ああ……」
納得された。
要約するとアレだ。
失神すると強制ログアウトになってしまう。
実際、BlossomのSBOライブで失神して強制ログアウト経験があるので。
「でも新規ファン会得に役立ちそう〜。やろやろ。それにしても、僕らの名を騙って女の子ナンパするゴミがいるなんてねぇ。でも、SBOが発売されてすぐの頃に星光騎士団を名乗る集団もいたよね〜」
「ああ、ありましたね」
「そんなことあったんですか」
「あったあった。結局凛咲先生が集めた歴代星光騎士団メンバーで、『星光騎士団』っていうギルドが作られたんだよね。まあ、今ログインしているのは主に現メンバーばっかりなのだけれど」
だがもしも星光騎士団を騙る者が現れたら、星光騎士団メンバー全員でシバく。
そう宣言した。
そう宣言したのに、星光騎士団メンバーの名を騙って女子プレイヤーをナンパするアホが現れるんだから知名度の高い者の『有名税』は厄介だ。
だがそれならば、堂々とメンバーでレベリングを行い、星光騎士団のプレイスタイルを広めてしまえば騙りはいなくなるだろう。
徹底的に他プレイヤーとの関わりを断つプレイスタイルで、配信しよう――というのが周の提案。
『配信中なので』という一言でほとんどのプレイヤーはプレイの邪魔をできない。
もしそれでも「フレンド登録したい」やら「一緒に遊びたい」などと言い寄ってくる者はそのまま配信に乗ってしまう。
生配信中、といえば余程頭がアレな厄介ファンでなければすぐに去る。
去らないやつはIDを運営に報告してBANしてもらえばいい。
さらに、それをすることで女性プレイヤーに声をかけてくる奴らは偽物、とファンなら一発でわかるようになるから、と。
「でも、そうなると結構アレじゃない? 生配信する程度にメンバー集めてゲームしなきゃじゃない?」
「申請して最初は一限目とか二限目に集まってすればよくなぁい? その時間帯ってプレイヤー少ないだろうし〜、教師の目が届くところなら僕らも安心だし〜、アーカイブ残しておけばファンも僕らの意図を理解できるだろうし」
「それって公式で授業をサボれるってことですか!? 最高じゃないですか! やります!」
「魁星……」
「ブサーは次の期末テスト平均点取ったらにしようか~」
「え!?」
「そういえばドカてんとナギーは成績どうなの? 授業休んでも大丈夫なんだっけ?」
「「えっ……」」
硬直する一年組。
あれ、ご存じでない?
「二人とも成績はちょっと……あれですよね」
「柳くんには最近勉強を見てあげられていないのでわからないですけれど……」
周と淳が目を背けたり目を泳がせる一年生二人を見る。
もうそれだけでお察しである。
宇月が満面の笑顔で「じゃあ、二人も期末テストの結果次第にしようね」と無慈悲に言い放つ。
半泣きになる三人に肩が落ちる。
「なんでですかぁ~~~!? そんな面白そうなの、僕も参加したいです~!」
「レベリングするなら……いえ、ゲーム実況経験のある自分も参加した方がいいと思います……!」
お、意外に諦めないな。
感心したが、宇月が「全教科合わせた平均点50点以上で手を打ってあげる」と相当甘い条件を出した。
だというのに、三人の顔面の色はさらに悪くなる。
なんでだよ。
「僕そんなにひどい条件出してないよねぇ?」
「ですね」
「魁星、前回のテスト平均何点だったの?」
「……………………34点」
「え? 何教科の平均?」
「五……」
宇月の視線が一気に険しくなって、魁星が姿勢を正して震え上がった。
淳たち二年生は全体の平均点が低くトップ三人――淳、周、千景以降はかなり下の方で団子。
ちなみにその中でも魁星は下方。
「ちょっと企画書作ってくる」
「え? 宇月先輩……?」
「このままだと歴史ある星光騎士団が馬鹿の集団だと思われかねない。ナッシー。お前も手伝ってよ。今の時点を持って、東雲学院芸能科成績向上委員会を発足させるよぉ!」
「やりましょう」
「お手伝いします」
「「「ひっ、ひいいいいい!?」」」
ちなみに意外と宇月、現三年生の中では成績上位者。
それを知っているので淳と周が強めに賛同した。
先生たちも現二年生と一年生の成績の悪さを嘆いていたの知っていたので。






